幕張総合vs千葉商
148キロ右腕擁する幕張総合、想定外の試合展開も打撃戦を制し、県大会へ
早坂 響(幕張総合)
<春季高校野球千葉県大会地区予選:幕張総合9ー8千葉商>◇12日◇第1地区代表決定戦
幕張総合の148キロ右腕・早坂 響投手が注目されていた。中学時代は捕手で、2年秋の途中まで捕手だったが、自慢の強肩を買われ、投手へ転向した。いきなり140キロをマークすると、そこからフォーム固めを行い、最速148キロに到達。練習試合でも好投を続け、スカウトから注目を浴びる存在となり、この日も多数の球団スカウトが詰めかけていた。
早坂はベンチスタートだった。肩、肘への負担をかけないよう、先発として長いイニングを投げさせるのではなく、基本的にリリーフで、長くても4、5イニングぐらいで、じっくりと投手としての土台を築き上げていた。この日も2番手としてスタートするのは決まっていて、柳田監督としては後半に投入できれば理想と語っていたが、うまくいかないのが公式戦。想定外のことがすべて起こったが、総力戦で勝ちきった。
2回、幕張総合は2死から7番・江村 叶翔外野手(3年)の適時二塁打で1点を先制。しかしその裏、千葉商は9番・榎本 空透内野手(3年)のスクイズ、1番・鶴岡 清内野手(3年)の適時二塁打で逆転に成功する。さらにバッテリーミスで3点目を入れる。さらに押し出し四球を与えたところで先発の上田が降板し、早坂が登板するが、いきなり大暴投で5点目を与えてしまう。
しかし、幕張総合は徐々に反撃する。3回、3番・東 陽輝内野手の適時打、5回表にも2点を挙げ、1点差に迫る。
6回、ここまで力投を見せていた早坂が、制球を乱し、バッテリーミスと7番・宮内 孝輔内野手(3年)に適時打を浴び、4対7と3点差をつけられてしまう。早坂はいったん降板し、左翼の守備につく。
しかし、幕張総合は諦めなかった。7回に3番東、4番・上田 瑚大内野手(3年)の連続適時打で再び1点差に迫る。そして8回、バッテリーミスで追いつき、1番・諫見 康大内野手の2点適時打で、9対7として逆転に成功した。
8回に1点を失い、9対8と1点差に迫られ、9回には一、二塁のピンチになったところで、左翼にいた早坂が再びマウンドに登る。
「一、二塁になったらいくと言われていて、その心づもりはできていました」と語るように自慢の剛速球でねじ伏せ、千葉商打線を振り切って、県大会出場を決めた。
まさに激戦。柳田監督は「千葉商業さんはとても強いチームですので、決勝戦のつもりで臨もうと選手たちと伝えました」と気合を入れて臨んだ。
2回のリリーフの場面については「走者有りのリリーフは初めてで、先発投手が点を取られていたので、試合を壊さないために、予想以上に早い投入となりました」と振り返る。
2度の登板を含めると、5イニング以上を投げたのは初めて。公式戦の緊張感からか、早坂もストライク先行の投球ができずに苦しんだ。
「コントロールを崩してしまい、6回の失点では手投げになってしまいました」と反省するが、練習試合ではとても味わえないような修羅場を経験した。思うように行かない中、勝ちきったのは早坂にとっても、幕張総合にとっても大きなゲームになった。
敗れた千葉商も強いチームで、県大会でも十分にシードを狙える力量はあった。シートノックでの素早さ、肩の強さ、早坂の速球や変化球をしっかりと見極めながら打撃をしていた点を見ても、地区予選敗退だが、ダークホース候補として、注目したい。
(記事=鎌田 光津希)