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走力向上ドリル 説明・実証編

2013.10.31

殖栗正登のベースボールトレーニング&リコンディショニング

走力向上ドリル 説明・実証編 2013年10月31日

 前回、スプリントのドリルを解説しましたが、これをより科学的に説明・実証しようと思います。多くの選手が毎日トレーニングに励んでいると思いますが、きちんとその動作を理解してトレーニングをするのをただ漠然とトレーニングをするのではまったく効果が違ってきます。皆さんも是非その動作を知り「何故そのトレーニングをするのか」を考えながらトレーニングに取り組んでください。

走動作の理論

 走動作は「ピッチとストライド」の積で決まります。また支持期(接地期)と非支持期(空中期)に分けられます。一流選手になれば、ピッチは4.5〜5.5/秒。ストライドは身長×1.1〜1.4になります。速度は12m/秒に近くなります。速度8m/秒まではストライドが、それ以上はピッチの増加となる。スタートか速度が上がると支持期時間が減り、次に非支持期の時間が減ります。ということは、加速がされたある時点でピッチを速くすることが大切で、いつまでも「地面を蹴る」とか「プッシュ」とかを意識して走ると、速くは走れないのです。

動作を正しく理解してトレーニングしよう!

 スピードが速くなると足の動きは水平方向(前後)に大きくなり、垂直方向で上がりが大きくなる支持期の後半には脚のひきつける力が必要であり、非支持期においては、脚を振り戻すことで支持期での後部への力を大きくすることに繋がり、スピードアップに繋がります。

 スプリントの地面反力はスピードが上がるほどに上がり、スタート直後は水平方向への反力が大きく、速度が上がると後向きのブレーキの反力が大きくなります。そしてスプリントスピードは支持脚の貢献度が大きいです。ここから支持脚に体重を乗せるためにも体を前傾させることがスタートダッシュでは大切であり、スピードが乗り、筋力が落ちてくれば体を起こしていくので地面の反力がブレーキ方向になります。

 回復期の時、股関節を使い、脚を上げながら、膝をたたみ、慣性モーメントを小さくすることでピッチを速くすることができます。

 力学的な面から見ても地面の反力からのエネルギーを股関節の屈曲まで流入させ、地面の支持期にエネルギーを流入させて、後半からは下腿から大腿にエネルギーを流入させています。このように力学的エネルギーを流してエネルギーを伝達させています。


股関節

 回復期で腸腰筋とメインの大腿直筋のストレッチショートニングサイクル(SSC)を使い「脚を流さず素早い腿上げ」を可能にしています。そこから大腿二頭筋は接地前からエキセントリックで働き接地中期まで伸展トルクが働く大殿筋はコンセントリックで働きます。

膝関節

 回復期の時、膝の伸展トルクが働きます。これは膝が屈曲しているのに関わらず働いているので、回復期のターンオーバーの膝の屈曲は力学的なエネルギーの流入という事がわかります。回復期後半で膝はエネルギー流入で伸展するが、屈曲のトルクがエキセントリックで働きます。これも接地の為です。また、外側広筋がアイソメトリックス的に働き、屈曲と伸展のバランスをキープしています。支持期は外側広筋が伸展のトルクを発揮しているのみで、膝より股関節を中心に力を発揮しており、膝の伸展は重心の上下運動を出すので強いトルクは発揮しません。

足関節

 回復期に前頸骨筋が等尺的に働き、接地期に腓腹筋、ヒラメ筋はストレッチショートニング(SSC)的に働いています。

スプリントにおける筋収縮

(1)回復期前半の大腿直筋のSSC
(2)回復期後半から大腿二頭筋がSSCで働き、支持期の推進力のメインで働く
(3)腓腹筋、ヒラメ筋は腱が太く長く、腱によるSSCがメインであまり筋活動は少ない
(4)単関節は大殿筋、外側広筋はコンセントリックで働いている

上半身

 体幹においては前半に前傾、後半は後傾を示し、体のバランスを維持したり、エネルギーの連鎖に使われるが、運動量の増加にはあまり関与しません。腕においては腕を振ることで地面の反力を大きくすることができます。またバランスをとるのに使われます。脚を大きくスイングすれば腕も大きく使われます。


まとめ

 以上の観点から

(1)スプリントのドリルは体幹を固定させて重心の位置をキープしながらの脚の動き、腕の動きを出せるドリル
(2)ハードルやウォールドリルで脚の踏み込みと、脚の上げるタイミング、位置を覚えるドリル
(3)正しく腕の振るドリル
(4)バーなどを置いて、ストライドを意識したドリル
(5)バウンディングでSSCを利用したドリル
(6)助走を入れて慣性を利用して走りやすい状態から踏み込みと切り替えを意識してフォームを完成させるドリル
(7)スタートダッシュのドリル
(8)盗塁のドリルで野球に繋げる

 以上の流れでドリルを組んでいますので、トレーニングの参考にしてください。

 また、ストレングストレーニングですが、筋出力は横断面積に比例しますから、ベーシックのウェートトレーニングで筋を太くしていきながら、専門トレーニングとしては、

(1)コアのスタビリティ
(2)アームスイング(ダンベル)
(3)BOXステップアップからBOXジャンプ
(4)SSCレッグレイズ
(5)ケーブルを利用して股関節の屈曲・伸展
(6)フライング・スプリット・バーベルジャンプ
(7)SSCを意識した連続スクワットジャンプ

などがおすすめです。

(解説・殖栗正登


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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