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「魂の野球」和歌山東の挑戦は、来春のセンバツがスタート【後編】

2021.11.29

 秋の近畿大会で準優勝を果たし、春夏通じて初の甲子園出場を確実にした和歌山東。軟式から硬式に移行してから今年で12年の月日が経った。和歌山大会で夏の甲子園を制した智辯和歌山を下すと、近畿大会でも夏の甲子園4強の京都国際などの強豪校を次々と撃破。今回は躍進を続けた秋の振り返り、そしてセンバツでの目標を語ってもらった。

 今回は後編をお届けする。

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此上平羅主将

 2010年に当時の校長とPTA会長の意向で軟式野球部から硬式野球部となり、それと同時に県立和歌山商を2007年のセンバツ出場に導いた米原監督が赴任した。最初は野球に対する意識の違いから退部する者も多かったが、米原監督を慕って選手を送り出してくれた中学野球関係者や環境整備に尽力した学校関係者などの協力もあり、チーム力は徐々に向上。ついにこの秋に悲願を成し遂げた。

 近畿大会で躍進したことで周囲の反響も大きく、「喜んで下さる方がたくさんいて、本当に良かったと思いますし、子どもたちの成長のためにも色んな方が関わってくれてここまで来たんだと思わせることで、感謝の気持ちも芽生えてきました。本当に良い効果だなと思っています」と米原監督は注目されることが選手の成長にも繋がっていると話す。

 準決勝では金光大阪相手に8対1で7回コールド勝ちを収めたが、決勝では大阪桐蔭と対戦して1対10と完敗。大会を通じて好投を見せていた麻田も2番手で登板して4回0/3で6失点(自責点5)と打ち込まれ、「まだまだ自分たちは及ばないんだなというのを感じました」と実力差を痛感した。米原監督はプレー以外の面でも大阪桐蔭の強さを感じたという。

「能力的に相手が上なのはわかっているので、後は細かいところで自分たちが劣っているところはどこか見ていました。野球以外の部分でもベンチの入れ替えの早さとか、声の質だとか、そういった部分はまだまだウチにはできるところだと思いましたので、その辺はもっともっと子どもたちに伝えてやらせようと思います」

 野球の技量だけでなく、試合への入り方も参考になることが大きかったようだ。近畿大会を終えてからは練習試合から多くの選手を起用して、チームの底上げを図っている。「一歩リードしているのは秋の大会を戦ったレギュラー陣ですけど、これからの練習やトレーニングの積み方によってはポジションが変わるところもいくつかあると思います」(米原監督)とセンバツではスタメンの入れ替えがあるかもしれない。


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 その中で米原監督が外せないと考えているのが、主将で4番三塁手の此上、エースの麻田、投手も務める1番右翼手の山田、2番一塁手の森岡 颯太(2年)の4人だ。

 此上は長打力のある左打者。主将として誰よりも声を出してチームを鼓舞するキャプテンシーも光る。麻田はOBの津森に憧れて滋賀県から入学してきた技巧派右腕。この秋に大きく飛躍し、エースとして頼れる存在になった。山田は巧打のリードオフマン。昨秋から投手としても活躍していたが、今秋は投手としては調子が上がらず、野手での出場が主だった。彼が投手としても活躍できれば、投手陣に厚みをもたらす存在となる。森岡は近畿大会の金光大阪戦で本塁打を放つなど、パンチ力のある左打者。一塁守備も堅実で攻守に頼れる存在だ。

 この冬は投手が球速とコントロール、野手がスイングスピードの向上を目標に取り組んでいく予定だ。最速134キロの麻田も「全国になったら140キロは必要だと思っています」と大台を目指してトレーニングに励んでいる。

 甲子園での目標はベスト8。「チームのスローガンでもある魂の野球を見てもらいたいと思います」と此上は話す。全員野球で初の夢舞台をほぼ確実なものとした和歌山東。甲子園でどんな戦いを見せてくれるのか楽しみだ。

(取材:馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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