明大中野vs都立板橋
好投手戦は延長の末に、明大中野がサヨナラで健闘した板橋を下す
サヨナラ勝ちに喜ぶ、明大中野の選手たち
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<第104回全国高校野球選手権東東京大会:明大中野2-1板橋(延長10回サヨナラ>◇17日◇3回戦◇江戸川区
板橋は昨年の夏は、大会半ばでコロナ禍による出場辞退という悔しい思いをしてきた。そんな3年生たちの気持ちの整理のために、大会後、8月末に柴﨑正太監督は、江戸川時代の恩師でもある小山台の福嶋正信監督にお願いして、3年生たちの引退試合を実施して貰った。そんなことも経験してきた今年の板橋の選手たち。3年生は、入学した時からコロナ禍で十分な練習はできていない。だけど、やれる限りのことはやってきたという思いはある。初戦の自由ケ丘戦は4点は失ったものの11点を奪いコールド勝ちで進出してきた。
明大中野も、コロナ禍ということは同じ条件ではあったが、多摩市の一本杉球場近くに専用グラウンドも確保して、学校から少し距離はあるとはいえ練習環境的には恵まれている。そこで練習試合も重ねながらちチームを作ってきた。今春は都大会で東洋、府中東にコールド勝ちして、3回戦で修徳に1対3で敗れはしたものの、チーム力としてはまとまっている。今大会は、初戦で都立富士に8対4で勝利している。
両監督とも、試合展開に関してはロースコアになるだろうということは予測していたようだが、緊迫の投手戦で、まさに手に汗握る展開で、見ごたえのある試合になった。
板橋はエース左腕の中嶋、明大中野は背番号10の吉田渉が先発。中嶋は球威やスピードも格別あるわけではないが、上手にタイミングを外していた。相手打線を手玉に取るというような投球で強いスイング振ってきていた明大中野打線だったが、巧みに術中にハマってしまったという感じだった。打ち損じの様な感じの外野への飛球が目立った。それだけ、中嶋が巧みにコースを突いていたということであろう。
一方、明大中野の吉田渉も制球よく、打たせて取っていくという投球だった。
こうしてお互いに0行進で前半を終える。間違いなく1点勝負になっていくと思える展開にったが、その均衡を破ったのは板橋だった。
板橋は6回、1死後3番鈴木翔太が左翼線へ二塁打。両チーム通じて初めての長打だったが、四球後5番本間が上手におっつけて右前打。これで二塁から鈴木がかえって、ついに板橋が先取点をもぎ取った。ここで、明大中野の岡本善雄監督は、ここまでよく投げていた吉田を下げてエースナンバーの中村を送り出した。中村は、188センチ、95キロという恵まれた体格で、直球も重くズドンとくる。岡本監督も、「久しぶりに、上(大学)でもやって行かれるかなという逸材」と評価している。その中村は、リリーフしてから打者13人を完全に抑えて行っていた。
そして、その間に明大中野は8回、四球の片桐をバントと飛球で三塁まで進めると、5番加藤健太郎が中前打してついに同点とした。
それでも、板橋の中島はじめ選手たちは慌てることはなく、その後は冷静に抑えた。9回も、失策と安打で1死一、二塁で一打サヨナラの場面となったが、南島は併殺で切り抜けた。こうして試合は延長に突入することになった。
中村に対して板橋の初安打は10回2死から、岡村が遊撃内野安打で記録する。しかも、牽制悪球と盗塁で三塁まで進んで突き放すチャンスとなったが、ここは中村が踏ん張った。そしてその裏、明大中野は先頭の2番片桐が失策で出塁。バントは失敗で1死一塁となるが、4番加藤千晴は、左中間をライナーで破る一打で、一塁走者が生還してサヨナラとなった。
明大中野岡本良雄監督は、「今までだと、競った試合で1点取られてしまうとそのまま負けてしまうというパターンが多いんですが、8回に追いつけて最後にはひっくり返せたのは今までにないことで成長です」と、苦しい戦いながらも勝ちきれたことで選手の健闘を評価していた。「相手投手の変化球に手を出してしまって、飛球が多かったと思うんですけれども、8回には『今までやってきたことは、何だったんだ』と、ちょっと、喝を入れたんですけれども、それも効いたんでしょうか」と語っていたが、切り札として中村投手がいるだけに何とか追いつければ、というところはあったのは確かであろう。
ロースコアの試合になるということは、予想していたという板橋の柴﨑監督。その意味では、思惑通りの試合展開だったと言えるところであろう。チームのモットーとしている“勝負心”は、結果的には勝利には結びつかなかったけれども、十分にその思いは発揮することはできたと言っていいであろう。
柴﨑監督も、「中嶋は、いつも静かで大人しい子なんですけれども、落ち着いて投げて行って、最後まで自分の投球をしていってくれたと思います。今年のチームは、精神的な部分も含めても今までの中でも一番手ごたえのあるチームになったと思っていたし、もう少し上まで行かせてあげたいという思いもありました。だけど、選手たちは、持てるものを十分に出し切れたと思います」と、選手たちを称えていた。
去年の悔しい思いも含めて、岡村主将は、「去年の、最後の3年生の引退試合は、先輩たちの思いもありましたが、楽しんでやろうということでやって引き分けということでしたが、今日は勝ちたい試合でした」と、勝てなかったことに関してはやはり、悔しさはあったであろう。それでも、どこか「やれることはやり切った」というような、満足感も漂っていた。
(取材=手束 仁)