明大中野vs正則学園
2年生右腕・吉田渉の力投で明大中野が3回戦進出決める
明大中野ナイン ※写真提供=明大中野野球部
次第に日差しが厳しくなってきた10日の[stadium]神宮球場[/stadium]2試合目は、明大中野と正則学園が激突した。どちらも昨夏の独自大会では早期敗退を喫していたが、この試合ではそれを感じさせない戦いぶりを見せた。
先攻を取った明大中野は、初回に一死三塁のチャンスを作ると、3番・阿保快人の打席で正則学園の先発・板橋広大がボークを取られ、明大中野は思わぬ形で先取点を奪った。ただこれでリズムを作ると、2回には8番・吉田渉のタイムリーで追加点を奪って3対0と主導権を握った。
リードをもらった明大中野の先発は背番号18を付けた吉田。常にセットポジションから始動する吉田だが、投球フォームにはあまり力感を感じられない。しかし、後ろから見ていると、見た目以上にボールが来ている印象がある。
吉田本人も「投げる時には肩の力を抜いてリラックスした状態から、100%の力を指先に伝えられるように意識しています」と常に脱力することを意識していた。これが見た目以上にボールが来るギャップの要因だった。まだ2年生と言うこともあり、ここからさらに成長した姿を見られることに期待したい。
その吉田が正則学園を8回まで無失点に抑えると、9回はエース・上田時生がスコアボードに0を並べてゲームセット。明大中野が3対0で正則学園を下した。
勝利した明大中野だが、打線は緩い変化球で突っ込み気味となり、序盤の3点に終わったことを明大中野・岡本監督は反省した。普段から「変化球を待って、詰まってもいいから振り抜いて逆方向に打つ」ことを指導して打者を鍛え上げてきた。そこは次回への課題となるが、明大中野の各打者を見ると特徴がある。
1番・前國藤海斗は少し差し込まれても押し込んでいけるだけのパンチ力があり、3番・阿保は最後までバットを振り切れる思い切りのよさが光る。まさに明大中野の野球を体現する2人の後にいる4番には、ヒッチ打法を取り入れる加藤千晴と上位にはパワー系の打者が揃う。
さらに下位打線には、メジャーリーガーを彷彿とさせる6番・河島泰大が座る。そこに右打者ながら、一塁駆け抜けが手動で3.6秒と快足を持つ7番・田中翔梧とバラエティーに富んだ選手が打線を形成する。次戦以降も楽しみな布陣だ。
一方で敗れた正則学園は、國島新監督の1年間が終わった。國島監督と言えば、東北で甲子園を経験した実績を持つ。その後、日体大、伯和ビクトリーズと2年前までアマチュア野球の最前線で活躍していた。そんな國島監督が、このチームから監督として指揮を執ってきたが、初めての夏は初戦敗退とほろ苦い結果に終わった。
「選手たちの成長が目に見えてきたので、毎日感謝する気持ちがあったので、今日は何としても勝たせてあげたかったです」
試合を振り返ると、攻撃陣であれば、2巡目に入って小技やエンドランと言った細かい攻撃を展開する。投手陣も配球を一辺倒にせずに、途中で変化球を増やすなど、創意工夫をして戦っているのはわかった。しかしこれは選手たちが中心になってやってきたことだと國島監督は振り返る。
「普段から梅原主将を中心に3年生が軸になってチームを運営してくれました。また、この1年間かけて勝つための攻撃方法を練習試合から考えてきました。それをこの試合でやってくれたと思います」
ここまでは野球を通じての選手育成の話だが、國島監督は同時に勉強や学校生活含めて私生活の指導にも力を入れてきたという。指導を受けていた選手たちも、その辺りに大きな変化があったと感じている。
「前のチームでは私生活に関しては細かく指導をされることはありませんでした。ですが、國島監督に変わってから、生活面から意識をするようになりました。自分も主将として最後まで仲間には厳しく指摘してきました」(梅原望)
新チーム結成時はチームメイトと距離が近かった梅原主将だが、チームを強くするために冬場から厳しくあたるように心がけてきたという。同級生に言いにくいこともある中で、梅原主将の心を支えたのは、國島監督から言葉だった。
「仲間に指摘をした時に、相手から言い返されたり逆ギレをされても、そこで言い返せるようになるのが、本物の主将だぞ」
社会人時代に主将を経験していた國島監督だからこそのアドバイスで、1人になる時間を増やしてもチームを強くするために梅原主将は最後まで厳しく指導してきた。そこに対しては「強くなったので良かったと思います」と後悔はなかった。
コロナウイルスだけではなく、監督など首脳陣の変更など、目まぐるしかった梅原主将はじめとした3年生の高校野球生活はここで1つ区切りがついた。ただ、恩師から教わった教えを胸に次のステージで活躍してほしい。
(取材=田中 裕毅)
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