近江vs金光大阪
目次
・全国制覇へ向けて。省エネ投球で凄みを見せる近江・山田の快投
・32番中、下から数えたほうが早いチームが…ベスト8躍進の金光大阪。指揮官が語った夏へ向けての課題
全国制覇へ向けて。省エネ投球で凄みを見せる近江・山田の快投
山田 陽翔
<第94回選抜高校野球大会:近江6-1金光大阪>◇28日◇準々決勝◇甲子園
全国大会では必ず進化をみせる近江の二刀流・山田陽翔投手(3年)。まるで野球漫画の主人公みたいな要素が備わった逸材が、安定した投球を見せた。
1回表から最速146キロをマークする。威力抜群で三振を奪った時の直球は凄まじいものがあった。それ以後は常時140キロ超えの直球は少なく、多くは130キロ中盤だった。
変化球は、130キロ前半のカットボール、ツーシーム、125キロ前後のフォーク。打者の手元でグイグイと曲がる精度の高さには驚かされた。要所で次々と三振を奪うことができ、改めて素晴らしいものがあると痛感した。
今年の金光大阪打線には粘っこい打者が多い。長打にできなくても必死にくらいつき、8本中、内野安打が4本。それでも山田は自分のペースを崩さなかった。
「試合前日の晩から、要所要所を締めていこうと捕手の大橋と話していたので、それができたと思います。チームに勢いを与える、安心感を与える投球ができればと思っていたので良かった」
ピンチは招くが適時打は許さない。自慢の直球も140キロ超えは数球程度と、7割程度の力で抑えることを意識した。
「打たせて取る投球を意識しましたけど、全体を通じて低めに球が集まっていた。直球も変化球もストライクが取れたのは良かったです。その中で良かったのは130キロ台のツーシームです」
甲子園の試合では、走者を出すとこの投手は点が取られそうだな、このバックだと一気に相手にもって行かれそうだなというのが何となく分かる。ただ、マウンドに立つ山田を見ると実に落ち着いている。打たれる予感はしなかった。
今大会3試合で、31回を投げ、わずか5失点と、抜群の安定感を示している。2年夏に見せたすべてにおいて100%という投球ではない。優勝するためにどうゲームメイクすればいいのか、それが見える。
「目標は日本一ですが、一戦必勝で行きたいです」
次の相手は今大会4本塁打の強打を発揮する浦和学院(埼玉)。相手は強敵だが、初の日本一を目指し、状態を高める。
[page_break:32番中、下から数えたほうが早いチームが…ベスト8躍進の金光大阪。指揮官が語った夏へ向けての課題]目次
・全国制覇へ向けて。省エネ投球で凄みを見せる近江・山田の快投
・32番中、下から数えたほうが早いチームが…ベスト8躍進の金光大阪。指揮官が語った夏へ向けての課題
32番中、下から数えたほうが早いチームが…ベスト8躍進の金光大阪。指揮官が語った夏へ向けての課題
古川 温生
敗れた金光大阪のエース・古川温生投手(3年)は、これまで見せていた140キロ超えの速球はなかったものの、135キロ前後の速球に切れ味鋭い変化球を見せ、ゲームメイクした。5点を許したが、自責点は0。ミスが点に結びついた形となった。それでもエースとしてカバーしなければならないと語る。
「確かにミスがありましたが、カバーできなかったことが敗因だと思うので反省点です。
昨年秋の再戦で、変な力が入ってしまった。甘い球を投げたら一発で捉えられるので、厳しいところを突こうとしてしまった。
修正するために、大胆に攻めることを途中から意識しました。先頭打者を変に意識して、深く考えすぎてしまった。先頭を出してはいけないというのは分かっていますが、力んで歩かせてしまいました」
横井監督はエースの働きを最大限に評価する。
「バッテリーが育んできたものを甲子園で発揮した。本当によく投げたというよりも、練習したことをバッテリーで発揮してくれました。昨秋の近畿大会が終わってからいい状態ではなく、苦しいこともありました。
それでも心と練習に向き合って、岸本と作り上げたバッテリーです。互いの信頼関係といいますか、トレーナーも彼の身体を理解してくれたので、心と体のケア、トレーニングをしてくれた。彼は成果をマウンドで出した。何より、心が折れなかったことを評価したいです」
そして大事な試合ほど積極的に動けるチームにしたいと語った。
「要所でミスが出るチームと出ないチームで、この試合は差が出たと思います。
要所で頑張れる、ミスをしないことが大事になるので、自分を信じて、前に出られる。打撃はこれまでにない努力が今後必要だと思います。
3試合目になって、内野手が1歩目の出足を大事にしすぎた。大舞台でもしっかりと1歩目からアウトを取るために積極的に動けるようにしたい。攻撃はもっと打力を根本的な振る力、積極性、確実性を念頭を置いてやりたいです」
昨秋の新チームスタート時、エースの古川と捕手の岸本 紘一主将(3年)の2人が軸で、横井監督はこの2人がこけたら終わりというぐらいの気持ちで、近畿大会ベスト4に勝ち進んだ。センバツ出場を確実にしていながら、12月には、「うちがもし出場できたら、下から数えたほうが早いぐらい力がないチーム」と語っていた。
冬場は懸命にトレーニングをしていた。それが実を結んでいるのだろう。多くの選手が伸びているのを実感した。夏へ向けて圧倒的な勝ち上がりを見せる大阪桐蔭を破るための練習、対外試合に入っていく。横井監督が語った「振る力、積極性、確実性」は何より大事になるはずだ。
(記事:河嶋 宗一)