秋の駒大苫小牧戦の敗戦がチームを強くする! 函館大柏稜(北海道)【前編】
道路を挟む左右の歩道に植えられている桜は満開で、さながら桜のアーケードのような桜ヶ丘通り沿いに位置する、函館大柏稜。秋季大会では函館支部予選を勝ち上がったものの、北海道大会の初戦で駒大苫小牧に破れた。この敗戦は、函館大柏稜にとってどのような一戦になったのか?厳しい冬を越え、桜満開の春を迎えた函館大柏稜野球部に迫る。
個々の課題が明確になった試合
左より、松井幸大、塩谷耀生、西川蓮、櫻庭大斗、奥本悠吾(函館大柏稜)
函館大柏稜の主将、松井幸大(まつい・こうだい)は敗戦についてこのように語ってくれた。
「敗北して自分たち一人一人の課題が見つかったので、その部分では敗戦が良かったと思います」
函館大柏稜にとっての冬場の取り組みは、まさにこの課題と向き合った時期と言える。
駒大苫小牧戦で5回まで1失点の好スタートも、完投したものの後半に失点を重ねてしまった奥本悠吾(おくもと・ゆうご)は、
「去年の秋の大会でスタミナ面がすごく課題だったので、この冬はそれを重視して練習に取り組んできました。ランニングだったり体幹トレーニングだったりをたくさんやりました」
と明確な目標のもと冬を過ごしたきたことがわかる。
4番で主砲の西川蓮(にしかわ・れん)も、1三振を含む無安打と悔しい結果となったこの試合から
「体つきや打球のスピード感、全部が(駒大苫小牧が)上だったので、そこを越えることを目標に頑張ってきました」
と冬場のモチベーションとしていることを語ってくれた。
函館大柏稜が、全道大会の敗戦を価値あるものに出来るかは、敗戦をどのように捉えられるかである。その点で、函館大柏稜は確かに前を向いている。後は、冬場の成果をどう結果としに結び付けられるかだろう。
では、他の選手の冬場の取り組みにもフォーカスしてみたい。
夏の頂点へ向けてスケールアップを図る投手陣
大黒柱の1人・櫻庭大斗(函館大柏稜)
函館大柏稜の大黒柱の1人である櫻庭大斗(さくらば・たかと)は、135キロのキレのあるストレートが武器だが、ストレートの精度を更に上げることを目標にしている。
「冬場は、下半身強化を目的に行っていました」と話すように、安定した下半身によって、コントロールを安定させることを意識している。
もちろん、ストレートだけでなく他の球の精度も上げるつもりだ。
「まっすぐだけでは打たれると思うので、変化球の精度を上げていきたいと思います」
そんな櫻庭の目標の先には、一つ上の学年で投手をしていた佐々木普(ささき・しん)がいる。
「ここ一番という試合で結構抑えていて、コントロールがとても良かったです」
と語ってくれた。目標明確なら到達も可能なはずである。櫻庭は、ここ一番の試合で最高のパフォーマンスを出せる投手になるために、さらなる成長遂げる冬を過ごしてきたのがわかる。
櫻庭と双璧を成す奥本悠吾(函館大柏稜)
櫻庭と双璧を成す、奥本も、駒大苫小牧戦で感じたスタミナをつけるという課題以外にも、明確な目標を語ってくれた。
「櫻庭さんが自分には持ってない速いストレートを投げるので、追いついて追い越したいなと思っています」
スライダーが良いだけに、ストレートに磨きがかかれば更に大化けする可能性を十分秘めている。もちろん、各球種のレベルアップの先には、目的がある。
「ピッチャーというのは試合の中で大事な役割なので、その大事な役割をしっかりと果たせるように夏までになりたいと思います」
奥本は試合をしっかり作れる投手を目指している。
奥本は1つ上の学年の櫻庭のストレートを目指し、櫻庭は今年卒業した佐々木の投球を目指す。その事を言葉にできるところに、投手陣の良い関係性が伺える。櫻庭と奥本の成長が、函館大柏稜の夏の勝敗の鍵を握っていることは言うまでもない。
前編はここまで。後編では函館大白陵のクリンナップに迫っていきます!
(文・田中 実)