聖隷クリストファーvs中京
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聖隷クリストファーが9回に幸運な逆転劇で中京を下す
中京・瀬戸亮太君
ほんのちょっとしたことから、今までの展開が一転して思わぬ結果になってしまう。それが野球という競技の怖いところでもある。そんなことを改めて実感させてくれたような試合でもあった。
この春に続いての県大会制覇で、東海地区大会進出を果たしている岐阜中京。しかし、当然優勝候補として挙げられていた夏だったが、初戦で多治見工に敗れて甲子園の夢を絶たれてしまった。
その悔しさを乗り越えて、新チームは、「選手個々の力という点で言えば、今まででも、もっと上のチームはあったかもしれないが、チームのまとまりという点では、私が就任して以来一番ではないかと思えるくらいだ」と橋本哲也監督は評価している。そして、この秋も安定した戦いぶりを示して県大会を制しての進出である。
その岐阜中京に挑むのが、静岡県2位で進出してきて、1回戦では津田学園に快勝した聖隷クリストファーだ。ベテラン上村敏正監督は、「どんなに細かいことでもとことんこだわり、突き詰めていくここ一番のハートの強さや集中力に繋がることを信じていく」という姿勢を徹底している。
そんな両校の対戦は、岐阜中京は左スリークォーターで切れ味のいいスライダーなどが持ち味の瀬戸、聖隷クリストファーはエースナンバーの弓達がケガで投げられないという事情もあって、右オーバーハンドの背番号10今久留主が先発マウンドを担った。
両チームを通じて初安打は、3回に岐阜中京の9番瀬戸が右前に放つ。すると、聖隷クリストファーの上村監督はすぐに今久留主を諦めて、2番手として背番号9の左腕塚原を送り込んだ。
しかし、岐阜中京は1番古屋もけん制悪送球で走者が進んだ後に安打して一、三塁とする。そして、一死となった後、3番根津の左犠飛で先制する。さらに、四球と連続暴投があって、岐阜中京はもう1点追加する。
これに対して、聖隷クリストファーもすぐに反撃して4回、2番磯野が内野安打で出ると、バントで進めて二死二塁から5番山﨑が中前へタイムリー打して二塁走者をかえした。
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聖隷クリストファー・塚原琉星君
しかし、その裏の中京も、二死二塁に中村を置いて、1番古屋が右前へタイムリー打を放ち再び突き放す。外の球を巧みに合わせて深いところへ運んでいった好打だった。
岐阜中京の瀬戸は、8回には下位の連打で無死一、二塁とされて上位に回ったが、こういう場面でも慌てない。冷静な投球で三振、中飛、三飛と上位打線を打ち取っていった。球速そのものは、130キロ中盤くらいだが、コースがいいということであろう。こういうところに、投球の上手さもあったといっていい、好投手である。試合の流れとしては、8回の無死一、二塁を逃れたことで、大きく岐阜中京に傾いたかと思われた。
ところが9回、思わぬ展開が待っていた。聖隷クリストファーも粘って一死から5番山﨑が左翼フェンス直撃の二塁打を放つと上村監督は、すかさず代走大石を送る。「少なくとも山﨑よりはいいと思って送った」という代走だが、大石は牽制悪送球で三塁へ進み、続く小出は投手ゴロで三塁から飛び出してしまう。
ところが、挟殺プレーの流れで野手が走者に接触してしまったということで岐阜中京の走塁妨害となり1点が入り、なおも一死二塁。ここで死球の後、伊藤が左前打で繋いで一死満塁。一打逆転という場面になったが、9番に入っている塚原は、やや制球が乱れてきた瀬戸から四球を選んで押し出し。ついに聖隷クリストファーは同点とした。
さらに二死となったものの、途中出場で2番に入っていた河合がよく見て、押し出しとなり、ついに逆転となった。走塁妨害から、一気に試合の流れが変わってしまった。このあたりも、改めて野球の恐ろしさ、怖さを見せつけられとも言えようか。
岐阜中京の橋本監督は、「相手の粘り強さに負けてしまいました。勝ちを急いでしまったというところもあったかもしれない」と悔いた。ただ、瀬戸の続投に関しては、「あそこで瀬戸を代えるということは、考えられなかった。これは、結果論になるのでしょうが、代えて打たれても、もっと悔いは残るし、こうなったのは私の責任です」と、肩を落としていた。
それにしても、最後まで諦めなかった聖隷クリストファーの戦い方は、高校野球は最後の最後まで、何が起きるのかわからないということを再認識させるものだった。
これで東海地区の4強は静岡の1位と2位校(日大三島、聖隷クリストファー)と、至学館(愛知2位)、大垣日大(岐阜2位)ということになった。
(取材=手束 仁)
サインを確認し合い聖隷クリストファーのバッテリー
中京のシートノック
シートノックに散る聖隷クリストファー