目次

[1]曲者・イスラエル打線に対し、侍ジャパンバッテリーはどう攻めたのか?
[2]侍ジャパンバッテリーが素晴らしかったのは、実際の対戦から攻略法を感じ取ったこと

 WBC準決勝で惜しくも敗退してしまった侍ジャパン。今回はWBCをテーマに高校球児に参考になる理論を伝えていく。WBC二次ラウンドのイスラエル戦から振り返り、投手、捕手も頭を悩ませる立ち上がりの「入り球」にフォーカスしてレポートする。

曲者・イスラエル打線に対し、侍ジャパンバッテリーはどう攻めたのか?

小林 誠司選手(侍ジャパン)

 バッターを打ち取る上でバッテリーにとって難しいことの1つが初球の入り方。当然、有利なカウントに持っていきたいのでストライクが欲しいが、相手バッターのスイングやボールに対する反応を見てから投げることはできないだけに慎重さも必要になる。しかも、それが相手の情報が十分ではない国際大会となれば、なおさらだろう。侍ジャパンが準決勝進出を決めた第二次ラウンドのイスラエル戦に先発して5回被安打1、無失点と好投した千賀 滉大(ソフトバンク)を女房役の小林 誠司(巨人)はどう配球したのか。前の打席を参考にすることもできない。

 千賀は150㎞/h超のストレートと「お化けフォーク」と称される落差の大きな球が武器で、持ち球はほかにもキレのあるスライダーを投げるものの、カーブは1試合平均で3、4球といったところ。基本は3つという少ない球種で配球を組み立てるピッチャーだ。

 どんなピッチャーでも緊張感が高まるであろう試合の第1球。千賀も硬さがあったのか、投球練習では狙ったところには思うように投げられていなかった。イスラエルの1番フルドは膝を深めに曲げて小さく構える左バッターで長打が多そうなタイプには見えない。そんな中、小林の出したサインは外角へのストレートだった。小林はピッチャーの良さを優先するタイプのキャッチャーと評される。低めに外れてボールとなったが、力で押せるだけの球威があり、千賀本人も自信のある球をまずは選んだのだろう。

 結局、フルドは2球目の甘く入ったストレートをしっかり踏み込んで打ってライト前ヒット。いきなりランナーを背負ったが、続くスイッチヒッターの2番ケリーはショートゴロ併殺に打ち取る。ホームベースから離れて立つバッターで、内角が苦手だからこそそうしている可能性もあったが引っ張られてランナーを進められることを嫌ったのか、バッターの様子を見たいという意味合いが大きかったのか、初球の選択は外のスライダー。内に外れるボールとなったものの、2球目の外角ストレートを打たせて難を逃れている。

 3番のデービスはメジャー7年間で81本塁打を打った実績を誇る左の強打者。今大会もそこまで13打数7安打と当たっていた。しかし小林は臆せずインコースのストレートを要求。真ん中寄りの高めのボールとなったが、早い段階で内角を意識させる狙いがあったのではないか。小林は次のスライダーも内角寄りに構えている。アウトコースでのストライクとなったが、次球のフォーク空振りを挟んで、4球目は千賀が1度首を振った後の内角ストレートで合致。ファールとなるが、しっかりコースに投げ切れたことで、6球目の外のフォークでの空振り三振に繋がった。加えて言えば、デービスの2打席目は初球から変化球で外を攻め続けている。同じコースばかりでは怖さもあるが、それも1打席目に布石が打てていたからこそできたのだと思う。最後の6球目だけインコースにストレートを要求し、実際には外寄りの球になったがデービスは打ち損じてレフトフライ。初回は3人で終えた。