試合レポート

中央学院vs幕張総合

2021.04.30

最速150キロ計測!高卒プロ入りを期待させた細谷 怜央(中央学院)の投球を徹底分析!

中央学院vs幕張総合 | 高校野球ドットコム
中央学院の2番手投手・細谷 怜央

 春季千葉県大会3回戦・幕張総合vs中央学院の一戦に、多数の球団スカウトが詰めかけたが、その理由は幕張総合の大型捕手・村山 亮介中央学院細谷 怜央飯尾 嶺のプロ注目投手のチェックだろう。ただ中央学院の2人は先発せず、2年生右腕の糠谷 翔大が先発した。

 糠谷は最速135キロの直球、スライダー、カーブ、チェンジアップを丁寧に投げ分ける投球だ。そして打線も幕張総合の先発・重安 優樹を捉え、7番門倉 幹太の左中間を破る適時二塁打、8番糠谷の左前適時打で1点を追加し、2対0とする。さらに3回裏にも、2番鈴木 拓海の適時打で3対0と優位に進めたかに見えた。

 幕張総合の先発・重安が立ち直り、右サイドから120キロ前半の直球、スライダー、カーブを低めを丹念につく投球。ボール先行になることなく、両サイドへ厳しいボールをつくことができるため、ここまで2試合続けてコールド勝ちしている中央学院打線を打ち取っていく。 

 幕張総合打線も粘って、4回表にはエラーからチャンスを作り、6番石井遥俊の中前適時打、6回表には菊池 直哉の右前適時打が飛び出し、3対2と1点差に追い詰める。なおも、二死一、二塁のチャンス。ここで中央学院は主役が登場。エースの細谷 怜央がマウンドに登る。

 細谷が登板するとネット裏のスカウトたちが一斉にスピードガン、ビデオカメラをセットし、チェックに入っていく。9番重安に対し、142キロ、143キロ、144キロと1キロずつスピードアップし、見事に三振に打ち取る。

 細谷のスピード能力は素晴らしいものがあり、球場表示では最遅が138キロで、9回表に最速150キロをマーク。すると中央学院の応援団からどよめきが起こった。観客がいる試合であれば、そのどよめきはもっと大きいものだっただろう。

 細谷の投球フォームを見ていくと、182センチ85キロという長身の割に、角度のあるフォームではなく、セットポジションから始動し、ゆったりと左足を上げていきながら、三塁方向へ左足を伸ばしていき、軸足にしっかりと体重を乗せ、コンパクトなテークバックからスリークォーター気味に腕を振っていく。

 体重を後ろに残すことを意識し、力の伝え方を掴んだことで、昨秋の最速145キロから5キロアップに成功した。実際に昨秋の千葉英和戦では常時135キロ〜140キロだったことを考えても明らかにパワーアップしている。

 特に8回以降はすごく、球場表示では平均球速144,76キロ、手元のスピードガンでは7回からすべてチェックを入れ、最速145キロ、平均球速は141.91キロと高校生としてはトップレベルの球速をマークした。



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4番キャッチャー・村山 亮介(幕張総合)

 ただ非常に力押しなところがあること、幕張総合の選手たちは対応力が高く、ファールで粘れる打線だったため、球数を要してしまうことがあった。9回表も二死満塁で4番村山を迎え、結果的に149キロのストレートで空振り三振に打ち取ったが、3.1回を投げて、4奪三振、3四球、74球と課題を残す投球だった。

 ストレートの速さが目立つが、変化球も鋭く、120キロ後半のスライダー、120キロ前後のフォーク、チェンジアップ、110キロ台のカーブを投げ込んでおり、曲がりが大きいため、コースから外れると、見極めやすい形となっていた。

 とはいえ、注文をつけているのは、細谷がNPBを十分狙える素質を持った投手だから。高校生右腕としてはハイレベルな投手であることは間違いない。

 中央学院の相馬監督はこうした競った場面で投げることは成長のためには大きなチャンスと語る。
 「器用に投げられる投手ではないので、接戦の場面での投げることで勉強をしてもらえば。昨秋の試合(千葉英和戦)も9回表から逆転されて、『勉強だよ』と送り出していきました。」

 苦しい試合を制した細谷が狙うは春優勝、そして甲子園。自身の速球は最速155キロを目指している。密かに140キロ後半の速球を投げられる投手として評判だった細谷がベールを脱いだ。全国トップクラスのポテンシャルを活かせる投球術をこの春の大会から身につける。

 一方、高校通算27本塁打のスラッガー・村山は3三振に抑え込まれた。
 「最初の2年生投手からの130キロ台のボールを捉えきれず、そして細谷くんのストレートは本当に速くて…。あの速球を完ぺきにとらえなければ、次のステージでは通用しないと思いますし、そのために振り遅れないバットの出方、タイミングのとり方を習得していきたいと思っています」

 ここまで大きく注目されるようになって初めての大会。そこで結果を出す大変さを痛感することができたのは大きな試合だっただろう。

 打撃では無安打に終わったが、捕手としてはスローイングタイム1.9秒台を連発するなどスローイング能力の高さを発揮。春の大会は終わったが、村山の真価が問われるのはここから。夏には中央学院戦の敗戦がきっかけとなったといえる成長を見せることを期待したい。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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