佼成学園vs修徳
佼成学園が制した長丁場の一戦で多くの逸材が活躍!
2番手前野唯斗(佼成学園)
佼成学園と修徳の強豪校同士の対決は9対7と佼成学園が制した。試合時間が長引き、東京都の大会規定で、8回で試合終了という長丁場のゲームだった。
初回で40分近く。高校生ではなかなか見られない長い攻防が行われ、佼成学園は打者9人で5得点、修徳は打者13人の攻めで、7得点と壮絶な打撃戦から一転して、0行進となった試合にしたいのは修徳のエース・床枝魁斗の投球が大きい。
昨秋の早稲田実業戦で最速143キロをマーク。スライダー、フォークも投げ分ける、東京都内では貴重なパワーピッチャーだ。
この試合では135キロ~130キロ後半。要所では、140キロ~142キロと力のある速球を投げることができていた。
120キロ前後のスライダー、フォークを使いながら、フォークで三振を奪い、5イニング連続で無失点と前評判通りの投球を見せたかのように見えた。
しかし7回表、エラーで2点を失い、さらに上原諄の2点本塁打で逆転を許してしまう。
惜しい負けだったが、荒井監督は「2回以降、無失点に抑えたこと。7回の場面もエラーについても本来であれば打ち取った場面。昨年に比べては中心投手として成長しているといえます」と粘り強い投球を評価。床枝は「技術的にも、精神的にも物足らない。1ランクレベルアップしないといけない」と厳しく振り返ったが、打ち合いとなった初回から2回表、強打の佼成学園打線を見て、「15三振を奪った城西大城西戦ではストレート中心。この試合ではかなり振れているのもありましたし、変化球中心から入っていきました」と言葉通り、変化球を有効的に使って、三振を奪う投球は見ごたえがあった。打撃でもフェンス直撃の二塁打。パワー満点の打撃魅力的で、都内では数少ない大型右腕として最後まで追跡される投手ではないだろうか。
床枝に負けない投球を見せたのが、昨夏から先発投手として活躍していた前野唯斗である。走者がいないところからでもセットポジションから始動し、腕を振り子のように使って真っ向から振り下ろすオーバーハンド。常時135キロ~130キロ後半(最速138キロ)を計測。リリースに入るまでゆったりしていて、そこから強く腕が振れるので、見た目は140キロ以上と感じてしまう勢いがある。そしてストレート以上によいのが、120キロ後半の縦スライダーだ。志村ボーイズ時代から武器としていたこのスライダーはストレートと同じ要領で腕を振る。結果的にマッスラして鋭く落ちるのだ。
前野ぐらいのスライダーがようやくドラフト候補レベルとしてアピールできるレベルだろう。パンフレットではなく、本人から聞いたサイズは179センチ73キロ。昨年、左腰を故障してから地道に体幹トレーニングを中心で体づくりしてきた成果が実を結んでおり、「結果的にフォームのブレがなくなってきました」と手ごたえを実感している。
藤田監督も「ようやく戻ってきました」とエース格である前野の復帰に喜んでいる様子だった。
修徳との対戦では床枝との対決に燃えており、「負けたくない投手でした」と8回裏の打席ではライトフライに打ち取り、9対7で競り勝ちに大きく貢献した。この夏の西東京では指折りの投手となりそうだ。
床枝、前野の都内を代表する好投手たちの今後の成長に注目だ。
この壮絶な一戦。多くの逸材がいた。佼成学園の先発・小林春葵は打者13人に投げていきなり7失点を喫したが、投げているボールは悪くなかっただけに、うまくまとめれば、抑えられる投手に移った。事実、2回以降から降板する5回まで4イニング連続で無失点。右サイドから常時120キロ後半から133キロの直球、110キロ前半のスライダー、110キロ前後のシンカーを投げ分け、テンポよく打ち取ることができた。
藤田監督が小林を登板させなかったのは、春の練習試合の結果が非常によく、立ち直ることを期待していたからだ。打たれる中でも、投げるボールを見て、降板時期ではないと判断し、小林に対しては「こんなに打たれる投手ではないので。ストライクが取れたと思った球がボールと判定されてなかなか難しかったと思いますが、しっかりとコーナーに投げれば点は取られない投手だと思いました」と小林を信じた結果、その後の好投につなげることができたのだ。5回7失点でも、小林は1つ収穫が見えた試合だった。
そして打線も4番の上原の圧巻のパワーは素晴らしいものがあり、175センチ75キロと前評判通りのスラッガーが実力を示した。
本塁打を放った一瀬和生も177センチ80キロとがっしり体型のスラッガーで、スイングも鋭く、実に楽しみな打者という印象だ。
敗れた修徳は楽しみな打者が多くいた。その中でも昨秋から光る活躍を見せていた間島玉喜、佐藤大空の2人はこの夏も期待できる逸材だ。
間島は初回から痛烈な二塁打を放つなど、安定感の打撃フォームから鋭い打球を飛ばし、フットワークが軽快な打撃を含め、総合力の高いショートストップだ。
佐藤は体つきががっしりし、178センチ81キロとドラフト候補として推していいぐらいのスペックになってきた。なんといっても佐藤は型にはまらないフルスイング。この日は初回以外、ポイントがずれた打撃が多かったがそれでもとらえた打球の速さは圧巻。このメカニズムを維持したまま、コンタクト技術を高めていけば、本塁打も量産可能な逸材で、さらにセンターからのバックホームも強肩。2022年度のドラフト候補の1人として追跡したい一人だった。
(記事:河嶋 宗一)