享栄vs藤枝明誠
師弟対決は享栄が後半に力を示して、藤枝明誠を突き離す
3回に本塁打を放ち笑顔で本塁に向かう藤枝明誠・高下君
球速にして140キロを超える、プロ球界も注目している投手が3人もいるという享栄。投手陣の層の厚さということで言えば、東海地区でも屈指と言っていいであろう。対する静岡県1位の藤枝明誠も左腕21656君と県大会で大きく成長した山田蓮君という左右の二枚看板がおり、投手戦が期待された。
そして、この対戦のもう一つの注目は、師弟対決ということでもある。藤枝明誠の光岡孝監督は中京大中京出身で、当時の監督はその後に中京大中京を率いて全国制覇も果たす大藤敏行監督である。
光岡監督は、県大会で優勝しての東海大会進出が決まった時に、「愛知県大会2位の享栄と、何となく当たるのではないかと思っていた」と言う。まさに、その予感が当たったことになった。ところで、高校時代には光岡監督の1年下には、現中京大中京の高橋源一郎監督がいた。
閑話休題、享栄は肥田君、藤枝明誠は山田君の先発で始まった試合。先制したのは享栄で、初回に田村君の安打からバントと暴投犠飛でまず1点。さらに瀬尾君の二塁打と5番前川君の右前適時打でこの回2点目が入った。
しかし、藤枝明誠も食い下がった。3回、先頭の9番山田君が安打で出たものの併殺打で一旦はチャンスを潰したかに思えたが、直後に2番高下君が左越ソロを放つ。さらに、西岡君四球後、川瀬君が左越2ランを放って逆転。藤枝明誠はこの回、2本の本塁打で試合をひっくり返した。
当初から、継投で行くことを前提としていた藤枝明誠。光岡監督は予定より1イニング早く5回から左腕の小林君にスイッチした。小林君はスイスイと連続三振を奪ったが、享栄打線はそこから、白井君、真鍋君、瀬尾君の3連打で1点を返して同点とした。
こうして、3対3で試合は後半戦に入っていった。
6回に決勝点となる2点タイムリー三塁打を放った享栄・田村君
5回終了後に整備の時間が入るので、6回からは仕切り直しの後半戦という形になる。ことに、同点の場合は、この6回の攻防は試合の流れとしては初回と同じくらいに大事で、得点の動きやすいイニングとも言える。
その6回、藤枝明誠は一死から7番菅井君が安打して盗塁も決めたが肥田君が踏ん張って無得点。そしてその裏、享栄は5番前川君が中前打で出ると、暴投とバントで一死三塁。ここで本来は5番に入るはずのケガ上がりの代打吉田君が起用に応えて中前打して享栄がリード。さらに、二死一二塁から、田村君が右越三塁打して2点が追加された。試合の流れからしても、貴重なタイムリー長打となった。
そして、8回にも享栄は二死二三塁から田村君が中前へ2点タイムリー打してリードを広げた。田村君は結果としてはこの日5打数3打点で打点4。必ずしもベストという状況ではない中で、それでもこうして勝って行って結果を残していっていることに関して大藤監督は、「やっぱり勝つことは大きい」と喜んでいた。
そして、「いろいろな戦い方が出来るようになってきたと感じている。今までだったら、リードして本塁打2本で逆転されたらそのままずるずるといってしまうところだったんだけれど、それを我慢出来たからね。少しずつだけれども、自分の理想のチームに近づいてきている」と実感は得ている様子だった。
藤枝明誠・光岡監督は、「最初から、力の差はあるかなとは感じていました。最終的には少し点差は開いてしまいましたが、収穫も多くあった試合」と振り返っていた。
そして、この春に関しては、「投手として山田が成長したことが大きい。これで、夏の戦い方もある程度想定していかれる」と、今春の大会の成果も感じていた。
(取材・写真=手束 仁)