五輪イヤーの2020年 東京都の高校野球を占う
2019年も選手権に出場した関東一がベスト8に進出するなど、毎年上位に食い込む強さを見せる東京の高校野球。2020年は東京でオリンピックが開かれることもあり、時期が被る選手権の東京都予選は例年とは違った状況になりそうだ。また、[stadium]神宮第二球場[/stadium]を使用することが出来なくなり、2020年の東京の高校野球展望は混迷を極めることになりそうだ。そんなオリンピックイヤーの東京の高校野球を戦力、球場などの面から分析する。
二松学舎大附、関東一に試練の夏
千葉県に拠点を置く二松学舎大附は身長198センチの秋広優人に注目だ
いよいよ東京オリンピックイヤーの2020年が始まる。2020年は、長年東京の高校野球に関わってきた人にとっても、いつもと違う年になる。
まず大きな変化は、[stadium]神宮第二球場[/stadium]が使えなくなったことだ。春と秋は大会本部として、主要試合の多くが、この球場で行われた。交通の便が良く、東西どちらかもアクセスしやすい[stadium]神宮第二球場[/stadium]が使えないことで、多摩地区の球場での試合が増え、東側のチームは、移動距離が長くなるケースが多くなる。
それは夏の大会で、より顕著になる。東京オリンピックは7月24日から8月9日までだが、7月10日には東京で聖火リレーが始まり、本格的なオリンピック体制に入っていく。これは、夏の東西東京大会の時期とほぼ重なる。
オリンピックが始まると、試合会場までどう移動するかが問題になる。オリンピックの選手村や競技会場、羽田空港や成田空港につながる道路は、交通規制になる可能性がある。電車で移動をするにしても、バット、ヘルメットなど荷物が多いため、時間とコースは考える必要がある。オリンピックの場合、午前中から夜まで、様々な会場で競技が行われるため、人の流れが読みにくいのも悩ましいところだ。
夏の大会で[stadium]神宮球場[/stadium]が使えるのは、開会式とその翌日だけ。野球・ソフトボールの公式練習会場である[stadium]大田スタジアム[/stadium]も13日までしか使えないし、その他にも不確定要素がある。
[stadium]都営駒沢球場[/stadium]も世田谷区にあるので、7月半ば以降は、東の地域にある球場は[stadium]江戸川区球場[/stadium]だけになる。
この影響を一番受けるのは、千葉県を拠点とする二松学舎大附や関東一だ。修徳、都立城東など、都県境や東京の東側にある学校は、[stadium]江戸川区球場[/stadium]で試合をする時以外は、都心を通らなければならないので、移動の仕方は考える必要がある。
逆に東東京でありながら、練習拠点は多摩地域にある堀越、東亜学園、明大中野といった中野区勢や岩倉などには地の利がある。
もっとも、8月1日にはベスト4が決まっていなければならず、7月下旬はスケジュールに余裕を持たせるはずなので、影響がどこまで出るかは不明な点も多い。
球数制限の影響
[stadium]神宮球場[/stadium]は使えないが、準決勝、決勝は[stadium]東京ドーム[/stadium]で行われる。昼間はより白が目立つ天井や、高いフェンスなどには、対応しなければならない。それでも、[stadium]東京ドーム[/stadium]で高校野球が行われるのは初めてのことで、歴史的な一戦になる。
投手の球数制限は、東京の場合、雨天中止などが相次ぎ、スケジュールが詰まらない限り、問題になるケースは少ないのではないか。ただ春季都大会の1回戦から3回戦は、1週間の間で行われる。500球の球数制限だと、1試合当たり、166球は投げられるので、それほど影響はないはずだ。しかしながら、延長戦や、試合途中の中止などがあると、500球に達する可能性がある。いずれにしても、勝ち進むには、複数の投手を擁した方がいいのは確かだ。
東東京は帝京中心の展開か?
国士舘は右サイドハンドのエース・中西健登が中心となる
春のシーズンの始まりを告げるのがセンバツ大会だ。出場が確定している国士舘は、秋は不振の鎌田州真が本来の活躍をすれば、前年のチームよりは力があるのではないか。
帝京は出場が微妙な位置にある。秋季都大会の決勝戦だけをみれば厳しいが、準決勝までの戦いぶりは、レベルの高さを示している。
投の田代涼太、柳沼勇輝らに攻守の小松涼馬、加田拓哉をはじめ、投打に安定し、実戦経験も豊富で、夏の東東京大会でも優勝候補になる。
東東京で続くのは国民体育大会優勝の関東一か?今村拓哉、市川祐の投手陣が本来の力を発揮すれば、攻撃陣は力がある。
秋は初戦敗退の二松学舎大附は、身長198センチの秋広優人を投手として使うか、野手として使うかが、まず注目される。
秋8強の修徳は、1年生が多いだけに、伸びしろは大きい。逆に秋4強の城東、8強の共栄学園はマークされる立場になっただけに、もう一段階のレベルアップが求められる。
ともに秋は城東に敗れた日体大荏原には宮下大地、錦城学園には石川隆二という好投手がいる。この両校は台風19号の影響で、河川敷のグラウンドが大きな被害を受けた。厳しい環境の中で、どうチームを作るかも注目したい。
秋は日大三相手に好投した角田匠を擁する安田学園や、投手陣が充実し、秋は創価に善戦した大森学園なども楽しみなチームだ。
夏準優勝の小山台をはじめとする都立勢の巻き返しにも期待したい。
西は国士舘を中心に混戦模様
西東京は、高いレベルで競い合っている。秋優勝の国士舘が優勝候補であることは間違いないが、夏は中西健登以外に頼りになる投手が欲しい。
秋4強の創価は、エース・森畑侑大を中心に経験も豊富で戦力が充実している。日大三は、児玉悠紀、柳舘憲吾の投手陣は安定しているが、打線がどこまで奮起するかがカギ。
秋8強の日大二は、投打の中心の折笠利矩の負担を減らすためにも、控え投手の岸本幸紀らの成長が重要だ。
秋は日大三に敗れた東海大菅生であるが、投の新倉寛之、打の杉崎成をはじめ、戦力の充実ぶりは、東京ではトップクラスだ。
秋は二松学舎大附に勝利した明大中野八王子や西東京大会優勝校の国学院久我山が、ひと冬越してどう成長するかも注目される。
八王子実践の後藤結人は粗削りながら、ポテンシャルは高い。山縣有朋の子孫という早大学院の山縣秀の守備も見応えがある。
秋は出場辞退であった早稲田実も、力のあるチームだけに、立ち直りを期待したい。
2019年夏の東東京大会では、8強のうち5校がノーシードで、3校は秋、春の都大会にも出ていない。西東京大会でも3校がノーシードといったように、過去の実績は、あまり当てにならない。特に2020年は、レベルの高いチームはあるものの、飛び抜けたチームはいないだけに、混戦模様の戦国大会が予想される。
(文=大島 裕史)
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