試合レポート

豊田西vs豊橋西

2021.07.11

取って取られてまた取っての“豊西対決”、延長10回、豊田西がサヨナラ勝ち

 過去、夏の愛知大会で準優勝6度という豊田西。ことに平成時代の前半だけで4回決勝進出を果たしており、公立の雄としての伝統を背負っている。これに対して、豊橋西は新鋭校という立場になるが、かつて豊橋工を21世紀枠代表校としてセンバツの甲子園に導いた実績のある林泰盛監督が就任して3年目。チームは着実に階段を上ってきているという印象だ。そんな“豊西対決”を興味深く見守りたい気分で迎えた。

 終始、どちらかが塁上を賑わせているという状況で、激しい点の取り合いとなった。結局、試合は8回に豊橋西が3度目の同点として9回はお互いに守り切って延長戦となった。そして、延長10回、最後は押し出しという形になって豊田西が歴史の重さを示すかのようにサヨナラ勝ちを果たした。敗れはしたものの、豊橋西は着実に階段を上がっていっている、改めて、そんな印象を与えてくれた。

 豊田西は初回、四球の走者を内野ゴロで進めると板倉君、飯田君と中軸が相次いで左翼線へ二塁打して2点を先取。これに対して豊橋西も2回、一死二三塁で三塁走者がけん制で挟まれて刺され、チャンスを潰しかかったが、8番石本君が飯田投手にしぶとく食い下がって左前へはじき返してすぐに1点差とした。

 しかし、それ以上に豊田西の打線は勝負強い。2回も2つの四球などで一死一二塁となったところで、2番小林幸永君が左中間三塁打して2人が返る。さらに、続く板倉君も中前打でこの回も3点が入った。

 ただ、豊橋西も粘り強い。3回には4番星川君のタイムリーで1点を返し、さらに二死満塁となったところで、7番河内君が粘って中前打して2者を返して再び1点差とした。そして4回、失策絡みで同点とし、さらに4番星川君の中前打で逆転。続く夏目君も左中間二塁打してこの回3点。豊橋西は6回にも四死球と相手の暴投に乗じて2点を追加。


 しかし、3点を追いかけることになった豊田西もその裏、打者一巡。芝田君、吉村君、加藤晴君の3連打などで4点を返して三度リードした。それでも、豊橋西も8回に内野安打や星川君、代打富田君の安打などで満塁として押し出しで同点となった。とはいうものの、豊田西の飯田君は後半になっての方がスピードも増してきたようで、タフなところも見せていた。打っても4番でチームの大黒柱でもある。それだけに、豊田西の古和田雅章監督も、「(投手の)替え時は考えていたのですが、3点を続けて取られた4回だと、あまりにも早すぎるし、やはり彼で作ってきて引っ張ってきたチームですからね…。投手は、準備はさせていましたが、タイミングは難しかった」と言うように、結果的には飯田君が10回を完投して182球を投じた。それでも、チームの勝ちでこの熱投は報われたと言っていいであろう。それに、後半の方が、「力が抜けて却っていい球が行くようになった」というところもあったのも、飯田君の強い気持ちの表れだったのかもしれない。

 豊橋西は、結果的には悔しいサヨナラ負けとなったのだが、林監督は「こういう試合を戦えるようになったということは、選手たちは確実に成長しているということは言えると思います。ただ、こういった展開の試合を勝てれば、選手たちも大きな自信になっていくのでしょうが、それをさせてあげられなかったのは、監督の責任です」と残念がった。そして、「6人しかいない3年生だったので、機を見て全員使いたかったんだけれども、1人試合に出させてあげられなかったのも心残り」と悔いていた。それでも、「2年生の多いチームなので、3年生がいい宿題を残してくれたと思っています。それを糧として、また次を目指します」と、3年生をねぎらいつつも、秋の新たなステップアップを目指していた。

(文=手束仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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