福岡大大濠vs具志川商
恐怖の8番松尾、驚きのパワーで4年ぶりのベスト8に導く決勝本塁打
松尾光気(福岡大大濠)
九州大会の準々決勝でも対戦した福岡大大濠と具志川商の2校。リベンジマッチとなった一戦は点数取り合いが9回まで続く形となった。
前半を3対3で折り返すと、迎えた6回に福岡大大濠は押し出しで勝ち越しに成功。これで主導権は福岡大大濠かと思われたが、具志川商も直後の攻撃で6番・比嘉力太のタイムリーで再び同点の4対4。試合は延長戦にもつれた。
10回は互いに点数が入らなかったが、11回に福岡大大濠は8番・加藤光気などのホームランなど4点で試合を決めた。福岡大大濠が8対4で具志川商を下した。
決勝打を放った松尾は試合後、「甘いストレートを狙っていました。打ったときは感触が良かったですし、毛利が踏ん張ってくれていたので良かったです」と喜びを表現した。
甲子園での活躍が光る松尾だが、ここまでは苦労もあった。新チーム結成時は捕手だったが、外野へコンバート。この試合ではそんなことを感じさせない好守を見せていたが、「風はずっと見ていましたし、指導者の方にノックを打ってもらった」と安定した守備の裏付けを語った。
また外野にコンバートされたことで打撃へ集中できるようになり、打力に磨きがかかった。ただ力みがちなところがあり、昨秋の九州大会では5番を任されていたが思うようなバッティングができず、甲子園では8番になった。
「言われたときは悔しかったですが、どうして8番なのか考えていて、今は中軸が返しきれなかったランナーを返すことが役目だと思ってやっています」
八木監督は「楽な場所で松尾を打たせてあげたい」という狙いのもとで8番になっているが、松尾本人も「打席に入る前に肩の力を抜くようにしています」とのことで、上手くはまっているようだ。
「次も繋いで良い試合をして、優勝が出来ればと思います」と意気込み残した松尾。今大会で覚醒しつつあるスラッガーの今後が楽しみだ。
一方、具志川商は驚異的な粘りで大会屈指の好投手・毛利海大を追い詰めた。
8回以降を除き、三者凡退で終わらなかったイニングは、すべて得点に結びつけられた具志川商。昨秋の九州大会では3対0と、相手のエース・毛利の前に完封負けを喫した相手に、成長した姿を見せつけ互角以上の戦いぶりを発揮したと言ってもいい。
驚異的な粘りを勝った福岡大大濠サイドはどう感じていたのか。
「具志川商さんは、リードを許せばプッシュバントなど相手の嫌がる野球をやってくるチームです。だから、リードさせないように話は出ていました」(馬場)
「競り合いは考えていたので粘り負けしない。1点ずつ取っていこうと選手には伝えていました」(八木監督)
では、昨秋とは一味違う野球で延長11回まで接戦を見せてきた具志川商サイドはリベンジするために、どういった策を練ってきたのか。そしてここまで食らいついていけたのは、試合中にどんな指示や声掛けがあったのか。
「受け身にならずに踏み込むよと伝えていました。それを選手が実行してくれたこと。あとは初球からエンドランなど仕掛けながらプレッシャーをかけていかないと得点が難しいと思ったので、その辺りは盗塁3つ刺されましたが、よくやったと思います」(喜舎場監督)
「秋よりも四球が減ったので、積極的に走っていくことは監督からも指示があったので、自分たちはそこをしっかりやろうと心がけました。それでも勝つことはできなかったので、次は勝てるように練習していきたいです」(粟国)
また守備については、守備から攻撃に繋げるスタイルで挑んだなかで、センターラインを中心に最後まで集中できたことで粘り強く守り抜くことが出来た。
攻撃では失敗を恐れずに果敢に攻める。守備では攻撃に繋げる粘り強く辛抱する。どちらも一夕一朝で出来ることではなく、普段の練習から取り組んでこなければ大舞台で発揮することは難しい。日々の小さな積み重ねが福岡大大濠を追い詰めることに繋がったのだろう。
リベンジとはならなかったが、同じ相手に完封負けから延長戦にもつれる接戦を演じるようになり、改めて冬場の取り組みに手ごたえを掴んだ具志川商。全国の舞台で見つけた課題を持ち帰り、春そして夏の大会での活躍ぶりを楽しみにしたい。
(取材=田中裕毅)