【鹿児島】準々決勝 鶴丸 vs 出水工
鶴丸
鶴丸が全校応援の後押しで苦闘を制す<鹿児島秋季大会>
<第153回九州地区高校野球大会鹿児島県予選:鶴丸11-9出水工>◇6日◇準々決勝◇鴨池市民
鶴丸は与四死球10、13安打、出水工は与四死球8、7安打と、両チームとも制球難に苦しみ、互いに主導権を握れないまま終盤まで点の取り合いが続いた。
2回に1点を先制された鶴丸はその裏、3番・中村 仁(2年)の中前2点適時打などで3点を返して逆転に成功した。
3回にスクイズで1点差とした出水工は4回、2死から途中出場の8番・小﨑 湧登(1年)がソロ本塁打を放って同点に追いついた。その後、内野安打、死球、エラーで更に満塁と好機を広げ、3番・松元 怜音(2年)の左越え二塁打で2点を勝ち越した。
2点差を追いかける鶴丸は5回、無死満塁から併殺、8番・岩﨑 新太(2年)の中越え二塁打で同点に追いつくと、1番・向原 伸之介(1年)の内野安打で勝ち越し、重盗と2番・有馬 純希(2年)の左前適時打で、計5点を挙げて、3点のリードを奪った。
7回、出水工が犠飛で2点差に迫れば、8回、鶴丸はスクイズと、7番・毛利 翼(2年)の中越え三塁打で点差を4点に広げた。
9回、出水工は3四球で2死満塁。打席は4回に特大ソロを放った小﨑を迎えた。小﨑の打球は三塁線方向に高々と上がった飛球。ポテンヒットで2者生還し、2点差としたが、一、二塁間でオーバーランした小﨑が左翼からの返球でタッチアウト。2時間51分の苦闘は辛くも鶴丸がものにした。
鶴丸・福田健吾監督は「考える力がある分、平常心でいるのが難しかったのかも」と苦笑する。鹿児島商、鹿児島実に勝っての8強入り、周囲の期待、全校応援…。普段とは違う環境の中だからこそ、平常心でプレーする大事さは十分理解していたはずだが「力が入ってしまった」と寺内 幸大主将(2年)は反省する。
3人の投手陣を繰り出したが、10四死球を与え、鹿児島実戦のような守備でリズムを作れなかった。「どんな時でも笑顔でプレーする」(寺内主将)のがモットーだが、「笑顔がないぞ!」と福田監督から度々ハッパをかけられた。
なかなか主導権を握れないもどかしい展開の中で、最後に背中を押したのは一塁側に陣取った全校応援の力だった。1年生から3年生まで全校生徒、教職員、OBや保護者らも加えれば1000人を超える大応援団で一塁側スタンドを埋め尽くしていた。市民球場は住宅地の中で鳴り物や大声での応援ができない中で、息の合った手拍子のリズムが回を追うごとに統一がとれ、地鳴りのようなリズムが、選手たちを勇気づけ、相手の平常心を狂わせた。
試合前日、3年生野球部員たちが学校と掛け合い、応援団と放課後に残っている生徒や部活動生らで応援練習をしたという。寺内主将は「応援のおかげで勝つことができました」と頭を下げる。鶴丸が苦しみながらも2004年春以来、39季ぶり、実に19年半ぶりとなる4強入りを果たした。