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第752回 【鹿児島大会総括】伝統校の勝負強さ、健在なり2018年08月12日
【目次】
[1]重圧を力に
[2]予想を覆す健闘
[3]野球人口減少に向き合う
重圧を力に

鹿児島実の選手
鹿児島実は今年で創部100周年を迎え、2月には盛大な記念式典が開催された。久保克之名誉監督が「宮下監督を男にしてください」と現役部員に檄を飛ばしていた。20年前、杉内俊哉(現巨人)を擁して横浜・松坂 大輔(現中日)と投げ合った第80回大会、10年前の第90回大会、更には学校創立100周年だった3年前…「節目」と呼ばれる年で鹿児島実は必ず結果を残している。「プレッシャーでしかないんですけどね…」と宮下正一監督は優勝インタビューで苦笑した。記念式典で久保名誉監督の言葉を聞いたとき、今年の夏は、その重圧を力に変えて圧倒的な強さを発揮するか、重圧に負けて力を発揮できずに終わるか、どちらかになる予感がしたが、「前者」だったということになる。
準々決勝までの戦いぶりは、勝ち上がってはいても本来の力は出し切れていなかった印象だ。エース吉村 陸矩(3年)を軸に、先制点を挙げて堅実に勝ち上がってはいたが、チーム打率は2割9分8厘と3割を切っており、準々決勝の指宿商戦は再三チャンスを作りながら1点しか取れなかった。それが準決勝・鹿屋農戦16安打13得点、決勝・鹿屋中央戦18安打9得点と爆発。「大会序盤は相手の好投手を攻略することを意識しすぎて打撃が小さくなっていた。準決勝からは練習通り思い切った打撃を意識させた」(宮下監督)。
エース吉村は春の大会準々決勝の樟南戦で打ち込まれてから自分の投球を見失っていたが、NHK旗で自信を取り戻し、今大会は期待通りの働きだった。左腕・立本 颯(3年)も計算できる投手であり、2本柱の存在は安定した試合運びができた要因だった。長丁場、とりわけ今年は酷暑と言われるほどの暑さの中で、大会がヤマ場を迎える準決勝、決勝で本来の力を発揮するところに伝統校らしい勝負強さを感じる。節目の重圧も加わった中でも勝ち切れた要因は「朝練習から始まって県内のどこよりも練習してきた」ことに尽きると宮下監督は言い切る。一つの重圧から解放されれば、大舞台で伸び伸びと力を発揮できるようになるのも鹿児島実の伝統。甲子園での戦いぶりに注目したい。

- 政 純一郎(つかさ・じゅんいちろう)
- 生年月日 1974年12月18日
- 出身地 鹿児島市
- ■ 経歴
鶴丸高校―同志社大 - ■ 鹿児島新報で6年間スポーツ担当記者。2004年5月の同社廃刊後、独立
- ■ 「スポーツかごんまNEWS」を立ち上げ、野球、バスケットボール、陸上、サッカーなど主に鹿児島のスポーツを取材執筆する。2010年4月より奄美新聞鹿児島支局長を兼務
- ■ 著書に「地域スポーツに夢をのせて」(南方新社)「鹿実野球と久保克之」(同、久保氏と共著)
- ■ Webでは「高校野球ドットコム」、書籍では「野球小僧」(白夜書房)「ホームラン」(廣済堂出版)「陸上競技マガジン」(ベースボールマガジン)「月刊トレーニングジャーナル」(ブックハウスHD)などに記事を寄稿している。
- ■ 野球歴は中学から。高校時代は背番号11はもらうも、練習試合に代打で1打席、守備で1イニングの試合経験しかない。現在はマスターズ高校野球のチームに所属し、おじさんたちと甲子園の夢を追いかけている
- ■ フルマラソンの自己ベスト記録は3時間18分49秒(2010年のいぶすき菜の花マラソンにて)。野球とマラソンと鹿児島をこよなく愛する「走るスポーツ記者」

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