東邦vs大府

東邦は4回、安打と盗塁で進んだ上田君が先制ホームを踏む

　昭和の時代から、お互いに競い合ってきた伝統校対決でもあり、古くからの高校野球ファンにとってはたまらない顔合わせでもある。

　大府は、知多地区で唯一甲子園出場を果たしているが、近年は私学勢に押され気味で、県下大会でもやや苦しい状況も続いている。それでも、やはり「OBU」というネームブランドは大きい。さらには、今春の県の人事異動でかつて選手としては捕手で甲子園出場を果たし、監督としてもセンバツで母校を3年連続甲子園へ導いた馬場茂校長が今春から赴任。「大府に新しい風が吹くのではないか」という期待感も高まっている。

　雨で1日延びた試合だが、前日の雨は上がって、グラウンド状態もやや軟弱かなという状況ではあったが予定通りの時刻で開始することが出来た。

　大府はエースで4番というチームの大黒柱の竹内君、東邦はプロからも注目の左腕知崎君の先発。予想以上の寒さもあってか、序盤はお互いに、もう一つ本来の調子に乗り切れないようなところがあったようだ。初回はともに先頭打者を出すなどしていたが、何とか粘って守り切っていった。

　そして4回、東邦は先頭の4番上田君が左前打で出ると、すかさず二盗する。続く柳瀬君が左中間を破る三塁打で先制。さらに三浦君も初球を叩いて右線二塁打で2点目。この3連打は大府の竹内君も、制球を意識して、ちょっと球を揃え過ぎたところもあったようだが、そこをすかさず捉えたあたりはやはり東邦打線は鋭い。さらにバントで送り、8番知崎君が初球スクイズを決めてこの回3点。

　追う立場となった大府も、すぐに3番鈴木 創大君が中前打して、竹内君も三遊間を破って無死一二塁。反撃体制となった。ここで二塁へのけん制悪送球があって三塁へ進み、さらに三塁でも捕手からのけん制球が高投となってしまい大府は1点を返した。なおも内野ゴロで一死三塁とした。ここで、長南君の内野ゴロで三走が本塁を狙ったがここは間一髪アウト。その後に鷲尾君の安打が出たものの、あとは繋がらなかった。

　試合は、そのまま終盤に入っていったが、知崎君は尻上がりに調子を上げていって7～9回は与四球1こそあったが無安打に抑えた。そして、その間に東邦は8回には死球の走者を進めて一死二三塁から知崎君自らの中前打で貴重な追加点を挙げる。さらに9回にも一死から2番早川君が左中間二塁打すると、続く鈴木唯斗君がシュアに右前へはじき返して、ダメ押しとも言える5点目が入った。

　東邦の山田祐輔監督は、「県大会初戦ということもあったし、ちょっと寒かったですから、最初は少し動きも硬く、取るべきところで取り切れないなどということも多くあった。それでも、勝てたということで、それは大きい」と全体の印象を述べた。そして、知崎君に関しては、「出足は良くなかったけれども、途中から、相手の打者の雰囲気を見て投げ分けていたし、ここというところでは三振を取りに行っていた。秋に比べると、一冬超えて、9回を投げていかれるだけのスタミナがついたことが一番の成長かな」と、この日の尻上がりの投球を評価していた。

　序盤は粘りの守りで耐えていた大府。野田雄仁監督は、「守りで粘れたということはよかったけれども、攻守においてもう一つ緻密さが相手に比べて不足していた。その差が出たと思う。夏へ向けては、そこが一番の課題になっていく」と捉えていた。ただ、この春もコロナ禍で様々な規制があって、思うように練習が出来なかった中で、「まったく（練習が）やれなかった去年を経験して、それよりはマシという思いもあるが、選手たちがそういう状況下で自分たちで何をどうしていくのがいいのかという姿勢を積極的に示していくようになってきた。これは技術面とは違う部分で大きな成長」と捉えていた。

　毎年、夏までにはきっちり仕上げてくるチームだけに、夏へ向けての課題をしっかりと見つめながら、次への躍進が期待される。

（文＝手束 仁）