【愛知】2回戦 至学館 vs 中部大春日丘
至学館が8回、3連続スクイズなどで中部大春日丘を突き放す
<第76回愛知県高校野球選手権大会:至学館7-1中部大春日丘>◇16日◇2回戦◇豊橋市民
序盤の好カードの1つと言ってもいい対戦である。名古屋地区の4強に続く勢力として近年躍進著しい両校だ。
至学館は昨秋、今春と県大会準優勝で東海地区大会にも進出している。中部大春日丘は、この夏は準決勝進出を果たし、優勝した愛工大名電に敗れはしたものの、食い下がった。悲願の甲子園出場に手が届きかかっている。とはいえ、ここからのあと一歩二歩がいかに厳しいかということは、齊藤真監督は嫌と言うほど実感している。ことに、近年は上位に残ることが多くなってきており、その分、最後の壁の厚さを痛感しているとも言えようか。
至学館は、この秋のチームから、指揮官が交代した。創部当初からチームを作り上げていき、春夏1度ずつ甲子園にも導いた麻王義之監督が定年でもあり勇退。その後を責任教師としてコーチも務めて一緒に指導していた鈴木健介監督が引き継ぐ形でのスタートとなった。名古屋地区予選は会場校として危なげなく県大会出場を決めたが、リーグ1位校での決勝トーナメントでは初戦で享栄に競り負けて、シード権を逃した。
至学館は変則左腕アンダースローの松本 龍誠投手(2年)、中部大春日丘は右腕投げ下ろしの角野 聖哉投手(2年)と、タイプの異なる両投手の投げ合いで試合はスタートした。お互いに2回に満塁の得点機を得るものの、両投手が踏ん張り、その後は淡々とした感じの投げ合いが続いて、前半は0対0。お互いにもう1つ決め手を欠いていたともいえるかもしれないが、新チームでもある。両投手の好投で、攻略の糸口をつかみきれないという表現の方が的確であろう。それくらいに、両投手はいいリズムで投げていた。
クーリングタイムを経て、後半に入った6回、試合は動いた。
至学館は1死から、4番・米澤 虎徹内野手(2年)以下、上松 快渡外野手(2年)、廣瀬 天太外野手(2年)とエンドランが功を奏して3連打で先取点を奪う。さらに、持ち味とも言ってもいい内野ゴロGO戦術で2点目を奪った。このあたりは、指揮官が代わっても、至学館野球健在といったところである。
その裏、中部大春日丘も2番・安藤 夏希外野手(1年)と小島 旬平内野手(2年)の連打で一、二塁とする。ここで至学館のマウンドに、7番をつけた右上手投げの堀尾 映太投手(2年)が登板。犠飛は許したものの、1点に抑えた。
このまま僅差の競り合いで最後まで行くのかなと思われたが8回、新生・至学館が「らしさ」を発揮した。
この回、先頭のエガレバ・クリントン内野手(2年)が三塁線を破る二塁打を放つと、ここで中部大春日丘の齊藤監督は、ここまで踏ん張っていた角野投手から交代して、1番をつけた水野 拓海投手(1年)を投入。1死三塁となってから、四死球で満塁となる。ここから至学館は7番の奥村 壮太内野手(2年)、堀尾、千田 陽生捕手(2年)と3人が連続でスクイズを試みて、ことごとく成功し、送球ミスもあって4点が入る。さらには、トドメとして1番・鈴木 一輔外野手(2年)が左越え二塁打。この回5点のビッグイニングを作った。これで、試合そのものも、ほぼ決着となった。
監督として、県大会初勝利となった鈴木監督は試合後、開口一番「よかったあ。ホッとしました」と安堵していた。やはり、ある程度実績のあるチームを引き継いでいくことのプレッシャーも少なからずあったようだった。
「そんなに得点の取れるチームではありませんから、まずは先に点をやらないということで投手を含めて守りで踏ん張るという戦いでした。後半になれば、何とか点は取れるかなという自信はありましたから、その思惑通りにはなりました」と、まずは、前半の松本投手の踏ん張りを評価していた。
そして、至学館の戦いのスタイルとしては、「やはり、至学館のスタイルというのが染みついているところはあると思うので、こういうスタイルは、そんなには変わらないと思う」と、ここというところで仕掛けていって、あらゆる手段で得点を奪っていくという至学館野球の継続を強調していた。
取材=手束 仁