國學院久我山vs東海大高輪台
試合巧者ぶりを発揮した国学院久我山がシード権獲得!144キロ右腕・髙橋風太が力投見せる!
国学院久我山5番・髙橋 風太
夏のシードがかかった国学院久我山と東海大高輪台の2回戦は、最後まで接戦の末に、国学院久我山が5対3で東海大高輪台を下した。
初回、先攻の国学院久我山は2番・上田 太陽の四球をきっかけにチャンスを作ると、3番・田村 優樹らのタイムリーで2点を先制。さらに2回には1番・齋藤 誠賢のタイムリーと3対0と国学院久我山が序盤で主導権を握った。
4回にも2点の追加点を奪って4対0とした国学院久我山の先発はエース・高橋 風太。初回から力のある真っすぐを投げ込み東海大高輪台打線を圧倒。5回に東海大高輪台8番・上野 克登の犠牲フライで1点を失ったが、試合の主導権を譲ることなく終盤に入る。
8回に東海大高輪台の5番・川浪 遥翔のタイムリーで4対2とされたが、9回に代打・原田 大翔のタイムリーでダメ押しとなる5点目を奪った国学院久我山。東海大高輪台の代打・ホワイト拓真のタイムリーで1点を返されたが国学院久我山が5対3で勝利し、3回戦へ駒を進めた。
夏のシードを獲得した国学院久我山。2年前の夏の甲子園以降ライバル校の厳しいマークの前に、都大会ではなかなか上位進出を阻まれてきたが、今大会は早稲田実、そして東海大高輪台と東西の実力校を破ってベスト16まで勝ち残った。今年は早稲田実、国士舘といったチームが夏ノーシードに回っただけに価値ある勝利だったが、この勝利にはエース・高橋 風太の存在が大きい。
2年前の夏の大会ではベンチ入りを果たし、優勝を知る数少ないメンバー。甲子園ではベンチ外になったが補助員として聖地に足を踏み入れた。身長169センチと周りの選手と比較しても身体は小柄だ。それを補うかのようにセットポジションから全身を使いながら、打者寄りでボールをリリースできるフォームが特徴的。
そこから最速144キロを計測するという伸びのある真っすぐを投げ込んでいくが、東海大高輪台の各打者が高めのボール球でも振ってしまうあたりは、見た目以上のボールが来ていることが想像できる。それは東海大高輪台の小笹主将に話を聞いてもストレートの威力がどれだけのものなのか想像できる。
「練習をしていたのでスピードや伸びは想定できていたのですが、コンパクトにスイングをすることが出来ませんでした。」(小笹主将)
さらに変化球に関しても「予想外の小さく変化するボールがあって、的が絞れなかった」と東海大高輪台の小笹主将は話していたが、小さく曲がるスライダーに、緩急をつけたチェンジアップなど多彩。打ち崩すのは簡単ではない投手だが、自分の投球に対して高橋はどう感じているのか。
「真っすぐは高めに浮いてしまったりして精度はまだまだ。走りはまだまだでしたが、相手打者に振ってもらえたところがありました」
このように語るのは昨秋の苦い敗戦がある。昨秋は城北の前に12点差をひっくり返されて初戦敗退という経験をしている。この悔しさを胸に一冬乗り越えてきたことが高橋の成長を支えた。
「完投をしなかったから負けたと思っているので、完投できるように練習をしていきました」
憧れである則本 昂大のような伸びのある真っすぐを投げられるように、下半身を中心にウエイトトレーニングを実施。さらに投球フォームもトレーナーから指導を受けながら、下半身主体のフォームにチェンジ。自然と肘が前に送りだせるようになったことで、2150回転ほどだったストレートは、2300~2400回転と質を高めることに成功した。
この高橋の成長が国学院久我山の野球に安定感を生み出した。結果的にエラーは3つだったが、シートノックから各選手の動きは軽快かつ丁寧な動き。送球も強く、安定したボールを各選手が投げ込んでいた。また攻撃では送りバントを4番でもきっちり一発で決め、なおかつ進塁打もしっかり打つため、無駄なアウトが少ない。試合を通じて安心感があるリズムの良い野球。試合巧者ぶりが印象的だった。
東海大高輪台・宮嶌監督も「隙のないチームだった」と称賛したが、この点に関しては尾崎監督もこのように語る。
「守備は築き上げられるものだと思っているので、冬の期間に積み重ねていきました。それを公式戦で応用できているので、あとは攻撃陣がどう攻めていくか。毎試合出る課題と向き合いながらやっています。あとは今年のチームは頭を使って理解したうえで、相手との駆け引きができる。よく考えてプレーができます」
実際に、セカンド・上田、ショート・下川 邊、センター・齋藤は勉強でも優秀な成績を残しているそうで、尾崎監督も「まさに文武両道が当てはまる選手たちです」と笑顔を見せながら語った。こうした選手たちを軸に、今大会は夏に繋げる大会にしようと声を掛け合い、まずはシード確保というところを目標に一戦一戦戦ってきた。4安打放った田村 優樹に4番・渡辺 嶺。そして1番・齋藤 誠賢など各打者がシャープなスイングを見せる国学院久我山のバッター陣の奮起も今後は注目だ。
一方、敗れた東海大高輪台も良い選手が揃っていた。エース・的野 健太は角度の付けたオーバースローの投手で、威力のある真っすぐを投げ込んでいた。ボールにもキレがあり、夏までの成長が楽しみな投手だった。
そして野手陣に目を向けると、3番・ショートの武藤拓磨は一塁駆け抜けは手動のタイムで3.8秒の足を活かした軽快な守備が光る。上体自体は高いが、その分リラックスした構えから一歩目の反応が早く、好守でエース・的野を救ってきた。また4番・小笹敦史は184センチ80キロの体格を活かして鋭く振り幅の大きいスイングを見せるスラッガー。国学院久我山・高橋の前にノーヒットに終わったが、中心打者として夏はチームを牽引することを期待したい。
その小笹は「バッティングの精度を高めていきたい」と夏への意気込みを語った。宮嶌監督は「大きな経験になった」と前向きなコメントを残した。夏はノーシードになったが、東海大高輪台も要注目のチームとなりそうだ。
(記事:田中 裕毅)