都立足立新田vs都立総合工科
体幹もしっかりしており、打っても4番を任される足立新田・大脇
11月の最後の週末。ほとんどの学校は、この週末をもって、今季の対外試合日程は終了する。そして、来年3月の、対外試合解禁日までは、地味なトレーニングや体力強化といったメニューをこなしていくことになる。また、チームによっては、この期間には読書を必須としたり、ミーティングを含めて座学を多くしていきながら、考える力を身に付けさせていくというところも少なくない。
いずれにしても、秋季大会の結果を踏まえて、そこで見えてきたチームの課題や弱点をどう補っていくのかということになる。年内最終の対外試合では、その課題の再確認といった意味合いもあると言ってもいいであろうか。
そんなこともあってか、この時期の大会試合は、お互いに気心のよく知ったチーム同士で組むということも多いようだ。総合工科と足立新田も、そんなことでこのところは定番となっている顔合わせだ。この両チームは、新チームになって、これで4度目の対戦ということである。
足立新田を率いる有馬 信夫監督は1999年夏に城東を甲子園に導いた実績がある。「都立校だって本気で立ち向かっていけば甲子園出場は出来る」ということを具体的に示し、東京都の高校野球地図を変えた男とも言われている。あれから20年以上の歳月が流れたが、多くの都立校の指導者たちは、有馬監督を一つの目標として励んできたという経緯もある。
そして、都立校ではその2年後の城東のほかにも雪谷、小山台なども甲子園出場を果たしている。また日野、片倉なども都立の強豪校となって上位進出を果たしている。そして、この秋も狛江がベスト8に進出して、21世紀枠の代表候補として東京都の推薦を受けている。
有馬監督は城東を甲子園に導いた後、保谷~総合工科と異動し、現在は足立新田で指揮を執る。総合工科の弘松 恒夫監督は府中工から異動してきて、有馬監督の後を引き継いでいる。弘松監督は、「有馬監督からは、いろいろ学ばせていただいているので、有馬先生のところとの練習試合は大事です」という思いで毎年、この時期の定番となっている試合を大事にしている。
この秋は、両校ともにブロック一次予選で敗退。足立新田は東亜学園に、総合工科は東京成徳大高に、敗れて悔しい思いをしている。それだけに、この冬を越えて、来春は春季大会の本大会に進出するということが、まず身近な目標ということになる両校だ。
足立新田・原田将伍君
今の段階で、ほぼベストに近いメンバーで挑んだ1試合目は、お互いに2回と、6回に3点ずつを取り合うという展開で、同点のまま進んだ9回、総合工科はサヨナラ勝ちの機会を迎える。この回先頭の5番西川は「チームで一番頼りになる打者」(大平一郎助監督)ということだったが、しっかり左前打で出塁。さらに送りバントが失策を呼んで無死一、二塁。ここで元水が送って一死二、三塁。8番水上は、8回からリリーフのマウンドを任されていたので初打席となった。スクイズもありかとも思われたが、思い切って打っていった一打は中飛となる。犠牲飛球かと思われたが、足立新田の鳴海中堅手が好返球で本塁タッチアウトとして同点のまま9回引き分けという形で試合終了した。少しでも送球がそれたらサヨナラというところだったが、ここでしっかりと好送球を返せたというあたりは見事である。
足立新田の3番鎌田、4番で投手の大脇、5番のシュアな左打者鈴木というクリーンアップは腰回りも大きく、体幹もしっかりしているという感じでパワーもありそうだ。有馬監督も、「この3人に関しては、何も言わないでやらせている」というくらいに、素材力は高いと言えそうだ。ただ、この試合に限って言えば、クリーンアップでは鈴木の左前打一本のみだったということが、足立新田としては勝ちきれなかったということになっていったのであろう。
また、総合工科としては2回に4番伊藤の三塁打や、7番元水の二塁打に9番進藤の2点タイムリーなどで3点を先取。そして、弘松監督も、「ある程度は信頼して任せられると思っている」という谷口、左の松原、制球のいい水上と予定通りに3人で繋いでいったのだが、松原が外野の飛球落球などもあって6回に3点を失って同点となったのが痛かった。展開としては、1点でもリードのある中で水上に繋いでいって、水上がどうしのいでいくのかなというところも見てみたかったが、結局は引き分け試合となってしまった。
それでも、お互いにしっかりと守るべきところは守っていた。この時期の戦いとしては、内容としてはしっかりとしたものだったと言っていいであろう。
2試合目では、足立新田は原田、三浦と、夏の大会でも控え投手としてベンチ入りしていた、有馬監督が成長を期待している二人の投手が投げた。「球の速さで言えばチームの中では一番あるはず」という三浦は、6回から4イニングを投げたが、総合工科の4番に入っている勝然に右中間二塁打は浴びたものの、8回、9回はピシッと3人で抑えていくなど起用に応えていた。
試合展開としては、総合工科が初回、坪井の二塁打など4安打で3点を先取。しかし、足立新田もその裏すぐに、打者一巡で4点を返して逆転したが、どちらもいくらか外野手の動きが緩慢なところもあり、捕れる打球が安打になったとか、単打で抑えられるところが長打になってしまったというようなところもあった。こうしたあたりは、一つの反省材料として試合後のミーティングでの検討材料になっていったことであろう。
いずれにしても、この両チーム、来春は3月の一次ブロック予選からの登場となるが、どこまで整備されてきて挑んでくるのか。どうチーム力を上げられているのか楽しみなところでもある。
(記事:手束 仁)
テークバックの腕が延びて投げる総合工科・林君
総合工科のリードオフマン川越君
素材力は高い足立新田・中山君