試合レポート

狭山ヶ丘vs坂戸

2021.04.13

昨秋の苦い経験を乗り越えた昨夏の覇者狭山ヶ丘、逆転でまず1勝

狭山ヶ丘vs坂戸 | 高校野球ドットコム
坂戸先制シーン

 [stadium]所沢航空公園球場[/stadium]の第2試合は、昨夏の代替県大会の覇者である狭山ヶ丘対、朝霞を率いていた宮川浩之氏が赴任後、徐々に力をつけつつある坂戸との一戦である。狭山ヶ丘は準備が出来なかったとはいえ、昨秋は新チーム地区予選の初戦で敗れているだけに、その悔しさを胸に一冬を越えどれだけチームとしての完成度が増しているか真価が問われる今大会の初戦である。新チームではその優勝メンバーである宮下愛斗(3年)が1番、小山秀斗(3年)が3番に入り小山は正捕手を任されている。

 先発は狭山ヶ丘がエース左腕の齊藤光騎(3年)、一方の坂戸は背番号6の片岡大輝(3年)が登板し試合が始まる。

 序盤はやや坂戸ペースで進む。

 初回先頭の香林大斗(3年)が死球で出塁すると、続く南部元快(3年)もレフト前ヒットを放ち無死一、二塁とする。3番・岡野大夢(2年)には送りバントの指示が出るかと思われたが、坂戸ベンチは一気に流れを掴むべく強攻策に出る。結果はショートゴロとなりショートは三塁封殺を狙うが、これがセーフとなり(判定は微妙であったが)坂戸にとっていきなり無死満塁とビックイニングを作る大チャンスを得る。ここで続く片岡大輝(3年)はライトへ犠飛を放ち幸先良く1点を先制する。

 一方の狭山ヶ丘ベンチはここで早くも齋藤を諦め2番手・星野碧海(3年)へとスイッチする。星野は期待に応え後続を打ち取り何とか初回の失点を1点で終える。

 狭山ヶ丘の反撃は3回表であった。先頭の宮下がレフト前ヒットを放つと、すぐさま2盗を決め無死二塁とする。続く杉田大将(3年)は送れず結局三振に倒れるが、一死後、二走・宮下が3盗を試みる。これがキャッチャーの悪送球を呼び宮下は一気に本塁へ生還しすぐに同点とする。

 同点とされた坂戸であったが、先発片岡はその後も狭山ヶ丘打線に対し臆することなく持ち味である制球力を発揮する。ストレートに変化球を交え両コーナーへきっちりと投げ込み堂々の投球を見せる。

 一方、狭山ヶ丘の2番手・星野もストレートと変化球共に丁寧に投げ込み坂戸打線の勢いを封じる。

 試合は1対1のまま前半を終える。


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叱咤激励する狭山ヶ丘

 グラウンド整備中、狭山ヶ丘・平澤監督はベンチの裏にメンバーを呼び寄せ、まずは選手を落ち着かせリフレッシュさせることに終始する。選手達は気分を新たに後半戦へ臨む。

 一方の坂戸ベンチは先発岡野を5回で諦め、6回からエース水野太一をマウンドへ送る。水野はがっちりとした体格から威力のある直球を中心に組み立てる本格派タイプである。

 だが、この日はその水野が誤算であった。

 狭山ヶ丘は6回表、代わり端で制球の定まらない坂戸・水野に対し、この回先頭の小山が四球で出塁すると、続く関口竜清(3年)がきっちりと送り一死二塁とする。さらに、5番・畔蒜直央(3年)も四球を選び一死一、二塁とチャンスを広げると、続く小原大和(3年)がライト越えのタイムリー二塁打を放ち勝ち越しに成功する。

 これで勢いに乗った狭山ヶ丘は、一気に畳みかける。一死二、三塁で7番・松岡航瑠(3年)がセンター前2点タイムリーを放ち3点差とすると、続く日根野友人(3年)もライト越えのタイムリー二塁打を放ち5対1とする。さらに9番・星野も四球を選び一死一、三塁とすると、続く宮下がライトフェンス直撃のタイムリー二塁打を放つなど、結局この回一挙5得点のビックイニングを作る。

 試合の主導権を完全に握った狭山ヶ丘は、7回表にも、この回先頭の小山が右中間へ三塁打を放ち出塁すると、続く関口がレフト前へタイムリーを放ち、6点差をつける。

 このままコールドかと思われたその裏、坂戸も執拗に食い下がる。この回先頭の武藤純平(3年)がサードゴロエラーで出塁すると、二死後2番・南部が右中間へ二塁打を放ち二死二、三塁と反撃のチャンスを迎える。続く岡野はショートゴロに倒れるが、ショートが後ろに逸らす間に2点を返す。

 だが、反撃もここまでであった。

 狭山ヶ丘は8回表にも坂戸の3番手・井上を攻め、一死二、三塁から小山の犠飛で1点を追加すると、投げては1回途中からのロングリリーフとなった2番手・星野が9回一死まで自責点0の好投を見せる。最後は1年生の長身右腕・加藤健太(1年)が締める。

 結局、狭山ヶ丘が8対3で坂戸を下しまずは初戦を突破した。

 まずは坂戸だが、とにかく初回の攻撃であろう。強攻策が成功し無死満塁とチャンスを得たが最低限である1点で終わったのはその後の展開に響いた。ここでもう1、2点追加出来ていれば、その後の試合展開も異なったものになってきた可能性もあるだけにやや悔やむべき攻撃となってしまった。また、満を持して登板したエース水野の乱調も痛かった。だが、先発・岡野の好投は今後への収穫となるであろう。夏も岡野、水野、井上の3投手の継投が基本路線となりそうであり、今後も継投タイミングが勝敗を分けるポイントとなりそうだ。

 一方の狭山ヶ丘だが、この日も中盤までは昨秋の川越戦と同じような展開となったが同じ轍は踏まなかった。
「今年のチームは昨秋の敗戦後、旧チームよりも多くの量の走り込みを敢行した」(平澤監督)そうで、それが春になり確実に成長の跡を見せている。昨夏の代替県大会の優勝メンバーである宮下や小山などがチームを引っ張り、この日も試合中選手達主導でミスをしたメンバーに対し、鼓舞する場面が散見されており、それが互いを引き上げる効果を呼んでいるのであろう。

 とはいえ、試合への入り方や守備、走塁のミス、核となる投手の発掘など課題はある。幸い今回の地区大会のメンバーは3年生だけではなく、昨夏の優勝効果などもあり40人以上入部した有望な1年生が2年生を跳ね除け既に複数入った布陣となっている。今後も全員で高い競争意識を保つことができれば一戦一戦強くなる可能性を秘めている。

(取材=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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