國學院久我山vs都立桜町
国学院久我山が「走力」も武器に快勝、都立桜町ユニーク練習成果出せず
シード校・国学院久我山が4回戦で都立桜町と対戦し、10対0の5回コールドで突破した。
初回は都立桜町先発・落合 透也の変化球の前に打たされるバッティングで、国学院久我山はランナーを出すことが出来なかった。すると2回にはすぐさま打席内の立ち位置を前寄りにするようにして、「詰まってもOK」と、センターから右方向へ引き付けるように指示を出すと打線が機能する。
4番・原田 大翔と5番・内山 凜の連打からチャンスを作ると、6番・木津 寿哉のタイムリーで2点を先制して打線に火を付ける。2番・齋藤 誠賢のタイムリーなどで、この回一挙7得点で主導権を握った。
大量援護をもらった国学院久我山の先発・内山は、立ち上がりこそ制球をやや乱し気味だったが、「打たせて取ることを意識しました」とコントロール重視の投球で、守備のリズムを作った。投手中心に守備からリズムを作ることを信条する国学院久我山らしい野球で、都立桜町を引き離していく。
3回にも3点を奪い、10対0とコールドの点差を付けると、国学院久我山は4回から2番手・田村 颯盛を起用し、5回には背番号18を付けた左腕・松本 慎之介が試合を締めて国学院久我山が5回コールド勝ちを掴んだ。
終始試合のペースを握り続けて、試合を優位に進められたことに、国学院久我山・尾崎監督は、「総合力高く、選手たちが細かいところまで考えてやる野球がここまでできていると思います」と選手たちの戦いぶりに及第点を与えた。
国学院久我山は普段から、学校の方針でもある文武両道を高いレベルで実践することが多いとのこと。また練習時間が短く、個人、分散練習に取り組むことがあるからこそ、創意工夫をする習慣があり、1人1人が考えて質の高い野球に取り組む風土がある。そうした取り組みが総合力を高めたが、特に成果が表れているのが走塁だろう。
国学院久我山のヒットは5回までで12本でも素晴らしいが、それで10得点は効率が良い。試合を振り返れば、都立桜町の少しの隙を逃さずに、果敢に走った。この走攻には「質が高かったです」と都立桜町の秋山主将も、対戦して国学院久我山の野球のクオリティーの高さを感じた。
「ノーヒットでも1点を取れるように積極的な姿勢を大事にしています」と内山は話すが、尾崎監督はその積極性も「練習試合でも予測、判断をして決断する。これを繰り返してきました」と隙を逃さぬ工夫と、積み重ねのうえに出来たものだと話す。
2年前の夏、国学院久我山は甲子園に足を踏み入れたが、現在の3年生は当時1年で、都立桜町戦では先発した内山は唯一の甲子園にも出場した貴重な経験者だ。3年生になって、より甲子園へ連れていきたい思いは強くなっているそうだが、今のチームの実力は十分だと感じている。
「今年のチームはあの時と似ています。きっちりとしたエースがいて、打線は1番から9番まで全員で繋いで攻撃できる。打線になっているところは、似ています。だから、チャンスはあるかなと思っています」
この夏の東西東京大会の選手名簿の表紙は国学院久我山になっている。それを見るたびに「あの時の感動や興奮を思い出しています」と内山は話すが、次戦は早稲田実が相手になった。甲子園を目指すための大きな難所を迎えた。「投手戦に持ち込みたいと思います」と尾崎監督が語れば、「守備からリズムを作って、打撃は線になって攻撃できればと思います」と内山は国学院久我山の強みを貫く姿勢を示した。2年前は劇的なサヨナラ勝ちだったが、今度はどんな試合を見せるのか。
一方、敗れた都立桜町の練習グラウンドはダイヤモンドと70メートルほどのライトだけ。変則的で練習するには厳しい環境だ。そこで3学年19人がやる中で、取り組んだのが、4アウトと1チーム5人による三色戦と呼ばれる実践練習だ。
無死一塁からスタートして、通常の3アウトではなく、4アウトにすることで、バントを3つ決めれば得点が入る仕組みにした。逆に言えば、三振もしくはフライアウトが取れれば守備は得点を与えないといった、確実性をたかめるようにした。
また1チーム5人の三色戦を通じて「いろんな打順、ポジションを守ることで、バリエーションが増えた」と秋山主将は成長を実感していた。経験を活かし、「逃げず、引かずに積極的にやろう」と後藤監督のもと、強豪に立ち向かったが、壁は厚かった。しかし「悔しいですが、やり切りました」と秋山主将は晴れやかに高校野球を終えた。昨年は、甲子園を目指すことも出来なかったことを考えれば、こうした2年ぶりの開催は大きな意味があったのではないだろうか。
(取材=田中 裕毅)
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