試合レポート

浦和麗明vs秩父農工科学

2022.07.13

好投手対決はプロ注目左腕浦和麗明・吉川に軍配。大会記録に迫る毎回の20奪三振完投勝利!

<第104回全国高校野球選手権埼玉大会:浦和麗明7-1秩父農工科学>◇12日◇2回戦◇[stadium]県営大宮[/stadium]

 プロ注目最速143キロ左腕の浦和麗明吉川悠斗投手(3年)対、最速142キロ右腕の秩父農工科学岸岡翼(3年)との注目の一戦である。当然スカウトも注視する中、行われた一戦は、前評判通りの投手戦となった。

 特に浦和麗明・吉川の出来が素晴らしく、初回からフルスロットルで秩父農工科学打線を全く寄せ付けない。この日の最速は142キロ。一巡目は秩父農工科学の打者から全員三振を奪う完璧な立ち上がりを見せる。

 先制したのは浦和麗明であった。
 2回表、1死から6番・岩澤周太郎(3年)が左中間へ二塁打を放ち出塁すると、2死後、相手の暴投で球が転々とする間に二走・岩澤が一気に本塁へ生還し貴重な先制点を奪う。

 浦和麗明は5回表にもこの回先頭の今野慎之介(1年)が左前安打を放ち出塁すると、相手の暴投で二塁へと進む。1死後、3番・蓮實悠人(2年)が犠飛を放ち2死三塁とすると、相手の捕逸で貴重な追加点を奪う。

 一方の浦和麗明・吉川は4回以降も全員三振こそ途切れるがその後も毎回奪三振は継続し、5回パーフェクトピッチングを披露する。

 だが、雨が降り出した6回裏、吉川はやや制球を乱し初めての四球を与えるが毎回奪三振ノーヒットピッチングは続く。

 浦和麗明は7回表、1死から2番・谷口達哉(3年)が左前安打を放ち出塁すると、続く蓮實が右翼フェンス直撃の適時三塁打を放ち3対0とする。

 だがその裏、これまでノーヒットに抑えられていた秩父農工科学打線が反撃を開始する。

 1死から、3番・堀口来夢(3年)が左越えの二塁打を放ち出塁すると、続く浅見涼河(2年)が右越えの適時二塁打を放ち1点を返す。

 それでも、浦和麗明・吉川の毎回奪三振は継続し、8回までに18三振を奪う。もし最終回を三者三振で切り抜ければ、埼玉大会の9イニングでの最多奪三振の記録である21に約60年ぶりに並ぶ状況となる。

 だが、無情にも終盤から雷が鳴り始め4度に渡り試合が中断する。9回表途中の4度目は約1時間の中断となり、両投手の肩は冷えてしまう。

 両投手交代かと思われたが、両投手共に志願し続投する。

 浦和麗明は9回表、西川貴哉(3年)、今野が連続四球を選び無死一、二塁とすると、続く谷川の犠打が相手の一塁悪送球を呼び、さらに返球も逸れ2点を追加する。ここで4度目の中断が入り、無死三塁から2死まで持っていくが、吉川が四球を選び2死一、三塁とすると、岩澤の中前の打球をセンターが逸らし、その間に二者が生還し7対1とし試合の大勢は決した。

 9回表、特に連続四球のところは「やや集中力が切れた」(岸岡)という3度目の中断の直後であり、岸岡にとってはやや不運な状況であった。

 試合の焦点は浦和麗明・吉川の三振記録に移る。

 最終回、浦和麗明・吉川は連続三振を奪い奪三振は20となり、最後の打者から三振を奪えば最多奪三振の記録に並んだが、結果は二ゴロに終わる。

 結局、7対1で浦和麗明秩父農工科学を下し3回戦進出を決めた。

 秩父農工科学のエース岸岡は、やや雷雨やコロナの影響で当日受けていたのは急造捕手ということもあり、色々な状況に振り回された形だが、それでも奪三振は12。とにかく岸岡は全く嫌な顔一つせず良く投げた。特に打者・吉川に対する4奪三振は意地を感じた。強豪校からの誘いもあったが、家庭の事情もあり、先生の勧めもあり設備の良い秩父農工科学を選んだ岸岡。

 「精度の高い変化球、コントロールを磨きたい」(岸岡)

 大学へ進学するという彼に今後も注視していきたい。

 一方の浦和麗明だが、今大会初登板となるエース吉川は、毎回の20奪三振と、とにかく見事な投球であった。直球の最速は142キロだが、とにかく回転数が良い。昨秋より数段レベルアップしている印象を受けた。

 「三振を狙いに行ったというよりは丁寧に投げていた。中断時は代えようと思っていたが本人が志願したので行かせた。三振記録のことは知らなかった」(監督)
 「今日は直球が良かったので最初から飛ばして行った。三振を取れば周りの負担が減るし、バロメーターになる。記録は知っていれば狙いたかった」(吉川)
と、共に試合後悔やんでいたが、最後の大会で最高のスタートを切ったことに違いはない。順当に勝ち進むと花咲徳栄と対決することになる。そこまで勝ち進んだ時に吉川がどんな状態なのか焦点となるであろう。他の投手がどれだけ支えられるかが鍵になる。

(取材=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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