愛工大名電vs中京大中京
雷雨の後の強豪対決の熱闘は、愛工大名電が中京大中京を振り切る
準々決勝では、愛知啓成の好投手に苦しんだ末に8回にやっとスクイズで1点奪い同点、延長11回に桑垣君のサヨナラ本塁打で勝ち上がってきた中京大中京。一方、春季県大会優勝校の愛工大名電は、5回戦で至学館、準々決勝では東邦と、力のある名古屋市内の私学に対しても、比較的開いたスコアで勝ち上がってきて強さ見せつけてきている。
いずれにしても、愛知大会の頂上まではあと2つ。昭和時代からの強豪同士のぶつかり合いに期待は高まった。
ところが、そんな期待に水を差すかのように、雨雲が垂れ込み、雷鳴も轟き、グラウンドはたちまち水浸しになってしまった。30分ほどの土砂降りの雨が上がって、水抜きなどをしてグラウンド整備をし直して、予定より3時間半以上遅れたが、15:05に試合開始となった。
中京大中京は初回、一死後杉浦君が右越三塁打すると、桑垣君が一二塁間を破って杉浦君を帰して先制。その裏、愛工大名電も四死球で無死一二塁として強力クリーンアップに回ってきたが、ここは畔柳君が力投して踏ん張った。
それでも愛工大名電は3回に追いつく。先頭の1番利光君が四球で出ると、一死後3番宮崎君が右前打で繋いで一三塁。ここで4番田村君が一二塁間を破って利光君が帰った。
なおも一三塁が続いたが、後続は畔柳君が何とか抑えた。こうして試合は、1対1の同点のまま、両投手の投げ合い、踏ん張り合いという形で投手戦のまま終盤に突入していった。
次の1点をめぐる争いは、寺嶋君と畔柳君の粘り合いという様相でもあった。ただ、力投型の畔柳君は雨上がりで蒸し暑い中で、疲労も大きいようで、時に足の状態を気にする仕草が多くなっていたのが気になるところでもあった。
そして迎えた8回。2つの四球に失策も絡んで無死満塁となる。ここで7番房野君がしぶとく三遊間を破ってついに均衡を破る。さらに無死満塁が続く中で、8番寺嶋君がスクイズを決めて2点差とする。
この展開で、8回裏の2点は、さすがに大きく重くのしかかってきそうだ。それでも、畔柳君は130球を超える球数となりながらも、ストレートは146キロを表示するなど、140キロ台を出し続けて気力を振り絞っていた。
そんな畔柳君の力投に何とか報いたい中京大中京の9回はこん大会ではキーマン的存在にもなっていて当たっている2番杉浦君からだったが、ファウルで粘ったものの内野ゴロ。結局、中京大中京の攻撃は3人で終わってしまい、愛工大名電が8回の2点を守り切った形となった。
苦しい戦いを何とかものにした愛工大名電倉野 光生監督は、「予想はしていたけれども、本当に苦しい試合でした。ただ、安打数も少なく点も1点ずつだったのですが、ベンチでは『こっちの方が攻めているぞ!』ということは言っていました。今日の寺嶋は、余分な球がなく、想像以上の好投をしてくれて、これは嬉しい誤算ですね」と寺嶋君の好投も勝因に上げていた。
そして、8回の得点に関しては、「無死満塁で7番房野はバントも上手いしいろいろ考えていた」と言うが、房野君自身が、「寺嶋が好投していたので、何とか助けるために打ちたかった」という思い出の一打が決勝打となった。畔柳君対策としては、マシンを155キロに設定して打ち込んできたという。その成果も出たと言っていいであろう。
最後の最後で畔柳君が力尽きた感じで敗れた中京大中京。高橋 源一郎監督は、「畔柳は、エースとして自覚を持って本当によく投げてくれた」とねぎらった。「立ち上がりから、準決勝を意識してやや力も入りすぎていたところもあったのかもしれないけれども、多少のばらつきは彼の持ち味でもありますから…。こうした展開では、なかなか変えることもできませんでした」と振り返った。
そして、ここまで頑張ってきた今年のチームに関しては、「前の年のチームと比較されることもあって辛いこともあったと思います。新チームのスタートも、名古屋地区二次トーナメントでは星城に敗れるというところからスタートしています。それでも、選手たちの素直さとひたむきさ、練習に取り組む姿勢は歴代の中でも一番と言っていいくらいでした。次の代の後輩たちにもいいモノを残してくれたと思います」と、甲子園出場はならなかったものの、ここまでの選手たちの頑張りに対しては大いに讃えていた。
(文=手束 仁)
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