都立大森vs上野学園
わずか14人の大森が、驚異の三塁打攻勢で上野学園を粉砕
横山 温大(都立大森)
<春季東京都高校野球大会:都立大森6-2上野学園>◇2日◇1回戦◇駒沢
多くの都立校は、部員不足も悩みの一つだというが、昨秋に本大会進出を果たしている都立大森も、わずか14人での戦いだった。秋から選手のポジションなど、いろいろ入れ替えながら、この春季大会を迎えているが、起用された選手がそれぞれに持てる力を発揮して、のびのびと戦っていたという印象だった。
昨秋は、ブロック予選で強豪の佼成学園と当たって中盤までは競り合いながらも敗退してしまったことで今大会も1次ブロック予選からの戦いとなった上野学園。1次予選では小松川、「中野工・和光」連合にいずれもコールド勝ちして、自信をもって進出してきた。
初回の上野学園は、死球と盗塁、バントで1死三塁として田代の犠飛であっさりと先制した。やはり、勢いはあるのかなと思わせる試合の入りだった。
しかしその裏、都立大森もすぐに反撃。先頭の横山が中前打すると、すかさず二盗。1死後、中鉢の中越え三塁打で同点。さらに、続く名取も中前打で三走をかえして逆転。3回にも横山の三塁打と中鉢の二塁打でリードを広げる。
そして、圧巻だったのは4回の三塁打攻勢だった。
この回から上野学園の小川貴智監督は、先発の曽根を諦めて、マウンドに1番をつけたトルネード投法気味の鈴木 慶太投手を送り出した。その鈴木に対して、代わり端5番上野が左中間を破る三塁打。1死後、西谷の右前打で1点。続く中田も「練習試合でも打ててなくて、久し振りの安打」が左中間三塁打となって、一塁走者をかえす。さらに、9番北林も右中間を破る三塁打でこの回3点。1イニング3本の三塁打にも驚いたが、4回までで5本の三塁打である。長打としては、一番出にくい三塁打がこれだけ出るというのは、上野学園の外野が浅めだったとはいえ、そこを上手に抜いていった都立大森の打撃陣のシャープさを称えていいであろう。
さらには、背番号5で先発した中田投手が大きなドロンとした縦のカーブを武器として、好投した。最後の9回は3者三振という見事な投球だった。小学4年以降は、本格的に投手としてはやっていなかったと言うが、この日の好投は大いに自信としていっていいであろう。「最初、マウンドに立った時は物凄く緊張したんですけれども、みんながしっかり守ってくれているので、落ち着いていきました。9回はめちゃくちゃ気分がよかったです」と、終始笑顔で話していた。好投の背景には、名取捕手の好リードもあったことも、大きかったということだった。
快勝とも言っていい試合展開に、都立大森の西野凌平監督は、「人数はそんなにいないのですけれども、一応投げられる投手が3人はいます。その中で、状態として一番良かった中田で行きましたが、思った以上の内容でした。スタメンで出た9人は今の段階では一番いいチームだと思っています。今日は、試合としては出来すぎだったかもしれませんが、よかったと思います」と、喜んでいた。今後としては、新入生がどれだけ入ってきてくれるのか、そのメンバーを加えてどんなチームとしていくのかというところになっていくのであろう。「そこも、自分としても腕の見せどころだと思っています」と、チームの上積みをしていきたいという思いでもある。
(取材=手束 仁)