韓国の超難関校・ソウル高校の出身で、高校卒業後は日本の独立リーグに入団した張賢眞(チャン・ヒョンジン)。それは、韓国球界にとっても、日本球界にとっても、異色のルートともいえる。

高校を卒業してすぐに、2023年から徳島インディゴソックスで2年間プレーしたのち、今年からは、くふうハヤテベンチャーズ静岡でプレー。

張は、高校3年時にドラフトにかからなかったことで、そのまま韓国の大学に進んで、勉強優先になるよりは、もっと野球がしたいという思いで日本の独立リーグ・徳島インディゴソックスへの入団を決めた。

しかし、当時の張はまだ18歳。日本語も全く話せない中で、海外渡航を決めたという。

「めちゃくちゃ不安でした。1年目は、ずっと帰りたい、帰りたいって言っていました。それで、1年目の前期が終わった後に、本当に韓国に帰ったんです。でも、その時に気付いました。こんなことをしていても意味がないなって。日本でプレーする覚悟を決めようと思いました。それからは、自分は日本人になろうと思って、日本語もがんばって、何をするにも一から十まで日本人の選手と同じことをするようにして、次第に日本の文化にも慣れていきました」

そんな張が日本の野球界で驚いたのは、守備の練習時間の長さだった。

「韓国の場合は、練習時間のほとんどはバッティングです。でも日本は違いました。ノックの量がすごく多い。一番最初に守備練習をして、バッティング練習して、また最後に全体で守備練習をする。びっくりしました。でも、そのおかげで守備が上手くなったと思います。試合にもたくさん出たことで、バッターのスイングを見て、どんな打球が来るか予測できるようにもなりました」

現在は、内野も外野も守る張だが、やはり張の一番のセールスポイントはその打撃力である。徳島インディゴソックス時代も1年目から、チームの4番を任された張。昨シーズンは、46試合に出場し、打率.288を残した。また、注目すべきは成長スピードである。1年目は三振数46だったのに対して、2年目は20個に激減。今年は移籍したくふうハヤテベンチャーズ静岡で、攻守ともに活躍を見せている。

また、張自身が感じる日本でプレーした2年間での大きな変化としては、メンタル面だと話す。

「高校時代は、自分が調子が悪い時に、道具に八つ当たりしたり、よくない面があったのですが、日本に来て、周りの選手たちは悔しい場面でもすぐに落ち着いているのを見たり、プレーに対する反省は試合が終わってからするという話を聞いて、自分もそうやろうと思って、気持ちも変わりました。1年目の後期で、僕は日本人のようになるんだと心を決めて本気で取り組んできたからこそ、メンタルも強くなって、それが野球の結果にもつながったと思っています」

日本でプレーして、日本の野球がとても好きになったという張は、今年5月に21歳になったばかり。わずか半年で日本語をマスターし流暢に話すこともできる。もちろん英語もだ。どの世界にいっても、活躍できる可能性を秘めて。張賢眞(チャン・ヒョンジン)の今後の飛躍が楽しみだ。

インタビュー・文=安田未由