津田学園vs皇學館
津田学園が3点差を8回、2発で同点~逆転して一気にコールド決着
2回に安打で出塁して先制のホームインをする津田学園・杉本君
<春季三重県大会:津田学園11-4皇學館>◇23日◇準々決勝◇四日市市営霞ヶ浦第一野球場
前半から中盤と、終盤で、試合の展開そのものがまったく変わってしまい、「こんなことがあるんだ」と、改めて高校野球はどんな展開になっていくかわからないということを思わせる試合の流れとなった。
近年、三重県内では安定した実績を残してきている津田学園。今春は、北地区予選では1次トーナメントで四日市工に敗れて敗者戦に回ったが、そこから四日市中央工を下して県大会に進出。県大会では、久居と中地区2位の鈴鹿をいずれも完封で下してベスト8に進出。対する皇學館は南地区予選では松阪商に8対7で競り勝つなどして地区2位で県大会進出。県大会2回戦では、昨秋は準々決勝で大敗した海星に対して17対16というハイスコアの乱戦になったが、それを制してベスト8進出である。
先制したのは2回の津田学園だった。この回、先頭の7番杉本が中前打で出ると、バントで進め、さらに暴投で三進。ここで9番小林が中前にはじき返すクリーンヒットで先制タイムリーとなった。そして、3回から津田学園・佐川竜朗監督は、先発の服部を下げて2人目として阪本を送り込んだ。「今年も、コロナで予定していた練習試合が中止になったりもしているので、実戦の経験をなかなか積むことができなかった。だから、夏を見据えていく中ではこうした公式戦の一つひとつも大事な経験となっていくので、可能な限りいろいろ試してみたかった」ということで、当初から、服部は一巡くらいまでということにしていて、多くの投手で繋いでいくことも念頭に入れていたという。
2番手となった阪本に対して皇學館は5回、福林と鈴木佑の下位の安打で1死一、三塁として、1番長島が初球スクイズを決めて同点とした。そしてその裏、無死一、二塁、1死満塁というピンチを迎えたものの、福林が踏ん張り、内野もしっかりと守り切って、1対1の同点のまま、試合は後半に突入した。
7回、皇學館は津田学園の3人目の伊藤を攻めて1死一、三塁からスクイズで勝ち越す。さらに、8回にも4人目の伊達に対して、2つの暴投と捕逸などで追加点を挙げて、1番長島の内野安打で4点目が入って3点差。展開としては、あと2イニング。皇學館の出井宏監督としては福林が何とか抑えて行ってほしいというところであった。
ところがその裏に、津田学園の打線が大爆発して、ここまでの展開ではおよそ想像できない形でコールドゲームとなってしまった。
この回津田学園は、1死後主将でもある7番杉本が左前打すると、途中から出場していた影井が初打席で左翼へ本塁打して1点差。さらに、続く小林も中前打すると、皇學館ベンチも福林を下げて2人目として畑を投入したが、勢いづいた津田学園打線は前野が二塁打してついに同点。さらに西原も安打し、チームで最も頼れる3番神田が中越え3ランを放って逆転。こうなったら津田学園の流れで、皇學館は1つのアウトをなかなか取ることができずに、そのままこの回10点が入ってしまい、まさかのコールドゲームとなってしまった。
井出監督は、「8回までは、いい流れだと思っていたんですが、そこからの甘さが出たというか、気迫が足りないというか、そんなところが出てしまった。チームとしては、確実にグレードは上がって入ると思うんだけれども……」と悔いていた。激戦の神奈川県から三重県に移ってきて5年。「正直、ベスト8までの道というのは、神奈川に比べると、厳しくはないですけれども、ここから次のステージへはやはり厳しい。ここの壁を破っていけるチャンスかと思ったのに、やはりまだまだですね」と、夏へ向けて、もう1つチームとしても選手層を厚くしていかなくてはいけないという思いでもあった。
苦しい展開だったが、終盤の集中打で一気にひっくり返した津田学園。佐川監督は、「エンジンがかかってくると、一気に行ける勢いのあるチームにはなっていますが、8回に爆発させることができた。2本の本塁打もさることながら、1死から杉本が安打したのがよかった。これで、チームとしても勢いづけたことが大きかった」と、チームの士気が沈みかかっているところで主将である杉本のしぶとい打撃を評価していた。
(取材=手束 仁)