虎の次世代守護神候補・椎葉剛 が語る“急成長”独立球団の謎「インディゴソックスはNPBにもっとも近い場所です」<徳島インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー①後編>
今年のドラフト会議で「11年連続&6人同時指名」という快挙を達成した徳島インディゴソックスの育成力の秘密に迫る本企画。阪神からドラフト2位位指名を受けた椎葉 剛(島原中央-ミキハウス)の後編をお届けする。<前編は>こちら
社会人時代はほとんど試合にも出ず、カメラマンが主な仕事だった男は、徳島入団わずか1年で急成長した。徹底的かつ合理的なトレーニングで、球速は11キロアップの159キロを記録。これまでつねに悩まされていたケガもなくなった。気持ちにも変化が現れ始めた。
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トレーニングはマウンドでの自信にもつながった
トレーニングをしっかりと行い、身体も技術も向上した椎葉。マウンドでの自信もついてきた。
「徳島で試合を重ねていくうちに、自分の持ち味は何かって思った時に、やっぱりストレートだってことを改めて確認し、ストレートは自信を持って投げようと思って投げてました」
試合を重ねていくごとに椎葉は成長した。球速が上がるだけでなく、“球の質”も良くなっていった。
「球の質って実際は簡単に変えられるものじゃないんです。ですので『球の質を良くしよう』というより、『手元での強さ』を意識して投げるようにしました。フォーム自体はミキハウスのときと全く変えていません。投げる感覚を変えました。ミキハウスのときは、力いっぱい投げる、っていうのが自分の投球スタイルと思っていたんですけど、徳島に来てからはバランスよくいい力感で投げる方が良い球がいってるなって感じ始めました。意識的に変えたのは『投げるときの力感』ですね。それで結果的に球質が良くなったかなと感じています」
トレーニングによって身体を変わった。試合に出ることで身体の変化を実感し、自信が生まれた。自信が生まれることで、マウンドでの意識が変わった。まるで垂直のような成長曲線だ。徳島での1年間で、椎葉の野球選手としての価値はどんどん高まっていったのだった。
徳島インディゴソックスがなければ「今の自分はいない」
椎葉が改めて徳島での1年間を振り返る。
「社会人の時に試合に出られてなくて控えの生活が長かった分、シーズン通して戦えた徳島での1年間は、すごく短く感じました。すごく楽しかったです。もちろん生活面での環境は厳しいです。でも、野球に対する環境っていうものは、社会人であったり、ほかの独立リーグよりは徳島はやっぱり優れてるなっていうのは感じました。
徳島はほかの環境よりもNPB近いなっていうのは感じました。徳島にもっと早く行っておけばよかった。徳島がなければ今の自分はない。感謝しかないです」
「信頼してもらえる投手になりたい」
未来の話も聞いてみよう。椎葉が入団するのは、今年の日本一にして圧倒的な人気を誇る阪神タイガースである。12球団屈指の投手陣の中で椎葉はセットアッパー・将来のクローザーとして期待されている。重圧は感じていないのだろうか。
「正直、プレッシャーは感じてないのが本音です。どちからといったら楽しみの方が大きいというか、自分がどこまで通用するのかなって言うのか本音です。僕はピッチャーとしての経験が浅いんで、シーズンでの戦い方だったりとか、投球の技術であったりとか、そういうものが全然足りていない。細かいことを聞きたいなっていうのはあります。
また調整方法なんかもあんまりわかっていないと思う。人それぞれ調整方法があると思うんですけど、それを聞いてみたいです。トレーニングもそう。たくさんある自分の足りないものを、いろんな人の意見を聞きながら試行錯誤していきたいです」
阪神には2020年ドラフト8位で入団した、同じ四国アイランドリーグ出身の石井 大智投手(秋田高専-高知ファイティングドッグス)がいる。
「日本シリーズをずっと見ていました。自分も負けないように四国アイランドリーグを盛り上げられるように、1日でも早く投げたい。甲子園のマウンドに立ちたい。一番近い目標をあげるなら、開幕一軍。そして1年間ケガなく、長く野球人生を続けたらなと思っています」
椎葉は今年のドラフト候補の中で最速の、159キロを投げる剛腕だ。あと1キロで夢の大台に手が届く。
「そうですね。160キロは投げてみたいですね。それもありますが、平均球速と調子の波をなくすことが大事かな、と思ってます。自分が投げれば安心してもらえる、『今日は椎葉だから大丈夫だ』って思えるぐらい、信頼してもらえる投手にはなりたい」
たった1年前、野球を嫌いになりかけた男が、徳島で濃密な時間を過ごしたことで夢を摑んだ。野球選手としてだけでなく、人間性までもが成長した。椎葉はこの1年を忘れないで欲しい。NPBの世界でも、徳島と同じように貪欲に取り組めば、セットアッパー、クローザーとして輝く日は近いはずだ。
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取材・文/鎌田光津希(元徳島インディゴソックス・千葉ロッテマリーンズ)