【西東京】準決勝 日大三 vs 明大中野八王子
日大三が流れを変えた針金の一発を含む本塁打4本で圧倒!2年連続の甲子園にあと1勝
<第105回全国高校野球選手権西東京大会:日大三14ー4明大中野八王子(6回コールド)>◇27日◇準決勝◇神宮
日大三と明大中野八王子は昨年の秋も対戦し、その時は10対3で日大三が圧勝している。しかし秋と夏の大会は全く別物だ。実際、この試合の立ち上がりは、完全に明大中野八王子のペースだった。
明大中野八王子は、日大三の先発、エースの安田 虎汰郎投手(3年)を完全にとらえる。1回、明大中野八王子の1番・篠﨑 惠友外野手(3年)が遊失で出塁すると、2番・小薗 卓也外野手(2年)が左前安打、3番・西川 幸史朗外野手(3年)の右前安打で満塁となり、4番・井戸 端治郎内野手(3年)の二塁打で幸先よく2点を先制する。さらに6番・栗原 稔季内野手(2年)、7番・金子 塁登内野手(3年)の連続スクイズで2点を追加し、初回に一挙4点を挙げた。「初回はアウトが欲しくて投げ急ぎ、球が真ん中に行き打たれました。もう少し余裕を持てればよかったのですが」と安田は語る。安田は、2回以降は立ち直り、本来の制球のいい、落ち着いた投球をする。
通常のチームであれば、初回の4点はあまりに重い。しかし今の日大三打線なら十分に返せる得点であった。日大三は4点リードされてもしっかりとバントで送り走者を進める攻撃をする。明大中野八王子は、1年生の下手投げ・上原 和玖投手が先発する。1回、日大三は1死一、三塁から4番の岡村 颯大内野手(3年)の右前安打で1点を返す。2回は2死二塁から1番・古賀 也真人内野手(3年)の右前安打でまた1点を返す。いずれも犠打で得点圏に進んだ走者を単打で還した得点だ。
それでもリードしているのは明大中野八王子であったが、試合が完全にひっくり返ったのは4回だった。この回先頭の6番・針金 侑良外野手(3年)は右翼席に特大の本塁打をたたき込む。高校通算20本目で公式戦では初本塁打だ。針金のパワーは早くから知られていた。しかし試合で結果が出ないうえに、守備の不安もあり、秋や春はなかなか試合に出場できなかった。「どうしようという気持ちになっていました」と針金は言う。今大会に際して三木監督は使い続けることを針金本人に伝えていた。それが結果となって表れたことになる。
針金の一発は日大三の猛打爆発の導火線になった。続く7番・大賀 一徹捕手(3年)が二塁打で出塁すると、犠打と犠飛で生還して同点に追いつく。さらに2番の池内 仁海外野手(3年)が、池内らしい体の軸の回転を生かした振りで左翼席にたたき込む本塁打を放ち、勝ち越す。続く3番・二宮 士内野手(3年)が右翼線深くへの飛球を放ち、これを明大中野八王子の右翼手・西川がダイブして捕球しようとするが、捕球できなかったうえに、西川は起き上がれず、その間に二宮は一気にホームインしてランニング本塁打になった。
5回は7番・大賀、8番・森山 太陽内野手(3年)、9番・安田と安打が続き、日大三が1点を入れたところで明大中野八王子は投手を1年生の上原から3年生の大嶋 遼投手(3年)に代えた。「うちのピッチャーでは苦しいのは分かっていました。何とか持ちこたえられたらと思っていました」と明大中野八王子の椙原貴文監督は言う。
勢いがついた日大三打線は簡単には止まらない。1番・古賀の四球に続き、2番・池内の三塁打で3人が還りこの回4点。6回はこの回先頭の5番・佐々木 純太郎外野手(3年)が本塁打を放つ。春までの日大三は池内、二宮ら右打者が目立っていたが、この大会に入り、左打者の佐々木や針金が活躍するようになり、左右両方が打つ、強力かつバランスのいい打線になってきた。この回、さらにつの四球に森山の二塁打、安田の内野安打で3点を加え、14対4で6回コールドが成立した。
明大中野八王子としては、またも日大三の壁を破ことができなかった。「まだ力が足りないことを痛感しました。ここを越えないと甲子園には行けない。いい勉強になりました」と椙原監督は言う。それでも、秋も春も結果を残せなかったチームが、夏は力をつけて2005年以来の4強に進んだ。大事な試合に先発した1年生の上原ら下級生がこの経験を次の成長につなげてほしい。
日大三は秋や春は存在感を示すことができなかった佐々木や針金が本領を発揮。秋や春の主役である池内も好調を維持している。強豪が次々と姿を消す中で、日大三の盤石さは際立っている。就任1年目の三木有造監督の下、2年連続の甲子園にあと1勝になった。