沖縄工vs未来沖縄
実力伯仲の両者。松川は1球に泣く
沖縄工・翁長大士
2018年、春を制した未来沖縄。その翌年から2年連続ベスト4入りしている沖縄工。実力伯仲の両者らしく、終盤までもつれる好ゲーム。大会屈指の左腕、KBC学園未来沖縄の松川嬉竜は、タイムリーを浴びた1球に泣くこととなった。
沖縄工・翁長、KBC学園未来沖縄・大城の堂々たる投げ合い
先制したのは沖縄工。2回、4番吉川琉星と6番高良胡太のヒットで一・三塁とチャンスを広げる。ここで新垣元輝がピッチャー前へ絶妙なスクイズ。本塁に間に合わず一塁へ送球したがこれが悪送球となり、打者は二塁へ。次打者も四球を選び満塁としたところで、9番翁長大士の打球はファーストゴロ。本塁封殺を狙ったが、明朝からの雨でぬかるむグラウンドに足を取られる。今度は本塁への悪送球となり三走が生還した。なおもピンチの未来沖縄マウンドの大城元だったが、後続を三振、セカンドゴロに斬ったのは素晴らしかった。
一方、3回まで僅か1安打の未来沖縄は4回、一死から3番東大夢がレフト線への二塁打を放つと、負けじと4番金城憲汰もタイムリー二塁打で1点を返す。5回には一死二塁から9番仲原総司のセンター前タイムリーで同点に追い付いた。
沖縄工翁長大士も、未来沖縄大城元も失点はそれのみ。互いに6回を投げ、翁長大士が6安打6三振、大城元は5安打4三振と互角の投げ合いで試合を引き締めるナイスピッチングを見せた。
データを重視するのが野球だが、データ通りにいかないのも野球
KBC学園未来沖縄・大城元
沖縄工はこの日打順を入れ替えた。「高良がいつもより調子が出なかったので下に置いて。代わりにチーム一のムードメーカーでもある新垣康をトップに持ってきたのだけどね。」一回戦からの3試合で高良胡太よりも、北谷戦で2安打を放つなど新垣康貴の方がヒットは出ていた。沖縄工知名淳監督はこの日の朝、決断した。
しかし、データ通りに中々いかないのも野球。
「少し緊張していて、出塁するのが1番の役目なのにそれが出来ていなかった。」と新垣康貴自身も、それまで三つの内野ゴロにフライ、そして三振とバツの悪い結果を悔やんでいた。
8回、トップの高良胡太が俊足を生かして内野安打で出塁。一塁への悪送球がファールグラウンドを転々とする間に全力疾走で二塁へ到達していた高良胡太の姿勢も大きかった。ボールがカメラマン席へ入ると、審判団が協議。ボールデッドになる前に既に二塁に到達していたと判断し、高良胡太を三塁へ進めた。「新垣康か儀間か、1番を誰にするか最後まで悩んだ。」と、もう一人の儀間朝高が四球を選んだのも沖縄工に流れを持ってきた。9番はこの日初打席となる上原伸之祐。左打席でスクイズはやりにくい場面だが、未来沖縄ベンチは申告敬遠で守りやすい満塁策と、それまで4打席全く当たっていなかった新垣康貴との勝負に出た。
しかし野球は分からない。
2ボール2ストライクとなり、未来沖縄ベンチとバッテリーはスクイズは無いと判断。打席の新垣康貴も「打つしかない」と判断する。「本当は違うサインだったのだけどね。」沖縄工知名淳監督は、新垣康貴の決勝タイムリーに苦笑いも選手を責めない。
どこのチームも同じだが、コロナ禍の中で実戦形式が乏しい。選手たちは一所懸命やっている。本大会で必要以上に力んだり緊張するのは当たり前。それをこれまでの先輩方と同じ目線で見たら、今の選手たちがかわいそうじゃないか。
数々の監督さんが口にする言葉だ。
大会屈指のサウスポー未来沖縄エース松竹嬉竜にとっては、変化球が甘く入った悔やまれる一球となった。2点をもらった上原伸之祐は9回を難なく抑え勝利。沖縄工が接戦をものにし、3年連続ベスト4へと進出した。
(取材=當山 雅通)