試合レポート

専大松戸vs桐光学園

2021.05.22

専大松戸がサヨナラで決勝へ!投打で選抜からの成長を示す!

専大松戸vs桐光学園 | 高校野球ドットコム
サヨナラ勝ちに歓喜する専大松戸ナイン 

 専大松戸桐光学園による準決勝は、延長戦にもつれる接戦の末に専大松戸がサヨナラで決勝進出を決めた。

 4回まで専大松戸岡本 陸桐光学園澁澤 康羽の2人が好投。スコアボードに0が並ぶ投手戦が展開される。しかし5回、桐光学園が先頭の山口 龍一が四球で出塁するなど、二死一、二塁のチャンスを作ったところで、桐光学園2番・篁 哲郎の打球を専大松戸がエラー。思わぬ形で均衡が崩れた。

 さらに7回には2番・篁がセンターへ二塁打を放ち、桐光学園がリードを2点に広げるなど中押しに成功したかのように思われた。

 だが、専大松戸が直後の攻撃で1点を返すと、流れが変わりだした。

 8回に専大松戸は一死から2番・吉岡道泰の二塁打でチャンスを作ると、3番・大森 駿太朗のタイムリーで同点。

 試合を振りだしに戻すと、専大松戸が勢いそのままに、9回は2番・吉岡がヒットを放って再びチャンスを演出。4番・奥田 和尉にもヒットが飛び出すなど一死一、三塁からサヨナラの場面を作ると、「岡本が限界だったので、確実に点数を獲りたかった」という持丸監督の思惑から、5番・山口 颯大にスクイズを指示。これを山口がきっちり決めて専大松戸がサヨナラ勝ちを掴んだ。


専大松戸vs桐光学園 | 高校野球ドットコム
専大松戸先発・岡本 陸

 専大松戸・持丸監督は「選手たちが頑張りました」とねぎらったが、そのなかでも特に岡本の好投が光った。2点を失ったものの、ワインドアップからの連動性のあるフォームから130キロ台の角度ある力強いボールがミットに突き刺さる。スライダー、スプリットも切れ味が良く、序盤までは桐光学園打線も攻めあぐねている印象。

 中盤から変化球を見極めて、ストレート1本に絞ってボールを捉えられたが、詰まらせるシーンも何度かあり、ボールには力があることはスタンドからも十分わかった。持丸監督も期待を寄せて起用し続けた岡本が、大事な一戦で完投という形で応えてみせた。

 この投球には持丸監督も「いつもなら6回を境に崩れることもあるけど、今日は周りの掛け声や雰囲気もあってか、あれだけ笑顔で投げているのは初めてみましたよ」少しながら笑みをこぼした。

 その岡本は前回の浦和学院戦の経験が多かったと語る。
 「この前の浦和学院戦でも鋭いスイングで失点をしても、諦めずに低めに集め続けたことで最少失点で守り抜くことが出来ました。今日も同じように投げられたからピンチを再三招いても最少失点で切り抜けられました。そこは今大会の収穫です」

 そして打線を見ていくと、澁澤には苦戦を強いられたが、2番手のプロ注目・中嶋の140キロ前後の真っすぐをはじき返すなど3連打で同点。さらに3番手・針谷隼和からも鋭い当たりを見せるなど県大会でも見せてくれた秋、そして選抜からの成長を再び感じさせる攻撃だった。

 各打者が迷いなく、ボールまでシャープなスイングで捉えていき、ライナー性の強い打球を飛ばしていった。秋はエース・深沢 鳳介が軸となっていたチームとは思えぬ成長だ。同点、そしてサヨナラの口火となった2番・吉岡に話を聞くと、選抜の経験が大きいと分析する。
 「中京大中京の畔柳(亨丞)君のような速球派右腕と対戦をしてから、どうやって攻略するか常に考えて練習をしてきました。だから澁澤君から変わってくれたことは、正直助かりました」

 見ていると、浮いてきたボールに照準を合わせてしっかりとスイングをしていた専大松戸打線。コンタクト力が高まってきたことは練習の成果だが、そういった戦略をチーム全体で徹底できる組織力は県大会から通じても伸びてきたところで、現在のテーマになっているところだ。

専大松戸vs桐光学園 | 高校野球ドットコム
桐光学園2番手・中嶋太一

 「深沢抜きで決勝まで来れたことが大きい」と持丸監督が話すように、まさにチーム一体となって県大会から関東の決勝まで勝ち上がってきた。選抜の経験を経て強くなった専大松戸が関東の頂を掴むのか。

 決勝戦は練習試合もする間柄だという関東一との勝手知ったる相手との一戦だ。吉岡主将は「今日みたいな接戦になると思います。ただ先に先制して粘って、最終的には3、4点差で勝てればと思います」と意気込みを語った。

 敗れた桐光学園は安定した投球で専大松戸を抑えた背番号7・澁澤が光った。セットポジションから全身を使いながら、左腕を上手く畳んでトップを作り振り下ろしていく。角度を付けたストレートは130キロ前後だが、丁寧な投球で専大松戸打線に連打を許さない。さらに変化球、特に鋭く変化するスライダー系のボールでしっかりカウントをとることができ、自分から大きく崩れることがない投手だった。

 一方でエース・中嶋はリリーフからの登板だったが、真っすぐをことごとくはじき返された。142キロを計測するなど決して不調ではない様子だったが、変化球とのコンビネーションが決まらず、ピッチングが一本調子だった。組織力を武器とする専大松戸打線を抑えるには厳しい印象だった。3番手・針谷も典型的なオーバースローだったが、ボールが先行してしまい、なかなか楽な展開で投げられなかった。

 夏の大会で上位進出するためにも2人の好投は絶対条件だが、2人を援護する打線の仕上がりも勝ち進むためには必要となる。各バッターが鋭いスイングを見せていただけに、打線としてどのように繋ぐか。夏の大会に成長した姿を見られることを楽しみにしたい。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!