国分中央vs奄美・古仁屋

奄美・古仁屋は「バトン」を次につなげた

＜第105回全国高校野球選手権鹿児島大会：国分中央10－0奄美・古仁屋（5回コールド）＞◇7日◇1回戦◇鴨池市民

立ち上がり、奄美・古仁屋は1死満塁と先制機を作るも併殺で生かせず。

その裏、国分中央は1死一、二塁から4番・勝本 琳惺（3年）の右中間三塁打で2点を先取。暴投で3点目を挙げ、連続四死球で7番・東田 誠矢（2年）が左翼線二塁打を放って5点目を挙げた。

安打はこの2本だけだったが、計7四死球が効果的に絡んで一挙7点のビッグイニングを作った。

2、4回にも追加点を挙げて10点差とした。

先発したエース濵田 隆生（3年）は2回以降は無安打、1人の走者も出さず、5回は左腕・奥 亮太（2年）が三者凡退で切り抜け、1時間8分のスピードゲームで国分中央が5回コールド勝ちした。

「相手の応援にのまれた。監督の期待に応えられなくて申し訳ない」。奄美・古仁屋の森 瑠憧主将（3年）は唇をかむ。7四死球で7失点。先発の責任を果たせなかった悔しさがたまらなかった。

「応援は気にするな」。バッテリーを組む𠮷川 翔琉（3年）は度々マウンドに足を運んで、責任感の強い主将に声をかけリラックスさせようとした。

「何点とられてもいいから、ゲームを楽しんでこい！」

マウンドに集まった野手陣に伝令が遊畑玄樹監督のメッセージを伝える。古仁屋の有田 龍生（3年）が音頭をとり、全員で気合を入れた。2校の連合チームだがこれ以降「ずっと1つの学校でやってきたような感覚で野球がやれた」と𠮷川は感じた。

森の後を受けてマウンドに立った𠮷川は、打たれても、エラーがあっても淡々と投げ続けた。「シード校相手に自分らしい投球ができた」と振り返った。

奄美、古仁屋とも昨夏以降は部員不足で単独出場が叶わず、昨秋は鶴翔を加えた3校、今春は喜界も加わった4校での合同チームで県大会に出場した。昨秋は鹿児島実、今春は尚志館に大差でコールド負け。日頃の練習で9人そろうことはない。それでも野球を続けられたのは「応援してくれた母のため」と森主将。どんな時でも物心両面でのサポートを惜しまなかった母ともみさんの存在が野球を続けるモチベーションになった。𠮷川にとって「野球の楽しさ」はいつも不変だったから、やめようと思わなかった。

この夏もシード国分中央にコールド負け。それでも「『バトン』を次の世代につなげたことに意味がある」と遊畑監督は言葉に力を込める。逆境の中でもこの1年間、出場校の中に「奄美」「古仁屋」の名前を残し続けた。「いつの日かまた単独で出られる」夢をつなぐために。

（記事＝政 純一郎）