高松西vs観音寺総合
元東大卒NPB右腕・松家 卓弘監督の高松西、4半世紀ぶり大会ベスト4進出!
121球を投げ10安打されるも4失点完投の高松西・田窪 大河(3年)
<第104回全国高校野球選手権香川大会:高松西9-4観音寺総合>◇22日◇準々決勝◇レクザムボールパーク丸亀
毎回の15安打に加え、全員出塁で観音寺総合を9対4で下した高松西が、1997年、優勝した丸亀城西に次ぐ準優勝以来となる香川大会ベスト4進出。昨夏ベスト8に進んだ先輩たちを超える目標を掲げながらも秋春連続県大会初戦敗退に終わっていた高松西の見事な反転攻勢である。
昨年8月からチームを率いているのは松家 卓弘監督。この名前を見て見覚えがある方もいるかもしれない。高松では2年秋に四国大会ベスト4、現役合格で進んだ東京大でも4年秋開幕戦での明治大完封を含む25試合登板で3勝17敗・防御率4.64と奮闘し、2004年ドラフト9位で横浜(現DeNA)に入団。日本ハムに移籍した2010年には最速152キロを出し、NPB通算14試合に登板した「まつか・たかひろ」その人である。
引退後は教員免許を取得し、2015年度からは地元・香川県の高校教諭として奉職。初任地の香川中央ではコーチ、部長職を歴任、2019年度からは高松西で部長職を務め、昨夏香川大会をもって退任した清水 浩行・前監督から引き継ぐ形で初の高校野球監督職に就いている。
そんな松家監督の目指す道は「生徒たちが自分で動く野球」。事実、新チーム発足からは練習メニュー構築は選手たちに一任。「教えることで下手になる場合もある。成長を邪魔しない」と、2つの痛い敗戦にも粘り強く選手たちの気付きを待った。
そして選手たちは松家監督の促しに気付き、成長した。主将の越智 巧武(3年・三塁手)はその変化と松家監督の凄みをこう証言する。
「大会も練習試合もエラーで負けた春までは個人練習でするべきことを全体練習でやっていたんですが、ここを実戦形式に変えて守備に力を入れてきたことが今につながっていると思います。そして松家監督は今のプロ野球選手のエピソードも交えて説明してくれるので、イメージがしやすいんです」
結果、今大会でも3回戦では第4シード・丸亀城西を最速140キロ超3年生右腕コンビ・金子 颯斗、多田 陸人の継投で破った高松北に対し、無失策で粘り脚を絡めて3対1で逆転勝利。この観音寺総合戦でも無失策を貫き、6回表には「捕手としての実力は横山 幸大(2年)と同じだし、イキイキとやっている」(松家監督)小柳 永遠(3年)の代打適時打で試合を決めた。選手たちが動き、ベンチワークが冴え、勝利につなげる。今の高松西にはそんな流れができている。
そして準決勝の相手は秋春県大会連続Ⅴの第1シード・英明。松家監督はこういう表現で勝機を見出すことを宣言した。「東京六大学野球で東大が他の大学と戦うより英明とウチとの距離は近いです」。そして主将の越智も…。その種明かしは7月24日にしてもらうとしよう。
(文=寺下 友徳)