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オリックスに移籍した吉田 輝星、プロを決断したのその裏とは…

2023.12.25


11月24日、日本ハムからトレードでオリックスに移籍した吉田 輝星投手(金足農)のニュースは誰しもが驚いたと思う。12球団随一の強力投手陣に、かつては甲子園を沸かせた剛腕投手が割って入ってくるのだからだ。

吉田は金足農時代1年夏からベンチ入り。2年夏は決勝で現ロッテの主軸として活躍している山口 航輝選手擁する明桜に敗れ準優勝。3年夏はエースとして力投を見せ、決勝で再び明桜との対戦。9回4安打、11奪三振の快投を見せ2対0で勝利を収め優勝を飾った。

秋田大会から吉田は、夏の甲子園準決勝まで10試合連続完投勝利を挙げた。さらに夏の甲子園の1回戦から準々決勝にかけて4試合連続で2ケタ奪三振を記録し、斎藤 佑樹、松井 裕樹が持つ大会記録に並んだ。準決勝では日大三に勝利を収め秋田勢として103年ぶりの決勝進出を果たした。

大阪桐蔭との決勝戦では5回12失点で降板し、この年の夏の甲子園の王者は大阪桐蔭で準優勝は金足農となった。さらに吉田はこの夏の大会で投げた全投球数878球は夏の甲子園の歴代2位の記録であり、「金農旋風」と呼ばれる社会現象となった。

吉田はこの年のドラフト1巡目で根尾 昴を外した日本ハムから外れ1位で指名を受け、1年目の6月には広島戦でプロ初登板初先発。5回4安打1失点の好投でプロ初勝利を挙げた。ルーキーイヤーは1軍で4試合に先発し、1勝3敗、防御率は12.27とプロの厳しさを体感した。2年目の2020年は5試合の先発登板で0勝2敗、防御率8.41を記録。3年目は開幕6戦目にロッテ戦に先発するも、2回4安打7失点と3年目はこの1試合だけの1軍登板で終わった。

4年目は主にリリーフとして活躍を見せシーズン通して1軍に帯同し、リリーフとしては47試合に登板で防御率は3.31を記録。シーズン全体では、チーム2位の51試合(先発4回)に登板し、2勝3敗5ホールド、防御率4.26という成績を残した。5年目は開幕からコンディショニング不良で1軍出場は3試合のみでシーズンを終え、今年オフの11月24日に黒木 優太(橘学苑)とのトレードでオリックスに移籍し背番号は23に決まった。

「高校野球ドットコム」では3年時の吉田にプロを決断した経緯などのインタビューを行っている。どのような思いでプロの道に進もうと思ったのか当時のインタビューを再構成してお届けしたい。

<インタビュー初掲2018年10月10日>
**********

プロ志望決断の理由は全国大会の実績から

吉田輝星

――まず最終的にプロ志望決断した時期はいつでしょうか?
吉田 国体が終わって秋田に帰ってきてから、4日に監督、校長先生、部長、両親と話し合って決めました。相談をしていくにつれてプロというものを本格的に意識しはじめました。
――その決断の決め手は何でしょうか?
吉田 やはり甲子園、国体で自分たちの力を発揮してチームでかてたことがそうい決断につながりました。
――吉田選手の進路に対して、ご両親と話し合ったそうですが、どのような答えが得られましたか?
吉田 自分の決断に対して強い意志を持っているのならば、それは尊重するけど、野球選手が終わってからの人生が長いのだから、そこをしっかりと考えてから、選びなさいといわれました。
――たくさんの人と話をしてプロ志望を決断したということですが、自身の中でいくつか選択肢がある中で、迷いというものはありましたでしょうか?
吉田 やはり甲子園で環境が一気に変わりましたし、自分の実力を客観的に見られなくて、最初はプロで通用するのかを考えた時、不安がありました。4日にプロに行きたいと決断した後もそういう不安があって、しっかりと考えて本日(10日)、プロ志望届けを提出しました。
――今回、その決断を決定づけた試合というのはありましたか?
吉田 これだという決定的な試合はなく、甲子園1試合1試合を戦って少しずつ変わってきたと思います。
――進学という情報もありましたが、それでも吉田選手の気持ちが揺れたのはなぜでしょうか?
吉田 やはり幼いころからプロ野球選手になりたいという思いがありました。夏の秋田大会に入る前は大学でやってみたいと思いましたが、甲子園の経験、U18で周りの選手を見てみて刺激を受けたので、新しい心が芽生えてきたと思います。
――プロ志望届を出したということは12球団どこでもOKでしょうか?
吉田 はい。プロの世界で入れるのであれば、チームは関係ないので、どこでも努力をしようと思います。どの球団でも入りたいと思います。

チームメイト、地域の方々の存在は励みになった

吉田輝星(金足農時代)

――今回の会見のように大勢の報道陣に囲まれて、人生の転換期を迎えた2か月間だと思いますが、どう感じて過ごしてきましたか?
吉田 やはり甲子園にチーム全体で戦っていきましたが、勝ち進むと、今度は追われる感じになりました。そこで気を抜かず 自分の持ち味を出すことを意識しました。注目され方も変わりましたが、それでも自分のやるべきことを変わらずにできたと思います。
――吉田選手の中で、日常生活はこれまでより変化がありましたか?
吉田 やはり国体が終わって、自分の時間を野球のために使おうと思いました。甲子園を経験してすごい変わったなと思いました。
――在校生の反応はいかかでしょうか?
吉田 気を遣ってくれて僕に対していつも通りの接し方をしてくれてとてもうれしかったです。
――今回の決断に対して、チームメイトはどんな反応を見せてくれましたか?
吉田 これまで自分の進路を全く話ませんでした。ようやく今回の決断に対して話をすると、どこにいっても応援するよと3年生のチームメイト全員がいっていただきました。
――地域の方々は甲子園のあたりから話題になって声援を受けたと思いましたが、どのような反応がありましたか?
吉田 感動ありがとうと声をかけられたんですけど、そういわれる中で、自分も勇気づけられましたし、応援してもらってうれしかったですし、甲子園ではその応援に応えたいと思いました。また次のステージではどこ行っても応援するよと激励をいただきました。
――秋田の野球少年は吉田選手にあこがれる選手が多いですが、吉田選手になれますか?
吉田 しっかりと目標を立ててそれに向かってやることを練習内容も変わってきたので、目標をしっかりと持ってほしいと思います。

今度は日本代表で勝てる投手へ

吉田輝星(金足農時代)

――12球団OKの姿勢を見せた吉田選手ですが、どういう方針を持つ球団に行きたいと思いますか?
吉田 野球を全力で頑張れて、取り組める球団にいきたいです。
――どんなプロ野球選手になりたいと思っていますか?
吉田 U18で日の丸を背負わせていただきましたが、良いピッチングができなかったので、プロに進んで日の丸を背負える投手になりたいと思います。
――これほどの境遇が変わった吉田投手ですが、何か転換点となった試合はありますか?
吉田 やはり昨夏の秋田大会決勝戦で敗れたことだと思います。先輩たちがいなくなって、自分たちの代になって、自分たちがやっていかないといけないと同級生とミーティングをして変わるきっかけとなりました。それまでは言われて練習をやっている感じでしたけど、自分が考えてやる練習を取り組むようになって変われたと思います
――プロの世界ではどういうピッチングをしていきたいですか?
吉田 自分の自信あるストレートを磨いて勝負していきたいと思います。
――ちなみにこういうポジションで投げたいのはありますか?先発やリリーフなど。
吉田 いやそれは全く考えてはいないです。
――気が早いですが、またプロで活躍して、メジャーに行きたい気持ちはありますか?
吉田 それもないです。
――先ほど日本代表になって勝てる投手になりたいと話していましたが、秋田県民の方々にはどんな姿を見せたいと思いますか?
吉田 甲子園で県民の方々に応援していただいたので、その目標を達成して、自分の成長した姿を見せて恩返しをしたいと思います。

吉田はプロ志望のきっかけについて全国大会の実績を挙げてくれた。彼だけではなく、甲子園の活躍でプロ志望に変えた選手に出会ったことがあり、やはり甲子園というのは、選手の心を大きく変化させるステージだと実感してくれる。また、侍U18代表とともに刺激を受けた吉田。日本代表の存在は選手にとってさらに高みを目指すきっかけにもなる場であった。この決断に至るまでかなりの時間を要しただけに、1つ1つ記者の質問を丁寧に答える吉田の表情はどこかすっきりしていた。ただただ吉田のプロでの活躍を祈念したい。

(取材・構成=河嶋宗一)

この記事の執筆者: 鎌田 光津希

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