中京大中京vs愛知啓成
苦しみ抜いた中京大中京、劇的、延長11回サヨナラ本塁打
強豪ひしめく愛知大会も準々決勝まできた。夏の愛知大会は、ベスト8の段階で再抽選となり組み合わせが決まる。そして、ここからの3試合が甲子園を目指しての本当の厳しい戦いとなっていくのである。ことに、今年の夏は、私学4強と言われている名古屋市内の昭和時代からの伝統の強豪校がすべて残った。それだけに、ここからの戦いはさらに熱いものとなっていくことは必至だ。
その私学4強の中でも、甲子園勝利数と優勝回数は日本一の中京大中京。一昨年秋の明治神宮大会でも優勝し、今春のセンバツでもベスト4に進出している。今大会も優勝候補の一番手という声もあったが、苦しい試合もあった。それでも、ここまで勝ち上がってきたのはさすがと言っていいてあろう。
対する愛知啓成は、3回戦では今春県大会ベスト4でシード校となっていた星城を下して勢いづいた。5回戦でも3年前の第100回大会東愛知代表校の愛産大三河をねじ伏せてのベスト8である。三重を率いて甲子園準優勝を果たした実績もあるベテラン中村 好治監督が、中京大中京に対して、どんな戦いをしていくのか興味深いところでもあった。
愛知啓成の先発本間は、中京大中京に真っ向から勝負。立ち上がりから、切れのいい投球で強打線を抑えていた。2回には二死から3連打を浴びたものの、左翼手島津の好返球もあって本塁で刺した。中京大中京も先発のスリークォーター大矢が、走者は出しつつも独特のフォームから、何とかかわしていた。
そして迎えた5回、愛知啓成は内野安打の立岩をバントで進める。1番の弓口になったところで、中京大中京ベンチはスパッと畔柳を投入した。ところが、その代わり端、弓口の打球は詰まらされていたが左翼線にポトリと落ちて、これがタイムリーとなって愛知啓成が先制した。
そして、この1点が徐々に中京大中京に重くのしかかっていく。本間は、回が進んでも歯切れのいい投球は変わらない。6、7回は三者凡退で切り抜けていく。8回も、中京大中京は一死後に、9番満田が中前打。細江は2度バントを失敗するがその間に、満田は二盗を決め、その後に細江は中前打で繋いで一、三塁。ここで器用な2番の杉浦が三塁線へセーフティースクイズを試み成功した。やっと中京大中京は追いついた。しかし、杉浦は間一髪一塁アウトで二死二塁。3番桑垣の当たりは大きな中飛となり、逆転までは持っていけなかった。
同点となったことで畔柳もギアが入ったが、本間も気持ちを切らさず投げ込んでいき、延長戦に突入していく。10回から愛知啓成・中村監督は本間から2年生の左腕・東にスイッチする。中京大中京は、先頭の満田が中前打で出たが、左投手にタイミングが合わず一塁上で牽制死。サヨナラ機を潰してしまった。
11回も畔柳は140キロ台中盤のストレートで力投して三者凡退。気迫は漲っていた。そして、その裏の中京大中京は3番桑垣からだったが、高橋源一郎監督は、「桑垣が出たらどういうふうに攻めていこうかなと考えていた矢先だった」というところで、ライト芝生席に飛び込むサヨナラ本塁打が飛び出した。場合によっては、タイブレークも意識せざるを得ないような展開だったが、まさに劇的な一発で中京大中京は何とかベスト4に進出した。
中京大中京の高橋監督は、「まったくウチらしくない戦い方でした。バントで送れない、走塁判断もよくないという中で、5回を終えた時には、『ここまでで今日は1回負けたんだぞ。だけど、まだ4イニングあるので、そこでどうしていくのか』ということを選手たちに言っていた」と言う。しかし、後半に入ってもなかなか攻撃のリズムが作れない中で8回ようやくスクイズで追いついて、11回のサヨナラ本塁打に繋がった。
「(公式戦を無敗で終えた)去年のチームに比べて、そんなに力があるわけではないのに、センバツではベスト4まで残れたりして、選手たちは背負うものも大きいと思います。そういう中で戦って行かなくてはいけないのも、わかっています。苦しい試合でしたが、負けないで次へ進めるのはよかった。準決勝からは、もう対等です。思い切って行きたい」と、次の戦いへ向けて意識を高めていた。
(文=手束 仁)
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