
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
春が近づき、体力作りと並行しながらボールを使った練習も増えてきていることと思います。まだまだ外気温が寒い時期ですので、ウォームアップを入念に行った上で練習を行うようにしてくださいね。さて今回はしなやかな動作を支える肩甲骨の動きについて、お話をしたいと思います。投球動作を行うときは肩甲骨の動きが重要になってきますが、周囲の筋肉が硬くなっていると思ったような動作ができずに肩や肘を傷める一因ともなります。ここでは肩甲骨がもたらす6つの動きと、一人でも実践できるタオル・チューブエクササイズをご紹介します。
肩甲骨は浮いている
肩甲骨は背中の上部にある平べったい三角形の形をした骨です。左右に羽のようについていて、腕を動かすときに連動して動くのですが、この肩甲骨の動きが悪くなると腕が思うように動かなかったり、スムーズな投球動作の妨げとなったりします。肩甲骨は鎖骨(肩鎖関節:けんさかんせつ)と上腕骨(上腕肩甲関節:じょうわんけんこうかんせつ=いわゆる肩関節)とは骨同士が連結していますが、脊柱や肋骨とは直接つながっておらず、宙に浮いたような状態になっています。宙に浮いた状態でもいつも同じように背中の上部に肩甲骨が位置しているのは、肩甲骨周辺部の筋肉が支えているからなのです。
肩甲骨の6つの動き

311_1.jpg)肩甲骨がもたらす6つの動きを理解しよう
肩甲骨は主に6方向に動きます(図311_1.jpg)。肩をすくめるシュラッグの動作で肩甲骨は上にあがり(挙上)、力を抜いて腕をだらんと下げることで肩甲骨は下に下がります(下制:かせい)。また胸を反らせて背中で肩甲骨を引き寄せるように動かすと肩甲骨は内側に寄り(内転)、背中を丸めるようにすると肩甲骨は外側に開きます(外転)。投球動作時に腕を上げるようにすると肩甲骨は連動して上方に移動し(上方回旋)、腕を下げるときは腕の動きとともに元の位置に戻ろうとします(下方回旋)。野球選手は投球動作を繰り返し、疲労がたまってきたり、力みが生じてくると肩の上方に力が入って僧帽筋が緊張し、スムーズな肩甲骨の動きを妨げるようになります。この6つの動きはそれぞれが単独で動くというよりも、複雑に組み合わさってしなやかな動作を実現させます。