中京大中京vs東海大菅生
畔柳亨丞の2度目の完封!エースを援護した初回の攻防
加藤 優翔(中京大中京)
準々決勝最後の対戦カードは中京大中京と東海大菅生。中京大中京・畔柳亨丞、東海大菅生・本田峻也の両チームのエースともに中学時代にU-15に選出された元チームメイト同士であり、互いの投球にも意識をしあっているという間柄。そんな2人が先発のマウンドに上がった一戦は、中京大中京が初回から攻め立てた。
1番・細江 泰斗の四球からきっかけを作ると、相手のミスなどで3点を中京大中京が先取。2回には2番・杉浦 泰文の内野ゴロの間に追加点と徐々に東海大菅生を突き放す。
5回には5番・加藤 優翔のタイムリーで6対0とすると、エース・畔柳は5回まで東海大菅生打線をノーヒットに抑える投球。6回に7番・橋本 唯塔に初ヒットを許すものの、最速148キロを計測した真っすぐに変化球を混ぜて東海大菅生打線を圧倒。6対0と畔柳の今大会2度目となる完封勝利で、中京大中京はベスト4進出を決めた。
スコアは6対0とエース・畔柳亨丞の今大会2度目の完封勝利と、充実の内容のように思われるが、細かく見ればヒット数は中京大中京5本で東海大菅生2本と大きな差はない。四死球こそ畔柳が5個に対して、本田と松永大輝合わせて11個と大きな違いが生まれたが、6対0に繋がるだけの決定的な要素とは言いにくい。
勝敗を分けたとすれば、初回の攻防で中京大中京が東海大菅生・本田を攻め立てられたことが大きいのではないだろうか。その点に関しては中京大中京・高橋監督も「相手が東海大菅生さんだったので何とか先取点が欲しかった。だから持ち味を出して、立ち上がりを攻めていこう」と先取点を取ることに重点を置いていた。
2回戦・京都国際戦でリリーフ登板をしている本田といっても、甲子園に来て先発するのは初めて。そこを叩いて、先取点を奪って主導権を握る。これが中京大中京のゲームプランだった。だからこそ足を使う攻撃はもちろんだが、バントの構えを見せるなど、チーム全体で初先発の本田に揺さぶりをかけた。
加えて、本田の独特フォームから繰り出される角度を付けたボールに対しても中京大中京は対策を練ってきた。
「右バッターはクローズスタンスにして、左バッターであればバッターボックスにのラインを踏んで、構えるようにしました」(櫛田理貴)
こうすることで、本田の角度の付いたボールへの対応力を付けていた中京大中京。こうした対応をされていた本田本人は「緊張や焦りはなかった」と振り返るが、結果として自身のミスもあって立ち上がりに3失点。中京大中京にとっては狙い通りの攻撃、東海大菅生にとっては手痛い守備と言う結果になった。
また本田にとって誤算だったのが、中京大中京打線の攻撃力。「高めなら空振りが取れて、低めボールならゴロを打たせられる」ことをイメージしたそうだが、実際は違った。低めのボールに対して上手く対応され、野手の間を抜かれた。高めのボールにも手を出してもらえず苦戦を強いられた。裏を返せば、中京大中京打線が打席のなかでの立ち方を工夫し、本田のボールを見えやすくしたことが少なからず関係しているのではないだろうか。
結果、中京大中京は先手を奪い、優勢のまま試合を展開して東海大菅生の終盤の粘りを発揮させずに勝利を掴むことが出来た。次戦の明豊は指揮官の川崎監督を中心にゲームプランを上手く立てて智辯学園を退けた。選手たちだけではなく、監督の采配も勝敗を分ける大事な要素となりそうだ。
(取材=田中裕毅)