京都翔英vs立命館宇治

京都翔英先発の小笠原蒼

＜秋季京都府高校野球大会：京都翔英9－0立命館宇治（7回コールド）＞◇18日◇4回戦◇太陽が丘

　宇治市の強豪私学対決は思わぬ大差となった。

　京都翔英の先発は背番号3の小笠原蒼（2年）。179センチ、98キロの恵まれた体格から最速141キロの速球を投げ込む本格派右腕だ。1回表に安打と2四球でいきなり1死満塁のピンチを招き、山下勝弘監督は伝令を送り、「1点はOKだから思い切っていけ」と指示を送る。この言葉に開き直れた小笠原は、立命館宇治のポイントゲッターである5番の北川陸翔（2年）を遊撃への併殺に打ち取り、ピンチを切り抜けた。

　その裏の京都翔英は2死一、二塁とチャンスを作り、二塁走者の梅谷将輝（2年）が盗塁を敢行。この時、捕手の送球が梅谷の顔面に当たり、試合が一時中断。梅谷は担架で運ばれ、後に救急車で搬送された。

　2死一、三塁、3ボール1ストライクから仕切り直しとなった初球を5番の橘田快晴（2年）が上手く捉え、1点を先制。さらに2死満塁から7番・門山洸太（2年）が走者一掃となる左越え3点適時二塁打を放ち、リードを4点に広げた。

　初回の攻防ではっきりと明暗が分かれたこの試合。2回以降の小笠原は馬力のある球で相手打者を抑え込み、テンポ良くアウトを積み重ねていく。打線も3回裏に8番・貝阿彌魁王（2年）の右犠飛で1点を加えると、4回裏にも集中打で4点をもぎ取り、ワンサイドゲームに持ち込んだ。

　5回から継投に入った京都翔英は迎窪大輝（2年）と松山紘生（2年）も無失点リリーフを見せ、旧チームからの主力が多く残る立命館宇治打線を完封リレーしてみせた。9対0の7回コールド勝ちを収めた京都翔英が3年ぶりの近畿大会出場に一歩前進した。

　京都翔英で今後も活躍が期待されるのが、「久しぶりの怪物」と山下監督が称する小笠原だ。2回戦の京都成章戦ではバックスクリーンに特大の本塁打を放った高校通算15本塁打のスラッガーで、3番に座ったこの日も6回裏の第4打席に右越えの二塁打を打った。守備の不安があり、レギュラー定着は2年夏からだが、大きな体はひときわ目立つ。「この秋はアイツがある程度投げないといけない」と山下監督は投打のキーマンに挙げている。

　愛知県豊田市出身の小笠原は、「レベルの高い関西でどこまで通用するか試してみたかった」と京都翔英に進学。中京大中京から日本ハムに進んだ畔柳亨丞投手と実家が近く、小学生の頃はよくキャッチボールをしていたそうだ。「何とかプロに行かせたい素材」と山下監督は潜在能力を高く評価しており、この秋でチーム、個人ともに結果を残すことができれば、一躍来年のドラフト候補に名前が挙がってくるだろう。

　近畿大会出場まであと2勝。「一戦一戦やることをやるだけ。今日の試合もみんなが練習通りにやった結果なので、指導者を信じてやっていきたいです」と小笠原は次戦に向けて意気込む。京都に現れた怪物がこの秋にブレークを果たしそうだ。

（記事＝馬場 遼）