試合レポート

明徳義塾vs県立岐阜商

2021.08.15

「ミス」に乗じた明徳義塾がサヨナラ勝ち、雨で揺らいだ県立岐阜商

明徳義塾vs県立岐阜商 | 高校野球ドットコム
代木大和(明徳義塾)

◆選抜からの成長を見せられるか

 どちらも0対1で敗戦した。

 選抜で県立岐阜商市立和歌山に、明徳義塾仙台育英に完封負けを喫した。悔しさをバネに甲子園に戻ってきたが、どちらにとってもこの試合は春からの成長を証明する試合だ。

 明徳義塾代木 大和はカットボールの使い手である。県立岐阜商にとっては選抜で負けた市立和歌山小園 健太も同じように小さな変化球を操った投手との対戦だ。

 対する県立岐阜商は控え投手を含めて、140キロ超えの速球を投げ込む投手層の厚さがある。明徳義塾からすれば、選抜で負けた仙台育英の投手層に引けを取らないチームとの対戦になる。

 選抜からの取り組みの成果を発揮し合う一戦で、どちらが成長を見せられるか。

◆後半勝負で明徳義塾が上回る

 試合は5回まで0点の試合展開だったが、6回に明徳義塾先発・代木 大和が2番・梅村 豪に死球を与えると、3番・松野 匠馬に右中間を破られるタイムリーで先取点を許してしまう。

 なおも無死三塁とピンチが続くが、ここで馬淵監督は「継投は脳裏にあった」と言うことで準備ができていた2番手・吉村 優聖歩がマウンドに上がる。

 さらなる失点も覚悟したが、後続のバッターを内野ゴロなど3人で抑えて、ピンチを脱すると、攻撃に勢いが出てくる。

 その裏だ。3番・森松 幸亮の二塁打で同点のチャンスを作ると、4番・加藤 愛己の三塁打で同点に追いつく。さらに5番・代木の犠牲フライで2点目と畳みかけるような攻撃で2対1とした。

 8回に1点を失い、2対2の同点とされたが、9回は一死から1番・米崎 薫暉が四球を選ぶ。送りバントで二死二塁とすると、3番・森山がセンターの頭上を越すサヨナラ打で、明徳義塾が勝利を手にした。


◆勝敗のポイントはエラーか?

 この試合を振り返ると、勝敗を分けたのはミスではないだろうか。

 県立岐阜商は、代木の死球からチャンスをつかみ、1点をもぎ取った。ただこの1点のみで、序盤から何度もチャンスを作るも、ホームは遠かった。特に6回は1点を奪った後の無死三塁で、追加点を奪えなかった。

 対して勝利した明徳義塾の6回の2点は、堅守で1点に凌いで勢いに乗ると、相手の野手がフライの目測を誤ったところ(記録は二塁打)からチャンスを作り、一気に畳みかけて2点を奪った。

 そして最終回のサヨナラ劇も、相手の四球からきっかけを作り、小技で確実にチャンスを作る。そのチャンスを確実につかむ。今年は剛速球を投げるエースや、ホームランバッターが多くいるわけではないが、手堅く堅実な野球で粘り勝つ。選抜ではできなかった明徳義塾らしく無失策で戦い抜いたことが、勝利に結びついたのではないだろうか。

◆明徳の野球ができた

 名将・馬淵監督も今日の勝利については「苦しい試合でしたが、僅差で終盤行ったら明徳ペースかな」と思いながら采配を振るっていたとのこと。その上で「1点取られてから、吉村にスイッチしたことが大きかったと思います」と勝敗のポイントを挙げた。

 選抜では140キロを超える速球を打てず、武器である守備でも綻びが出て敗戦した。その敗戦、そして森木 大智の存在が大きかった。

「自分たちは地方大会でも好投手たちと対戦して、打ち崩すために練習をして甲子園に来られました。だからチームは打撃に自信がありますし、1球へのこだわりを持って来たので、攻守ともに鍛えられました。」

 特にバッティングに関しては、体感速度を160キロになるようにマシン打撃をやってきたとのことで、「前に飛ばなくても良いからタイミングの取り方を覚えろ」と言われながら練習をしてきたそうだ。

 悔しさをバネに成長した明徳義塾野球は、この甲子園でどこまで通じるのか。


◆選手への愛にあふれる

 対する県立岐阜商は先発・野崎 慎裕が好投を続けたが、エラーからリズムを崩し、一時同点となるも、苦しい試合運びとなった。

 鍛冶舎監督は「やはり2回、3回で先取点が取れなかったのがダメでしたし、6回にも追加点が取れなかったのが勝敗を分けました」と振り返る。明徳義塾・馬淵監督と同様、やはり6回がポイントだった。

 また6回の目測を誤ったことによる二塁打は、このようなコメントを残した。

「その前に代えようと思っていました。そこまでは凡打2つとバントでしたので。記録はヒットでしたけど悪いことをしました。私の責任です」

◆野球はやはり難しいスポーツだ

 実のところ、岐阜で調整している段階から先発は小西 彩翔を考えていたとのことだ。しかし、雨天順延等を考え、本人と相談したうえで経験豊富な野崎に前日の夜に替えていた。打順も調子のよい選手、打線のつながりを考えたうえで、オーダーを組みかえていたそうだ。

 選手のことを常に考えて、型にはめずにベストな布陣で戦う。そこを念頭に戦ったからこそ、雨天順延は痛かった。投打ともに充実の戦力を揃えても簡単には勝てない。

 対して明徳義塾は思い切りよくメンバーを代えて、功を奏した。対照的ともいえるチームと、采配の振るい方だったが、結果は1点差で雌雄を決した。やはり野球は奥深いとそう感じさせる試合だった。

(記事:田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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