鹿児島城西vs神村学園
球史に残る9回裏・鹿児島城西
<第64回NHK旗争奪鹿児島県選抜高校野球大会:鹿児島城西8-7神村学園(9回サヨナラ)>◇29日◇決勝◇[stadium]平和リース[/stadium]
鹿児島城西と神村学園。夏の前哨戦の決勝戦は南薩地区を代表するライバル同士がハイレベルな争いを繰り広げ、終盤9回裏には鹿児島県の高校球史に残る劇的なドラマが待っていた。
先手をとったのは鹿児島城西。ストライクなら何でも打っていく果敢な打撃をみせ、連打で二、三塁とし3番・藤田剛(3年)の犠牲フライで先制点を挙げた。
神村学園は1回から4回まで毎回得点圏に走者を進め、押し気味に試合を進めるも、鹿児島城西の先発右腕・芦谷原睦(2年)が最後はいずれも三振で切り抜け、得点できなかった。
5回表、神村学園はこの回から2番手でマウンドに上がった安井彩透(3年)を攻略。4番・秋元悠汰(2年)の中越2点適時二塁打で逆転に成功。ここから後半は一気に神村学園ペースで試合が進む。
6回に2点、8回は9番・松永優斗(2年)、2番・上迫稜弥(3年)の2本の三塁打で1点と得点を重ねる。
9回表には6番・花倉凪(3年)が右翼席にソロホームランを放ち、代打・朝吹拓海(3年)が右越え三塁打を放ち、ダメ押しの2点を加えた。
神村学園が持ち味の長打力を発揮してつけた点差は6点。誰もが勝負あったと思った9回裏に、あまりに劇的な展開が待ち受けていた。
初回以降、果敢に打ってチャンスを作りながらも3併殺となるなど、追加点が奪えず、神村学園の先発エース松永を攻略できずにいた鹿児島城西打線が土壇場で火を噴く。
途中出場の5番・喜村健太(3年)が中前安打で口火を切り、一死二、三塁の場面で代打・沖田楓(3年)が中前2点適時を放った。久々の得点で打線が活気づく。
9番のこちらも途中から一塁の守備についていた津波辰弥(3年)が右越え二塁打で4点目、1番・東陽太(3年)の中前適時打で5点目と打線がつながる。
なおも満塁となって4番・明瀬諒介(2年)を迎えたところで、神村学園は松永から朝吹にスイッチしたが、鹿児島城西の勢いは止まらない。それまで4打席凡退と振るわなかった4番・明瀬が値千金の左前2点適時打を放ち、ついに試合を振り出しに戻した。最後は途中出場の6番・濱田陵輔(2年)が中前に弾き返し2時間49分の死闘に決着をつけた。
選手18人をグラウンドに送ったことに象徴されるように、ベンチも含めたまさしくチーム一丸で演じた奇跡の逆転劇だった。
(取材=政 純一郎)