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八戸学院光星、青森山田など宿敵撃破に燃える創部100年の実力校・東奥義塾「古豪ではなく強豪へ」

2022.08.30

今夏、甲子園に出場した八戸学院光星を筆頭に、ライバル・青森山田八戸工大一など実力ある学校が揃っている青森県で、東奥義塾(とうおうぎじゅく)はこの夏ベスト8まで勝ち進んだ。2022年は創部100年、学校創立150周年の節目を迎え、過去には甲子園にも出場した実績のある県内有数の強豪だ。

 この夏はドラフト注目の二刀流・中田歩夢内野手(3年)が中心のチームも、優勝には手が届かなかった。弘前実で甲子園を経験し、駒澤大でもベンチ入りを果たした指揮官の工藤監督は前チームから一貫して「古豪ではなく、強豪と呼ばれるようなチームを作りたい」という思いを語っていた。

 そのために新入生をトレーニングやメンタルの強化などを通じて、鍛えあげて個々の能力を高めている。

スライダーを駆使する技巧派右腕の活躍がポイント

八戸学院光星、青森山田など宿敵撃破に燃える創部100年の実力校・東奥義塾「古豪ではなく強豪へ」 | 高校野球ドットコム
齊藤純也(東奥義塾)

 投手陣は旧チームで経験をしている右サイド気味の齊藤純也投手(2年)が中心となってくる。
チューブやシャドーなどで固めたフォームから投げ込む直球は130キロ中盤だが、優れているのはスライダー。取材日は実戦形式での打撃練習で登板したが、鋭く変化するスライダーを投げ、打たせて取るシーンが何度もあった。

 このスライダーは中学時代から武器で、齊藤も自信を持っている球種の1つ。手首の角度は固定したまま、鋭く腕を振り抜いて回転をかけるようにしているという。アウトコースはもちろん、各打者のインコースにも意図して投げられるなど、コーナーワークを自在に使って抑えられるのが、強みである。

 東奥義塾に入学してから習得したというチェンジアップで、奥行きを使ったピッチングもできる。あくまで直球中心で、追い込んでから変化球も使っていくというが、新チームから大黒柱としての活躍が期待される。

 当然、八戸学院光星をはじめとした県内の強豪チームとの対戦は避けては通れない。センバツの舞台に行くためにも、東北地区のライバルにも勝たなければならない。そこに対して「去年の秋には聖光学院と対戦して、体つきや切れがすごかったので、具体的な目標がわかりました」と、先輩たちと戦った1年間が大きな財産となっているようだ。

ライバルたち相手にも直球で押せるようにするために、明確になった目標は140キロへの到達。「県内もいい投手が多いですが、まずはエースとなって、3年生の夏には甲子園には出られるように練習していきたい」と意気込んでいた。

[page_break:今年の東奥義塾は好打者揃い スラッガー不在でも打線は強力]

今年の東奥義塾は好打者揃い スラッガー不在でも打線は強力

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工藤桂主将(東奥義塾)

 野手陣は、投票で決まったという主将・工藤桂内野手(2年)が中心で、打線の強化には力を注いでいる。取材日の打撃練習では鋭いスイングで快音を響かせていた。

 特に主将・工藤は、自身も意識しているというオリックス・杉本裕太郎外野手(徳島商出身)を彷彿させる力強いスイングを見せる。コンタクト力に課題を持っているというが、スイングそのものは力強く、ホームランを放つには十分なスイングをしている。新チームの打線の中心を担っていく期待を持たせるバッターである。

 工藤の脇を固める好打者が髙嶋叶夢内野手(2年)と佐藤斗湧内野手(2年)の二遊間コンビだ。

 高嶋は工藤とは対照的にミート力に優れたバッター。野手の間を抜いていくような単打が中心になるが、真横からのティー打撃など複数のメニューをこなすなど、いかに引き付けて体の正面で捉えられるかということをテーマにしている。おかげで選球眼が良くなったという。

 守備では、西武・源田壮亮内野手(大分商出身)を参考にしている。取材日のノックでも身のこなしが軽く、グラブさばきにも柔らかさが感じられた。堅実なプレーを攻守で見せ、新チームを引っ張っていくことになりそうだ。

 髙嶋と二遊間でコンビを組む佐藤は、状況に応じた打撃ができる。逆方向も含めて手首の返し方やタイミングの取り方を意識することで、広角に打ち分けている。髙嶋同様、守備の動きが素早く、堅守好打の内野手という印象を受けた。

 このほかの選手を見ても、スラッガータイプの選手というよりも、好打者が多い。普段の練習から12、13メートルほどの距離でマシン打ちを行う。体感速度140キロにして、各打者が対応できるよう、無駄のない鋭いスイングをしているのが、大きいと考えられる。

 甲子園への出場実績はあるものの、長らく出場から遠ざかっている東奥義塾。「古豪ではなく強豪へ」という思いは工藤監督のみならず、選手たちも同じ思いを持っている。それを証明するためにも、まずはセンバツ出場を目指す。青森県大会、そして東北大会を勝ち抜くことが直近での目標だ。強豪校が揃う弘前地区を勝ち抜き、県大会そして東北大会と勝ち進んでいきたいところだ。

(記事=田中 裕毅)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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