都立江戸川vs淑徳
先制されるも、セルフジャッジが機能して江戸川が逆転し快勝
無死三塁のピンチからギアの入った江戸川・竹川
全国に先駆けて新年度の始まる4月1日に東京都では春季都大会が始まる。
東京都の春季大会は、昨秋の都大会に進出を果たしている64校と3月に行われた1次ブロック予選を勝ち上がった、48校によって争われる。江戸川は昨秋の都大会出場を果たしているので、この試合が春季公式戦初戦となる。一方の淑徳は、1次予選で小平西、系列校の淑徳巣鴨をいずれも大量9点を奪い下しての進出となっている。
ある程度の点の取り合いも予想されたが、淑徳は先頭の高橋 輝が二塁打すると四球とバントで二、三塁として、2死となって5番斉藤 子龍が左翼ポール際に3ランを放って先制。それでも、打たれた吉村はベンチへ戻ってくるときには、「まだ初回だ、初回!」と言っていたという。それを見て、園山 蔵人監督は、「よし、公式戦初登板だけれども、メンタルとして大丈夫だ」と思ったという。
そして3点先取されてもチームの勢いもあった。
その裏すぐに、連続四死球とバントで1死一、二塁とすると、4番森坂が右中間へ運ぶ二塁打で1点を返し、続く鈴木 大和もスクイズで1点差とする。そして4回には2死二塁から代打西塚が起用に応えて中前適時打して同点。しっかりと起用に応えた西塚も見事だった。このあたりは、江戸川のチームとしての勝負強さと言ってもいいであろうか。
そして、5回は袴田が右前打すると二盗、青木も左前打で繋いで一、三塁。ここで、淑徳の中倉 祐一監督は清水を外野へ下げて、右翼から左腕の伊神をマウンドに呼んだ。その初球を岡部がスクイズして、ついに江戸川が逆転した。
これら一連のプレーを江戸川は、園山監督が提唱する“セルフジャッジベースボール(SJB)”として選手たちのアイコンタクトで進めていくことが基本としている。それがさらに機能したのは7回で、2死走者なしから、3番岡部が左前打すると、すかさず盗塁。揺さぶって四球後、5番鈴木 璃久は三塁線へ巧妙なバント安打。ここで、竹川は伊神の初球を叩いて走者一掃の左越え二塁打で3点。竹川は、「前の3打席、力みがあって引っ掛けていたけれども、思い切りよく振れた」という一打だった。
江戸川は8回にも、途中出場の千葉の二塁打などで3点を加えて、3点先取されながらも、最終的には8回コールドゲームとした。その要因として、SJBがスムーズに機能したことは、江戸川の園山監督としては、思い描いていた形に近い試合運びができたと言っていいであろう。そして、この試合では、「エースの竹川以外の投手が公式戦初登板だったけれども、しっかりと投げてくれたことで、投手陣が厚くなってくれたことが大きかった」と、攻撃面だけではない収穫があったことを喜んでいた。
淑徳の中倉監督は、「いいイメージと悪いイメージの両方が出てしまったんですが、後半のように、悪いイメージになるとメンタル面が強くないので、こうして崩れて行ってしまうことが多いんですが、まさに、そのよくない部分が出てしまいました」と、追いつかれて以降を凌ぎ切れなかったことを悔いていた。
(取材=手束 仁)