足立学園vs都立大島
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足立学園、142キロ右腕が完投勝利 選手9人・都立大島に吹き込む強豪校の風
足立学園先発・木下 祥優
2日、[stadium]江戸川区球場[/stadium]の3試合目は足立学園と都立大島が対戦。都立大島は選手9名と、人数だけを見ればギリギリだが、それを感じさせない活気があった。それを足立学園が受けて立つような形だが、試合は緊迫の展開となった。
足立学園が初回に先取点を奪って1対0で迎えた2回、8番・井上煌陽の一打などで3点を追加。3回までで5対3とリードを広げた。
5回にも9番・折山大輔の内野安打などで2点を追加した足立学園の先発はエースナンバーを付けた木下 祥優。6回に2点を失うと、7回には一死二塁とピンチが続く。しかし、ここは8番・山下楓月、9番・新渡戸漣を連続三振。初回から見せてきた快速球、そして切れ味抜群の変化球のコンビネーションでスコアボードに0を刻んだ。
そのまま7対5で勝利した足立学園とすれば、後半から都立大島の猛追を受ける苦しい試合展開だった。それだけに9回を投げ抜いたエース・木下はマウンドでかなりの重圧と戦う形になったが、何とか投げきったというところだろう。
足を上げてからバランスよく立つと、左腕を真っすぐキャッチャー方向に出して目標を定める。そこからスムーズな重心移動で動いていくと、着地と同時に鋭く腰を回転させて、思い切り腕を振り抜く。自己最速142キロだという強烈な真っすぐを軸に、都立大島打線を勝負どころで抑えていた。
この真っすぐがあるから、鋭く変化するスライダーも活き、この試合で被安打5本も、奪三振9つという結果を残せた。
木下は「今日は開きが早くなってしまい、制球に苦しみました」と本調子ではなかったと振り返る。途中から脱力をして、打たせる投球に切り替えて、コースを狙い過ぎないようにしてゲームを作ったが、この試合の投球には満足している模様は全くなかった。
指揮官の塚本監督は「予選でも連投させてほしいと直訴してきたので、1人立ちはしてきています」と信頼を寄せている。ただ現在に至るまでには挫折もあった。
旧チームから登板していた木下は、練習試合で2桁失点が続く時期があったとのこと。先輩たちへ迷惑をかけたことを反省して「自宅近くの公園で短ダッシュなど走り込みをしました」とひたすら走りこんできた。
またフォームの中では体の開きを抑えるため。そしてトレーニング方法を参考にするために、山本由伸投手(オリックス)の動画を見られるそうだが、それらの要素が噛み合い、夏の大会前から「頭角を出してきました」と塚本監督の目から見てもわかるほどの成長ぶりを見せ、新チームからは信頼されるエースとなった。
次戦の修徳戦ではどういった投球を見せるか楽しみにしたい。
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都立大島先発・白井花実
一方で敗れた都立大島は、エース・白井 花実を中心にした粘り強い守備。攻撃でも大きなミスがなく、基本的なプレーがしっかりしているチームだった。勝った足立学園の塚本監督も「9人ですが、チーワークや元気の良さは見習わないといけない」と都立大島のチームとしての完成度を敵将ながら高く評価した。
それだけのチームになったのは、この春から着任した高島凱哉監督の存在が大きい。先生1年目として都立大島で汗を流す若き指導者は、日大鶴ヶ丘で高校野球3年間を過ごした。
現在は新型コロナウイルスの影響で、新チームも練習試合ができない。平日90分、土日も午前中のみと短い時間での練習が中心となっている。ただ、高島監督は日大鶴ヶ丘時代の教えや経験を、選手たちにわかりやすく伝え続け、「1球に対する執着心を教えてきました」と試合を想定した質の高い練習を課してきた。
高橋駿介主将も「(高島監督になって)厳しい言葉をかけられながらですが、試合を想定して練習ができています」と、練習の中身が良くなってきたことを実感している。それだけに今回の敗戦は「普段の取り組みの甘さが出たと思います」と悔し涙を流していた。
ただ幸いにも、まだ秋の大会と新チームは始まったばかり。予選を勝ち抜き、本大会に出られたことで、夏からの成長に手ごたえがあった。高島監督も「選手たちが頼もしかったです」と選手たちの奮闘を労った。目標であるシード校を倒すために「1球の重みを感じて練習していきたい」と高橋主将は話す。
秋の3試合で出た課題に取り組み、さらに強くなった都立大島に注目したい。
(記事=田中 裕毅)
都立大島ベンチ
マウンドに集まる足立学園ナイン
都立大島得点シーン