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センバツ出場校に対しての救済策を考える 「ピンチをチャンスに」思える発想を! 私が考える「代替案」

2020.04.06

 3月11日、センバツは史上初の中止が決まった。そのセンバツ出場校に対しての救済策が著名人から挙げられている。今回、高校野球ドットコムでもお馴染みのライター陣が各自で考えた救済案を紹介していきます!

 2回目は鹿児島を中心に取材活動を行う政 純一郎記者です!

春の県大会に出場させるべき

センバツ出場校に対しての救済策を考える 「ピンチをチャンスに」思える発想を! 私が考える「代替案」 | 高校野球ドットコム
救済策を考えてみよう

 「センバツに出られないチームへの代替案を」というお題を頂いたが、日を追うごとに難解なテーマだと痛感する。

 3月11日に史上初のセンバツ中止が決定された頃は、「夏の大会にそのまま出場させてはどうか?」「甲子園で練習する機会を作らせては?」などの「代替案」が様々な場所で検討されたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響は終息に向かうどころか、悪化の一途をたどっており、先の見えない苦境が続いている。

 当初私はセンバツに出られなかった鹿児島城西の「代替案」として「春の県大会に出場させるべきだ」と主張していた。通常、鹿児島を含めた九州各県はセンバツが開催されている時期に九州大会予選を行っているため、センバツ出場校は県大会に出場することなく、そのまま春の九州大会に出場することができる。

 鹿児島大会が4月13日に延期してスタートすると決まったときに、真っ先に思いついたのは鹿児島城西もこの大会に出場させることが何よりの「代替案」だと思った。春の鹿児島大会は前年秋の県大会のベスト8が自動的にシード校になる。

 センバツ出場校があればその分除かれるが、今回はそのセンバツ自体が開催されなかった。ならば通常通り、秋準優勝だった鹿児島城西は第2シードで出場すればいい。

 仮に途中で負けたとしても、九州大会には出場できる。勝ち上がって決勝まで進めば、準決勝で負けたチーム同士で3位決定戦をしてもう1つの出場校を決める。鹿児島城西にとっては一番大事な夏を目指す前に県のトーナメントを勝ち上がる経験ができる。

 他校にとっても本来対戦できなかった鹿児島城西と夏前に対戦できるのは大きなメリットだろう。運営上の支障も3位決定戦をするかしないかだけであり、特に問題はないはずだ。

 ところが鹿児島を含む九州の高野連は、センバツ出場校は県予選に出さないと決めていた。「すでに出場権を得ているから」というのがその理由のようだが、全く理解できなかった。確かに「予選」と銘打った大会に既に出場権を得ているチームが出るのは違和感があるかもしれない。

 しかしそれはセンバツと同時期に県予選をやっているから、予選免除になっただけの話である。これだけ想定外でイレギュラーなことが続くなら、どういうやり方がセンバツに出られなかったチームにとっての救いになるか考えれば、本来出られなかった県予選に出すのが一番だろう。

 仮に県予選が4月13日から始まって、鹿児島城西が出られないとすれば、センバツも出られなかった上に、他の学校が夏前の最大のシミュレーションとなる県内のトーナメントを戦っているのを、指をくわえて見ていなければならない。それはある意味、不祥事で出場辞退したペナルティーにも等しい扱いではないか。そんな憤りを感じていた。

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ピンチをチャンスに変えて過ごしていく

センバツ出場校に対しての救済策を考える 「ピンチをチャンスに」思える発想を! 私が考える「代替案」 | 高校野球ドットコム
今春の選抜出場予定だった鹿児島城西

 結果的には九州大会も鹿児島県予選も中止と決まった。今年最大のスポーツイベントの東京五輪でさえ1年後の延期となった。日本陸連が4-6月の主催・後援大会の延期または中止を決めたように、他の競技では6月までの公式大会の再検討が進んでいる。

 野球以外の他の部にとって最大の目標であるインターハイ予選の中止を決めたところもある。夏の選手権の予選も通常通り開催できるのかどうかさえ、不透明な状況だ。酷な話で恐縮だが最早、「代替案」を検討する時期は逸しているように思う。

 スポーツを含めあらゆる「イベント」は基本的に「人が多く集まる」ことで成り立っている。しかし、それが最も感染リスクを拡大させてしまう。コロナが終息しない限り、あらゆることが前に進めなくなってきている。日本に住む全ての人々、もっといえば地球上の全人類が何らかの影響を受けており、どう克服していくか、取り組むべきテーマになっている。

 「想定外なことが起こるのは仕方がないこと。発想を変えて、そこからどう一歩踏み出すかを考えるようにしたい」

 以前、休校で動けない球児に何をすべきかのアドバイスをする対談をしたスポーツトレーナーの髙司譲さんが話していた。あらゆるものが「ないない尽くし」になる中で、ふんだんにある「時間」を最大限に有効活用し、自分を見つめ、今できることに取り組んで成長する機会にしてみてはと髙司さんはアドバイスしていた。

 例えば私自身も、3月以降、野球も含めたあらゆるスポーツイベントが開催されず、大会の取材、発信ができない状況が続いている。こんな時にどんな発信ができるかを考え、前述したような動けない時期にできることの提言や、過去に実績を残した選手、指導者にインタビューして過去を記録し今や未来への提言など、今までやろうと思いながらできていなかった活動に取り組んでいる。

 ありがたいことに、地元放送局のアナウンサーから、4月から日曜日夕方にあるラジオのスポーツ番組にレギュラーで出演しないかというお話をいただいた。YouTubeチャンネルを開設し、文章と動画をミックスさせた新しい発信も始めた。こんな時だからこそ、自分が人のため、社会のために役立てることをしようという発想で、いろんな可能性を模索している。※詳しくは「スポかごNEWS」をご覧ください。

 料理に挑戦したり、日曜日に家族で近所の公園に出かけて、妻やまだ小さな子供たちと一緒にお弁当を食べたり、遊んだりするようにもなった。スポーツ取材を生業にしていると、どうしても土日がメーンの仕事日になってしまうため、「普通のお父さん」がやっていることができないのを心苦しく思っていたが、家族とのコミュニケーションを深める機会が持てたのは貴重だと考えている。

 これからどんな想定外なことが起こるか分からない。当たり前にあったことが当たり前でなくなってきている。手にしたはずのセンバツに出られない。心折れ、ショックを受けていることだろう。しかし、神は乗り越えられない試練は与えないという。自分に起こることには全て意味がある。

 心折れ、立ち直れなかったらそれこそ負けだ。ピンチはチャンス。困難な状況であればあるほど、それを乗り越えたときに人は大きく成長する。その答えは1人1人の心のうちにしか見出せない。それが私からセンバツに出られなかったチーム、選手に贈る「代替案」だ。

(文=政 純一郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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