立ちはだかるベスト16の壁
その後は1997年に夏の甲子園出場を果たしているが、以後、聖地には届いていない。2000年以降は都ベスト8やベスト16が多く、初戦で姿を消すこともあった。近年は23年にベスト4に入るなど、都内屈指の実力校として一定の成果を収めているが、あと一つ壁を超えることが出来ていない。
こうした現状に、主将の岩崎 佑志外野手(3年)は本音をこぼした。
「正直、ベスト8やベスト16というのは嫌ですね…もう2段階力をつけて常にベスト4に顔を出せるチームにしていきたいです。2年前にベスト4に入ったとき、キャプテンを務めていたエースで4番の大野(巧成)さんを見ていましたが、チャンスに強い選手がいるチームが勝ち上がれると感じます。今年のチームはチャンスに弱く、とことん潰してきました。キャプテンとして自分がチャンスで打って勝っていきたいです」
ソフトバンクの育成右腕・宮里 優吾投手や元巨人の巽 大介氏をはじめ、多くの好投手を輩出してきた豊田監督も、思うような結果が出ないことに苦しみ悩まされた。
「ハードに練習することで、選手のメンタルの強さが生まれると信じて疑わずに指導していました。ですが実際の公式戦では『もっと力があるのに…』と力を引き出せていないとここ10年は感じています」
「何やってんのかな」。指揮官はそう自問自答を繰り返し、もがき苦しむ中で様々な人に助けを求めたという。
「自分自身が変わらないと、という思いがありますが、勇気や覚悟が足りなかったです。そこで練習だけではなく、対選手への対応も含めた指導をほかの方にも助けを求めました」
現在、岩倉で豊田監督を支えている佐々木 宥耶部長や鬼頭 修平コーチ、山口コーチに加え、亜細亜大の先輩にあたりNTT東日本を率いている飯塚 智広氏ら多くの関係者に助言を求め、チームの強化を図った。
主将の岩崎も「先生方から『あえて違う選択をしてみよう』と言われたことが響いています。入学前は気持ちが弱かったですが、実際に主将としてプレーして成長できた面も多くあります」と、精神的な強みを自信に変え、プレーに繋げている。変化を恐れない指導で、選手の良さを引き出そうと指揮官も苦悩を重ねている。
東東京の3強撃破に燃える!
今春は都3回戦で大東大一に敗れ、夏はノーシードからの逆襲を期す。中心となるのは上原 慶大投手(3年)や佐竹 翔太投手(3年)ら、下級生から公式戦で登板した投手たち。豊田監督も「投手陣は充実している」と納得の表情だ。
一方の野手陣は春初戦で正則学園に11対0と爆発したが、2回戦で2対1、3回戦でも1対2と競った展開が続いた。「3月まで競争していた選手は春に結果が出ましたが、逆に固定されていた選手はもう一つ結果が出ませんでした。能力のある1年生も入ってきていますし、最後までチーム内の競争に勝ち抜いた20人で戦いたいと思います」と豊田監督は夏までにさらなるレギュラー争いで選手達にはっぱをかけていくつもりだ。
今月14日には組み合わせ抽選会が行われ、初戦で田園調布と対戦することが決まった。
順当に勝ち上がればベスト8で帝京と当たる組み合わせとなり、そこが大きなヤマ場と予想される。豊田監督は事前の取材である目標を口にしていた。
「東東京では関東第一、二松学舎大付が抜けていて、これまで東京の野球を牽引してきた帝京が虎視眈々と頂点を狙っています。とにかくそこに勝てるチーム作りをしたいと思っていますし、その3チームを射程圏内に捉えていると自負しています。なんとか食らいついて神宮球場でその3チームや、その他の強豪を一つひとつ倒していきたいです」
今まで立ちはだかってきた壁を突き破り、28年ぶりの東東京優勝を達成できるのか。今年は岩倉の真価が問われる夏になるのかもしれない。
【動画】"3強撃破"へ!岩倉の練習に密着!
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