試合レポート

愛知産大三河vs人環大岡崎

2022.10.30

乱戦気味となった西三河勢対決は、愛産大三河が終盤勝負強さを示す

愛知産大三河vs人環大岡崎 | 高校野球ドットコム
愛産大三河・中川湧輝君はグラブをはめ替えて投げてくる

<第147回中日旗争奪全三河高校野球大会:愛知産大三河10-6人環大岡崎>◇30日◇準決勝◇豊橋市民

 この秋の全三河大会、西三河地区勢同士対決となった準決勝の第2試合。この両校は今秋の西三河地区予選でも、決勝トーナメント準決勝で当たっている。この時は愛知産大三河が5対2で人環大岡崎を下して、そのまま決勝も制し1位通過した。しかし、シード校で臨んだ県大会は初戦で中部大一に敗れた。

 一方の人環大岡崎は、県大会では1回戦からの登場となったが小牧工科に6対0と快勝。しかし、2回戦では東邦に0対8と完敗。力の差を見せつけられている。バントなどをきちんと決めながら、機動力も駆使していくというスタイルだが、力のある相手に対してどう戦って行かれるのかというところは一つのテーマでもある。

 初回、愛知産大三河は先頭の石川 匠吾外野手(2年)が内野安打で出ると、バントで進め、2死二塁から石原 航河内野手(2年)がポトリと右前へ落して、これが先制の適時打となった。このあたりは、愛知産大三河の手堅くてソツがない攻撃でもある。これは、チームの伝統と言ってもいいであろうか。

 3回にも愛知産大三河は、9番の冨田 康介投手(2年)の安打から始まり、石川が内野安打。バントで進め、丸地 珀内野手(1年)、石原と中軸が連続内野安打して加点。さらに、内野ゴロの送球ミスも出てこの回4点を奪った。5点差となって、人環大岡崎の田中信宏監督は、4回からは、徳山 陸投手(2年)を外野に下げて左翼手で1番に入っていた左腕の渋谷 大翔外野手(1年)をマウンドに送った。

 反撃したい人環大岡崎は4回、5番・大須賀 迅内野手(2年)が中前打して反撃の口火を切る。続く三浦 寛太外野手(2年)も右前打して二塁まで進んでいた大須賀をかえした。さらにバントで進めて、大衡 楓也内野手(2年)が右前打で繋ぐと青木 晴翔捕手(2年)のスクイズが野選となりこの回2点目。人環大岡崎も追いかけ始めた。

 しかし愛知産大三河は5回、すぐに突き放す。1死から失策と5番・朝鍋 壱咲外野手(1年)の二塁打で1死二、三塁とすると、坂井 祐太外野手(2年)が巧みに投手横に2ランスクイズを決めた。これで、やはり愛知産大三河がこのまま、自分たちの流れで試合を維持し続けていくのかと思われた。

 ところがその裏、人環大岡崎はこの回から代った愛知産大三河中川 湧輝投手(2年)、小林 蒼波投手(2年)の投手陣に対して、8番・大衡の左前適時打やスクイズ。さらには1番・渋谷の左翼線二塁打などで4点を返して、たちまち1点差とした。コールドもあり得るかと思われた展開の試合は、ここから乱戦の様相を呈してきた。愛知産大三河のマウンドには4人目の朝鍋が登っていた。

 7対6と1点差で愛知産大三河リードのまま終盤に入っていった試合。7回に、愛知産大三河は失策の走者をバントで進め坂井の中犠飛でかえして8点目。

 人環大岡崎も8回から4人目として1番をつけた佳山 剛樹投手(2年)がセンターからマウンドへ。その佳山に対して愛知産大三河は途中出場で9番に入っていた髙田 勝嘉(2年)が左前打し、二塁へ進むと、2番・後藤 汰圭内野手(2年)が左前打してリードを広げた。さらに三塁へ進んでいた後藤が暴投で生還して、4点差となった。結局これが効いたという形になった。

 投手は両チーム4人ずつが登板し、2時間47分の大乱戦で、決着がついた西三河勢対決の準決勝。愛知産大三河は何とか勝ち上がって全三河大会連覇へ王手となった。

 愛知産大三河の櫻井春生監督は、「例年に比べると、ちょっとセンが細いというのは否めません。ここというところで、決定的な1本もなかなか出せない。だけど、こうして何とか負けないというところは、まあ、いいかなと言うところかもしれませんが(苦笑い)」とは言うものの、5回の2ランスクイズなどは愛知産大三河らしさも十分に見せたと言ってもいいであろう。それでも、「苦しい時に、無理ができないんだよなあ」と、ややぼやき節も入っていた。

 粘りながらも追い上げきれなかった人環大岡崎の田中監督は、「実は、軸となる1番ショートの選手がケガで出られないんですよ。そうして1人が欠けると、こうした形でチームがバラバラになっていって、まとまり切らず、こんな感じになってしまいます。そういう意味では、まだまだチームが浅いということですね。チームの底上げというのが、これから来春以降へ向けての一番の課題となっていきます」と、この先を見据えていた。

 ところで、両チームの、過去の実績としては愛知産大三河は春1回、夏2回という甲子園出場経験がある。全三河大会に関して言えば、今春も優勝するなど、過去7回の優勝実績がある。一方、人環大岡崎は前身は女子校で、女子バレーボールの強豪校だった岡崎女子が共学校となって、岡崎学園となった。その後、系列大学名を冠して現校名となったが、野球部としては、県大会もそうだが、この全三河大会も含めて、上位に残ったという実績を示し切れてはいない。それだけに、3位決定戦を勝っていって一つの結果は欲しいというところでもあろう。

(取材=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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