竹田イズムの上に経験を積み重ね築き上げてきた髙橋イズム 髙橋 左和明監督(九里学園)vol.5
「前回のコラム」では、髙橋 左和明(たかはし・さわあき)監督(九里学園)の原点である仙台育英時代から、アメリカ留学までに得た気付きにフォーカスした。今回は、その後のキャリアと、竹田イズムの上に、築き上げてきた髙橋イズムとは何かを紐解いていきたい。
これまでの連載
これからの時代どんなスキルが必要なのか?髙橋 左和明監督(九里学園)vol.1
仙台育英時代が髙橋監督にどのような影響を与えたのか!?髙橋 左和明監督(九里学園)vol.2
特別編!選手の為の組織・竹田イズムの真髄 髙橋 左和明監督(九里学園)vol.3
日本とは対象的だったアメリカ野球のオンとオフ 髙橋 左和明監督(九里学園)vol.4
女子ソフトボールから得た着想
ノックをする髙橋 左和明監督(九里学園)
髙橋監督は、女子のソフトボールトレーニングコーチの経験もある。
「女子の実業団っていっても、レベルは高いです。びっくりしました。むしろ守備なんか僕なんかより全然いいです。当時、太陽誘電という全日本に選ばれた安藤 美佐子さんという方がいて、その人の守備にびっくりしましたね。一応男女なんで体力とか筋肉とか差はありますけど、グラブさばき、物事の考えた方も素晴らしく、感化されましたね。」
「スピード感がある。ピッチャーも女子でも速いですし、守備ではちょっとファンブルしたら間に合わない。だからこそ基本をものすごく大事にする。野球よりもむしろ一瞬のミスが点数につながる、そういうレベルの高さを知りました」
この経験から、基本を大事にすることを再認識できたという。この経験も、髙橋監督の「柔軟性」のベースとなる多様な引き出しの一つになっている。
行動することで増える引き出しの数
木造校舎をバックに映る髙橋 左和明監督(九里学園)
髙橋監督のこのような話は、枚挙にいとまがない。髙橋監督の順天堂大学時代の経験、トレーナーとしての経験、営業の経験、パーソナルトレーナーとしてメジャーのスプリングキャンプに参加し、目の前でランディ・ジョンソンやケン・グリフィー・ジュニアなどMLBの一流選手を見てきた経験もある。
これらの多様な経験は、どれも基本的には一緒なのである。
髙橋監督は、自分で疑問を持ち、知りたいと感じた新しい事にまずチャレンジするのである。「新しいことを知りたい・学びたい」という想いが強いのだ。行動しながら、更に考え、深く理解していく。最終的には理解したことを、頭の中で止めずに、アウトプットするのである。このアウトプットこそが、周りから見ると「柔軟性」と映る部分でもある。
このサイクルの繰り返しによって、多くの引き出しを身につけ、周りの変化にも柔軟に対応することを可能にしているのである。まさに、髙橋監督の「柔軟性」根源になる部分だろう。
ただし、勘違いしないでほしい。なんでも新しいことにチャレンジしているだけでないのだ。あくまでもチャレンジする前に、自身の考える目的があった上でのチャレンジなのである。「柔軟性」と、目的を成し遂げる為の行動という「一貫性」が絶妙なバランスで組み合わさっているのである。
これは、九里学園の監督としての行動とも同じになる。新しく取り入れることの目的がきちんとしていれば、柔軟にそれを取り入れている。部活動に置いては、「選手のため」という一貫性がある。これこそが、竹田イズムの上に、自分自身の経験を積み重ね独自に築き上げてきた髙橋イズムと言えるだろう。
文=田中 実