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2023年の仙台六大学野球を総括!光った6大学それぞれの個性

2023.12.21


仙台六大学野球は今年も春、秋ともに東北福祉大と仙台大による優勝争いが繰り広げられ、春は仙台大、秋は東北福祉大が制した。また秋は東北工業大、東北学院大、東北大による三つ巴のAクラス(3位以内)争いも白熱。リーグ全体のレベルは年々上がってきている。リーグ戦をほぼ毎週取材した筆者が、2023年の6大学の戦いぶりを総括する。

秋は投打かみ合った東北福祉大が全勝優勝

東北福祉大・島袋 皓平

東北福祉大は春はあと一歩のところで優勝を逃し、2季連続で仙台大の後塵を拝した。秋は2020年秋以来となる全勝優勝で王座奪還。しかし明治神宮大会出場をかけた東北地区代表決定戦は初戦敗退を喫し、全国の舞台に立つことはできなかった。

春、秋ともに強力投手陣の中心を担ったのが、北畑 玲央投手(4年=佐久長聖)。春は4勝1敗、防御率0.89と先発の役割を果たし、中でも東北工業大2回戦で披露した8回17奪三振無失点の快投は圧巻だった。ケガで出遅れた秋も終盤は先発、中継ぎでフル回転し優勝に貢献。2季連続で最優秀投手賞に輝いた。

優勝した秋は北畑以外の4年生投手の活躍も目立った。エースの後藤 凌寿投手(4年=四日市商)が本調子ではない中、佐々木 繕貴投手(4年=古川学園)、野口 聡大投手(4年=和歌山東)、浅野 駿吾投手(4年=遠軽)らが、要所要所で好投しチームを救った。リーグトップタイの3勝を挙げた櫻井 頼之介投手(2年=聖カタリナ)、常時150キロ台の直球に加え、変化球の精度も増してきた堀越 啓太投手(2年=花咲徳栄)ら、下級生も先発として成長。来年も鉄壁の投手陣が立ちはだかる。

野手陣は来年、大学ラストイヤーを迎える3年生が躍動した。その筆頭が、強打と好守を併せ持つ島袋 皓平内野手(3年=沖縄尚学)。秋は「4番・遊撃」に定着して打率.385、3本塁打、10打点と打ちまくり、最高殊勲選手賞、最多本塁打賞、最多打点賞、ベストナインと4つのタイトルを獲得した。下級生の頃から出場機会を得ている西村 彰浩外野手(3年=聖望学園)、大内 海斗内野手(3年=高川学園)、石井 寛人内野手(3年=明秀日立)らも攻守にわたって安定感が増しており、ドラフトイヤーが楽しみだ。

仙台大「黄金世代」は全国8強入り

仙台大・佐藤 幻瑛

仙台大は春はリーグ戦を制し、8年ぶりの出場となった全日本大学野球選手権でも2勝し8強入りを果たした。秋は最終節で東北福祉大に連敗を喫し、リーグ戦3連覇はならず。それでも、中日から3位指名を受けた辻本 倫太郎内野手(4年=北海)を中心とした、「黄金世代」と呼ぶにふさわしいチームだった。

大学野球界に衝撃を与えたのが、ルーキー佐藤 幻瑛投手(1年=柏木農)の活躍だ。春、開幕2戦目や優勝が決まった最終戦を含むチーム最多7試合に先発し3勝をマーク。秋は終盤苦戦したものの、東北大2回戦で7回参考ながらノーヒットノーランを達成するなど3勝を挙げ、1年間先発ローテを守り切った。秋の新人戦では150キロ台を連発して球場を沸かせた右腕は、伸び代も十分。全日本選手権や大学日本代表候補合宿でも実力を発揮しており、早くもその名が全国区となりつつある。

川和田 悠太投手(4年=八千代松陰)、須﨑 雄大投手(4年=東海大市原望洋)ら4年生も、特に秋はブルペンを支えた。来年は南 勝樹投手(3年=白鷗大足利)、相原 雄太投手(3年=伊奈学園)、武者 倫太郎投手(3年=帝京)ら実力のある3年生が最上級生となり、投手陣を引っ張る。中でも、技巧派左腕の南は春は防御率⒈47、秋は同1.25と主に先発で安定した投球を続け、今やチームに欠かせない存在となっている。

野手陣は春、秋ともにチーム打率が3割を超える強力打線を形成した。個人成績を見ても春は7人、秋は4人が3割超の打率を記録。辻本のみならず、坂口 雅哉捕手(4年=八王子)、菅原 礼央内野手(4年=旭川大高)ら、経験豊富な4年生が攻守の要を担った。メンバーが大きく入れ替わる来年は、新主将の小田倉 啓介内野手(3年=霞ヶ浦)や、今秋首位打者に輝いた平野 裕亮外野手(3年=山村学園)を中心に、再び穴のない打線をつくりたい。

秋のし烈なAクラス争いを制したのは東北工業大

東北工業大・菅井 惇平

昨年は春、秋ともに最下位に沈んだ東北工業大は春4位、秋3位と息を吹き返した。Aクラス入りは2019年春以来、8季ぶり。春の新人戦でも仙台大を破って準優勝を果たすなど、まさに躍進の1年となった。

他大学と比較しても顕著だったのが、1年生の活躍ぶりだ。秋、3番や5番を打った菅井 惇平外野手(1年=日本ウェルネス宮城)は打率.385をマークしてベストナインと優秀新人賞を獲得。千葉 周永内野手(1年=一関学院)や、菅原 琉生外野手(1年=八戸学院光星)も1年目から存在感を示した。投手のルーキーでは對馬 温斗投手(1年=仙台城南)が秋に台頭。先発、中継ぎでチームトップタイの6試合に登板して防御率3.00と、堂々たる成績を残した。

2年生以上では、エース左腕・後藤 佑輔投手(3年=仙台育英)の存在が大きかった。春は3完投2完封で3勝を挙げ、リーグトップの45奪三振を記録。首脳陣からの絶対的な信頼を勝ち取り、秋も先発の柱を担った。140キロ台の速球を持つ伊藤 理壱投手(2年=仙台城南)は、課題だった制球力が向上し、春の新人戦では仙台大相手に9回10奪三振無失点と好投し勝利に貢献。秋は主に中継ぎで流れを引き寄せる投球を続けた。

秋は3位に食い込んだが、東北福祉大、仙台大の「2強」には全敗を喫し、計4試合で無得点に終わった。1年次から中軸を任されリーグ戦通算5本塁打を放っている佐久間 永翔内野手(2年=白石工)ら経験値の高い野手も多いだけに、打線のさらなる活発化に期待がかかる。

星新監督のもと課題と収穫得た東北学院大

東北学院大・古谷 龍之介

東北学院大は今年2月にOBで元巨人、西武の星 孝典新監督が就任した。春3位、秋4位で、秋は2019年春以来、8季ぶり、史上3度目のBクラス(4位以下)という屈辱を味わった。来年は巻き返しを図り、再び優勝争いに加わりたい。

野手でめざましい活躍を見せたのが、3年次まではリーグ戦出場経験のなかった右の強打者・山中 海渡外野手(4年=東北学院榴ケ岡)だ。春、リーグ2位の打率.395をマークすると、秋も打率.300、1本塁打、10打点と結果を残しベストナインに輝いた。実力がありながらも、くすぶっている選手の台頭はチームに勢いをもたらすだけに、来年はどの選手がブレークを果たすか注目だ。

投手ではエースの古谷 龍之介投手(4年=北星大附)が有終の美を飾った。春、秋ともに強敵の仙台大から白星を挙げ、秋は東北福祉大戦でも敗れたものの、9回11奪三振無四球1失点と「過去最高」の投球を披露。秋は2勝、防御率1.47、32奪三振でキャリアハイの数字をたたき出した。

古谷が抜けるのはチームにとって痛手だが、先発では左腕の石川 岳人投手(3年=石巻西)が経験を積んだ。高橋 幸誠投手(2年=東陵)、堀川 大成投手(2年=東日本国際大昌平)らは、制球力などに課題を残したものの、ポテンシャルの高さを示すには十分な投球を見せた。野手も山中をはじめ実力者が多く卒業する。強打者タイプの台頭が目立つ中、秋1番に定着し最多盗塁賞を獲得した高橋 琉外野手(2年=久慈)ら機動力を使える打者も成長してきているだけに、好投手相手にも通用する新たな攻撃パターンを確立したい。

東北大は2年生右腕が驚異の鉄腕ぶり発揮

東北大・佐藤 昴

東北大は春、秋ともに5位で目標とするAクラス入りはならなかった。ただ、主将の小林 厳捕手(4年=江戸川学園取手)を中心に、最後まで勝ちをあきらめない粘り強い野球を展開した。

投手陣は昨年の「二枚看板」が抜け戦力ダウンを懸念されていたが、佐藤 昴投手(2年=仙台一)が大きく成長し不安を払拭した。特に秋はリーグトップの55.1回を投げ3勝、防御率2.28と大車輪の活躍。東北福祉大戦ではタイブレークの末に敗れたものの、9回まで1失点に抑える好投を見せ、王者を苦しめた。また春7試合に登板した西山 稜大投手(3年=ダブリンコフマンハイスクール)、秋8試合に登板した三栗谷 凜大投手(4年=都立青山)ら中継ぎ陣の奮闘もチームを支えた。

野手陣では、春は3番に座った中丸 宏平外野手(4年=佼成学園)が打率.371、2本塁打、10打点と躍動。4番の鈴木 杜朗内野手(3年=仙台二)も打率.265、1本塁打、13打点と強打者ぶりを発揮し、この2人を中心とした強力打線を形成した。一方で秋は東北福祉大、仙台大に次ぐ4本塁打が飛び出すなど怖さは健在だったが、チーム打率は1割台と伸び悩み課題も残した。

投手は安定感のある先発がもう一枚そろうと心強い。今年経験値を積んだ道下 大洋投手(3年=仙台二)、野瀬 陸真投手(3年=春日部)のほか、秋の新人戦で登板しブレークを予感させた越智 晴紀投手(1年=県立船橋)らも候補に挙がる。野手は鈴木杜や志和 孝祐内野手(2年=盛岡三)、原口 和弥内野手(3年=県立浦和)の二遊間を軸に攻守でレベルアップを図りたい。

宮城教育大は2季連続全敗を経て雪辱期す

宮城教育大・野口 武琉

宮城教育大は春、秋ともに全敗で最下位に沈む悔しい結果に終わった。春の東北福祉大2回戦では、リーグワースト記録となる1試合34失点を喫する惨敗も経験。投打ともに課題の残る1年となった。

投手陣は特に年間通じて苦しんだが、秋の最終節では明るい兆しも見られた。東北大1回戦で大川口 颯月投手(1年=東北学院)が3回無失点、野口 武琉投手(2年=仙台一)が4回無失点と好投。中でも野口は9三振を奪う圧巻の投球だった。平均球速が春と比べて7、8キロ程伸び、最速も140キロに到達した右腕が投手陣立て直しのキーマンとなりそうだ。野手兼任で1年目からリーグ戦を経験した大川口も同様に期待値が高い。

野手は朝倉 優大捕手(4年=東北学院)、若生 廣太朗外野手(4年=仙台一)ら最上級生が引っ張った一方、1年生もルーキーイヤーから積極的に起用された。右の好打者・金 颯太外野手(1年=盛岡三)は秋、21打席立って3割超の打率をマーク。千葉 柊弥内野手(1年=仙台三)、古川 慎旺内野手(1年=泉館山)も攻守ともにまだまだ荒削りだが早くもチームに欠かせない存在となっている。

野口を中心に投手陣が試合をつくることができれば、勝機は見えてくるはずだ。来年、まずは浮上のきっかけとなる1勝を手にしたい。

(取材・文=川浪康太郎)

この記事の執筆者: 川浪 康太郎

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