Interview

「社会人に進んでいたら、ドラフト指名はなかったと思う」藤田淳平(ソフトバンク育成7位)が語る「徳島のストロングポイント」<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー⑥後編>

2023.12.20


大学でドラフト指名漏れを経験した藤田 淳平投手は、「NPBに近い」と噂だった徳島インディゴソックスに入団する。150キロ超えの剛腕投手が揃う中で、140キロ中盤のストレートだった藤田は「勝てる先発左腕」であることをアピール。シーズン前期は大活躍した。しかし、後期に入ると、疲労蓄積とケガで一気に調子を落としてしまう。

前編はこちら
藤田淳平(ソフトバンク育成7位)、「150キロの速球派なくてもドラフト指名」 背景にあった戦略<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー⑥>
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影響を受けた椎葉(阪神2位)の姿勢

左からシンクレア投手・藤田投手・椎葉投手

ケガをして苦しむ藤田を支えたのは、阪神から2位指名を受けた椎葉 剛島原中央-ミキハウス)の背中だった。
「椎葉は右投手なんでタイプは違うんですけど、椎葉の行動や練習に対する姿勢は尊敬する部分、参考になる部分がたくさんありました。実際にウエイトとかも一緒にやらせてもらい、『1年通して作ってできた身体だな』っていうのが見て分かりました。『凄い努力したんだな』と。やればできるというのを証明してくれた存在でした」
徳島の代名詞ともいえる練習は徹底的なウエイトトレーニングだが、藤田も後半になって取り入れ始めた。
「本格的にウエイトを始めたのはシーズンの後半からなんです。ウエイトは大学4年間全然したことがなくて、根本的な基礎能力っていうのは知らなかったので、底上げができたのは良かったですし、ウエイトのBIG3(ベンチ、スクワット、デッドリフト)とか、それ以外の投球動作に繋げる強さのトレーニングなども教えていただいたので、そこはとても大きかったです」
インディゴソックスのもつケア施設も目いっぱい活用した。
「もちろんウエイトなどで鍛えるのはそうですけど、やっぱり自分はケアを大切にしていこうと感じました。自分のやっていたセルフケアっていうのはあまり効果がなく、機材などを使ったり、トレーナーにやってもらうっていうのが、シーズン通して一番効果がありました。ウエイトも大切ですが、シーズンを戦い抜くためにはケアを一番大事な場所かなと感じました」

ドラフトまでの気持ちは『まぁ来年頑張るか』

藤田 淳平

なかなか調子が上がらない中で藤田はドラフトを迎えた。
「独立からプロに行く人は、後期が大切。前期が調子よくなくても、後期で調子が上がってきたらいけるかもしれないと、前々から聞いていました。自分は前期は調子が良くて、後期がダメでした。指名は無いものだと思っていましたね。もともと2年間徳島でプレーをするって決めてたんで『まぁ来年頑張るか~』ぐらいの気持ちでドラフト当日を迎えました」
しかし、結果はソフトバンクから育成7位で指名。
「『今日はウエイトの日だなぁ~』と考えながら時間を過ごしていました。大学の指名漏れの時は『ヤバい』みたいな気持ちでしたが、そうじゃなかったです。『この感じであと1年間続けたらNPBにいけるだろう』とイメージしていたので。で、指名されたときは『おぉ~』ってなりました(笑)」
藤田は驚きと喜びを隠しきれず思わず涙が出てしまっていた。
「とにかくほっとしました。本当に呼ばれると思ってもいなかったですし、これでNPBの道に歩めるきっかけとなったんで、感情が勝手に出たっていうか、なんて表現したら分からないですけど、色んな人、今までお世話になった人を思い出しました。両親も実際にその場に来てくれていました。そんな人たちのことを考えたら涙がこぼれました」

後半戦で調子を崩した藤田はなぜ指名を受けられたのだろう。
「岡本(哲史)監督に言われたのが『試合を作るっていうのは計算できる投手』。チームメイトが投げる150キロ超えの速球は、自分も憧れる部分もあったんですけど、『試合に勝つってところは負けてない』という自信はありました。そこを売りにしたところが、スカウトの人が評価してくれている部分だったと思ってます」
四国アイランドリーグplusでは毎年「ソフトバンク杯」という名の交流戦がある。ソフトバンクはこの1年、間近で「勝てる投手」藤田の力を見ていたのだろう。

「感謝してもしきれない」

藤田 淳平

巨大戦力を誇るソフトバンクでは、これまで以上の厳しい戦いが待っている。
「キャンプは宮崎と筑後に分かれるんですけど、まずは宮崎の1軍、2軍のキャンプに参加できるように身体を仕上げたい。育成は通過点ぐらいの気持ちで毎日泥臭くやれたらなっていうのはあります」
ソフトバンクでも自らの特長をしっかりアピールするつもりだ。
「今年指名を受けた同期の選手と比べて年齢は若い方ではないと思う。若い子たちには負けないくらい泥臭くというか変にクールぶらないで、こいつ探求心あるなとか向上心あるなっていうのを首脳陣に見せるというか、人間性の部分であったりとか技術以外の部分でもアピールできる選手になりたいです。また、速球も上げたい。1試合の平均球速が変わらない投手になって、先発を任される存在になりたいと思っています」
ちなみに藤田のストレートは、インディゴソックスでしっかりアップしている。MAX148キロ、常時140キロ前半を記録。最速もアベレージでも1年で5キロほど上がった。

ところで、今年のソフトバンクのドラフト1位は高校生NO.1左腕の前田 悠伍投手(大阪桐蔭)。前田はコントロールが良く球速も140キロ中盤を投げる。藤田と似た投球スタイルだ。
「前田君はやっぱり凄いなって思います。NPBの世界に入ったからには、対等に支配下も育成もチャンスはあると思っているので、変に意識はしないようにしたいです。評価してくれるのは首脳陣の方なので、どこか1つでも良いなと思える部分を見つけてもらうように、どの面でも努力することを意識したいです」
来年、ソフトバンク杯で今度は徳島相手に投げる可能性が高い。
「徳島の皆さんに自分の成長を感じてもらいたいです。一番感じてもらいたいのは球速。徳島では速い方ではなかった自分が、いきなり150キロなどを投げたら『えっ!!』ってなると思う(笑)」

最後に改めて徳島インディゴソックスで過ごした1年を振り返ってもらった。
「NPBを目指すなら1番の近道。最もNPBの目に止まりやすい球団です。実際にシーズン通してスカウトさんがたくさん球場に足を運んでくださっています。1年前、企業チームに入っていたら、NPBに行けてなかったと感じています。
徳島では成長もできるし、NPBのスカウトからいいところを見てもらえて、評価してもらえる。徳島インディゴソックスには感謝してもしきれないです」
徳島インディゴソックス。そこは、野球選手の夢が叶えられる場所なのである。
取材・文 鎌田光津希(元徳島インディゴソックス、千葉ロッテマリーンズ)

『インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー』・完

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この記事の執筆者: 鎌田 光津希

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